ナノ微粒子の体内動態可視化法の開発

文献情報

文献番号
200839006A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ微粒子の体内動態可視化法の開発
課題番号
H18-化学・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
亘理 文夫(北海道大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田路 和幸(東北大学 大学院環境科学科)
  • 戸塚 靖則(北海道大学 大学院歯学研究科)
  • 横山 敦郎(北海道大学 大学院歯学研究科)
  • 北川 善政(北海道大学 大学院歯学研究科)
  • 朝倉 清高(北海道大学触媒化学研究センター)
  • 古月 文志(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)
  • 大貫 惣明(北海道大学 大学院工学研究科)
  • 遠山 晴一(北海道大学病院)
  • 石川 邦夫(九州大学 大学院歯学研究科)
  • 岡崎 正之(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 淺岡 憲三(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
31,267,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノ粒子は高機能性とともに刺激性も増進し、200nm以下では呼吸・消化器系を通して体内侵入、全身から細胞内レベルまで拡散する。本研究では全身、臓器内、組織・細胞、細胞内動態の4段階に分け、全身分布表示には収束X線プローブ元素マッピ ング(XSAM)法、レーザー/マス(LM:質量顕微鏡)法、MRI法を開発/適用し可視化した。
研究方法
Pt, TiO2, ITO(In-Sn-Oxide), Fe3O4, CoFe2O4, CNT, CNF, フラーレン粒子を分散後、マウスへ尾静脈注入、一部は経口投与した。MRI法を除き開腹または切片を作製後、全身分布観察と摘出した臓器間比較を行 い、体内循環を可視化した。ICP化学分析を併用し定量評価した。
結果と考察
1.全身動態
 XSAM法:体内拡散挙動の違いから、肺→肝臓→脾臓と移行するTiO2型、投与直後から優先的に脾臓・肝臓に到達・滞留するPt型、その中間のITO 型の3種に分類できた。タッチパネルに使用されるITOでは投与2週間で約30%の体重減少と2倍近くの脾臓の肥大化が認められ、体内動 態と毒性発現の関連は要注意である。
 LM法:水溶化フラーレンを投与後の臓器の切片から、レーザー照射蒸散分子を質量分析し2次元質量分布像を得た。投与24時間後、肝臓から検出され、脳、肺、脾臓では検出されなかった。
 MRI法:Fe3O4、コバルトフェライト等磁性ナノ粒子の体内循環を生きたまま経時的に3次元造影し、肝臓、脾臓、腎臓への濃縮を認め、XSAM法と一致した。
2.臓器・組織内表示
 親水化処理及び球状造粒化CNTを静注後、光顕とTEM観察から肺、肝臓、脾臓で検出した。人工関節PE摩耗粉によるNFkB炎症発現をバイオイメージアナライザで可視化した。
3.細胞動態
 肝臓由来正常細胞(Hc)/癌細胞(HepG2)によるCNTの取込観察、単細胞個体/ゾウリムシのAg粒子摂取行動・細胞内動態の光顕連続観察、形態変性のSEM・投影型X線顕微鏡観察による細胞毒性解析を行った。
4.細胞内動態
 透過型電顕法:ラット軟組織内に埋入したCNTの細胞内取込、ライソゾーム内での分散、表層変質、破折断片化の代謝過程を超高圧電顕高分解能・エネルギーフィルター像観察を含め行った。
5.その他
 人工関節摩耗の潤滑液依存性、ナノアパタイトの骨置換性、人工骨腐食生成微粒子の細胞毒性、CNTへの芳香族化合物の親和性、細胞培養CNTスカフォールドの解析と開発を行った。
結論
ナノ粒子のリスクアセスとDDS応用に必須の体内動態の可視化を実現した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200839006B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノ微粒子の体内動態可視化法の開発
課題番号
H18-化学・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
亘理 文夫(北海道大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田路 和幸(東北大学 大学院環境科学研究科)
  • 戸塚 靖則(北海道大学 大学院歯学研究科 )
  • 横山 敦郎(北海道大学 大学院歯学研究科 )
  • 北川 善政(北海道大学 大学院歯学研究科 )
  • 朝倉 清高(北海道大学触媒化学研究センター)
  • 古月 文志(北海道大学大学院地球環境科学研究院)
  • 大貫 惣明(北海道大学 大学院工学研究科)
  • 遠山 晴一(北海道大学病院)
  • 石川 邦夫(九州大学 大学院歯学研究院)
  • 岡崎 正之(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 淺岡 憲三(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノ粒子は高機能性とともに刺激性も増進し、200nm以下では呼吸・消化器系を通して体内侵入する。本研究では全身、臓器内、組織・細胞、細胞内動態の4段階に分け、全身分布表示には収束X線プローブ元素マッピング(XSAM)法、レーザー/マス (LM:質量顕微鏡)法、MRI法を開発/適用し可視化した。
研究方法
Ti, Fe, Pt, TiO2, ITO(In-Sn-Oxide), Fe3O4, CoFe2O4, CNT, CNF, C60, ポリ乳酸等の粒子を分散後、マウスへ尾静脈注入、一部は経口投与や強制曝露試験を行った。MRI法を除き開腹または切片作製後、全身分布観察を行った。摘出した臓器を可視化後、ICP化学分析を行い定量評価した。
結果と考察
1.全身動態
 XSAM法:体内挙動の違いから、肺→肝臓→脾臓と移行するTiO2型、投与直後から優先的に脾臓・肝臓に到達・滞留するPt型、その中間のITO型の3種に分類できた。タッチパネル用材料のITOでは体重減少と脾臓肥大化を認めた。
 LM法:水溶化フラーレンを投与後、臓器切片のレーザー照射蒸散分子を質量分析し2次元質量分布像を得た。脳、腎臓、脾臓からは検出されず肝臓から検出された。
 MRI法:Fe3O4等の磁性ナノ粒子の体内循環を生きたまま経時的に3次元造影し、肝臓、脾臓、腎臓への濃縮を認め、XSAM法と一致した。

2.臓器・組織内表示
 蛍光ラベリングしたポリ乳酸粒子を投与後、蛍光・病理組織像観察し、肺、肝臓、脾臓、腎臓の臓器内分布像を得た。親水化及び球状造粒化CNTを静注後、光顕とTEM観察から肺、肝臓、脾臓で検出した。人工関節PE摩耗粉によるNFkB炎症発現をバイオイメージアナライザで可視化した。

3.細胞動態
 ヒトマクロファージ様細胞(THP-1)、肝臓由来正常(Hc)/癌細胞(HepG2)のCNT取込、単細胞個体/ゾウリムシのAg, TiO2, CoFe2O4粒子の摂取行動・細胞内動態の連続観察を光顕・電顕・投影型X線顕微鏡で行った。

4.細胞内動態
 透過型電顕法:ラット軟組織内に埋入したCNTの細胞内取込、ライソゾーム内での分散、表層変質、破折断片化の代謝過程を超高圧電顕高分解能・ELS像観察を含め行った。

5.その他
 人工関節摩耗シミュレーションと周囲骨溶解のサイトカインカスケード、インプラントの水素脆性破断・腐食摩耗粉細胞毒性、植物細胞へのCNTの影響、細胞培養CNTスカフォールドの解析と開発を行った。
結論
ナノ粒子のリスクアセスとDDS応用に必須の体内動態の可視化を実現した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-01-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200839006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 約200nm以下になると微粒子に対する免疫防御機構は低下し、呼吸・消化器系を通して容易に体内侵入・全身拡散を起こす。ナノ粒子の体内動態をそのスケールに応じて、(1)全身、(2)臓器内、(3)組織・細胞、(4)細胞内動態の4段階で可視化し、特に代謝に関与する臓器を特定する全身分布表示には、①収束X線プローブ(XSAM)元素マッピング法、②レーザー/マス(質量顕微鏡)法、③MRI法を開発し実現した。また摘出臓器の臓器内濃度・含有量の化学分析と比較し、体内分布表示の定量評価を可能にした。
臨床的観点からの成果
 ナノ粒子は体内拡散挙動の違いから、①肺→肝臓→脾臓と移行するTiO2型、②投与直後から優先的に脾臓・肝臓に到達・滞留するPt型、③それらの中間の性格を有するITO型の3種のタイプに分類された。太陽電池のタッチパネル等に使用さるITOでは投与後2週間で、約30%の体重減少と2倍の脾臓の肥大化が認められた。ナノ粒子に対する免疫防御作用の低下は体内侵入を許すリスクを生ずる一方、薬剤投与の観点からは防御機構に捕捉されずに患部への移送が可能なステルス機能性を有する点でメリットでもある。  
ガイドライン等の開発
 厚労省「ナノマテリアルの健康影響評価研究に関する意見交換会」(H20/6/2)で発表、意見交換。
 第2回国際セラミックス会議2nd International Congress on Ceramics(2nd ICC) (2008/6/29-7/4, Verona, Italy)で開催の国際セラミックス連合技術委員会ICF-TC(Internatinal Ceramic Federation - Technical Committee)委員。発表と将来の国際標準策定等のロードマップを討議。
その他行政的観点からの成果
 厚労省「ナノマテリアルの安全対策に関する検討会報告書」(H21/3)の参考資料「ナノマテリアルの健康影響に関する文献調査について」にデータの一部寄与
その他のインパクト
 H17/12「ナノトキシコロジーアセスと微粒子・ナノチューブのバイオ応用」研究会立上げ、5回開催
 H18/11第28回日本バイオマテリアル学会のシンポ「材料のマイクロ/ナノサイジングと生体反応」を組織
 H20/6/16-17国際「ナノトキシコロジーアセスと微粒子・ナノチューブのバイオ・環境応用」シンポをG8北海道洞爺湖サミットに連動し開催、欧文誌BMMEに論文集発刊
 H20/12/26日本学術会議シンポ「ナノマテリアルの未来と課題」招聘講演
 H21/2「ナノバイオメディカル学会」設立

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
107件
その他論文(和文)
46件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
239件
学会発表(国際学会等)
143件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
F.Watari, K.Tohji, K.Asaoka (Editors)
Abst.Int.Symp. on "Nanotoxicology Assessment and Biomedical, Environmental Application of Fine Particles and Nanotubes (ISNT2008)
Abst.Int.Symp. on "Nanotoxicology Assessment and Biomedical, Environmental Application of Fine Particles and Nanotubes (ISNT2008) , 1-78  (2008)
原著論文2
F.Watari, A.Yokoyama, M.Gelinsky, et al.
Conversion of Functions by Nanosizing - from Osteoconductivity to Bone Substitutional Properties in Apatite
Interface Oral Health Science 2007 , 139-147  (2008)
原著論文3
Watari F., Abe S., Rosca I. D., et al.
Visualization of invasion into the body and internal diffusion of nanoparticles,
Bioceramics 21(Key Engineering Materials, 396-398,) , 21 , 569-572  (2009)
原著論文4
F.Watari, T.Akasaka, Xiaoming Li, et al.
Proliferation of osteoblast cells on nanotubes
Front. Mater. Sci DOI:10.1007/s11706-009-0034-z  (2009)
原著論文5
F.Watari, S.Inoue, N.Takashi, et al.
Reaction of cells and tissue to material nanosizing
Trans.Mat.Res.Soc.Jap , 33 , 209-214  (2008)
原著論文6
Abe S., Koyama C., Akasaka T., et al.
Internal distribution of several inorganic microparticles in mice
Bioceramics 21(Key Engineering Materials, 396-398) , 21 , 539-542  (2009)
原著論文7
N. Sakaguchi, F.Watari, A. Yokoyama, et al.
High-resolution electron microscopy of multi-wall carbon nanotube in the subcutaneous tissue of rats
Journal of Electron Microscopy , 58 , 159-  (2008)
原著論文8
Akasaka T, Watari F
Capture of bacteria by flexible carbon nanotubes
Acta Biomaterialia , 5 , 607-612  (2009)
原著論文9
T.Akasaka, F.Watari
Carbohydrate coating of carbon nanotubes for biological recognition
Fullerenes Nanotubes Carbon Nanostrucr , 16 , 114-125  (2008)
原著論文10
Y. Sato, A. Yokoyama, T. Kasai, et al.
In vivo rat subcutaneous tissue response of binder-free multi-walled carbon nanotube blocks cross-linked by de-fluorination
Carbon , 46 , 1927-1934  (2008)
原著論文11
Y. Sato, K. Hasegawa, Y. Nodasaka, et al.
Reinforcement of rubber using radial single-walled carbon nanotube soot and its shock dampening properties
Carbon , 46 , 1509-1512  (2008)
原著論文12
Y. Sato, M. Ootsubo, G. Yamamoto, et al.
Super-robust, lightweight, conducting carbon nanotube blocks cross-linked by de-fluorination
ACS Nano , 2 , 348-356  (2008)
原著論文13
Michiko TERADA, Shigeaki ABE, Tsukasa AKASAKA, et al.
Development of a Multiwalled Carbon Nanotube Coated Collagen Dish
Dent. Mater. J. , 28 , 82-88  (2008)
原著論文14
Hirata I., Okazaki M
Higher Concentrations of Fluoride Ions Dramatically Inhibit the Survival of Osteoblasts.
J Oral Tissue Engin , 6 , 3-8  (2008)
原著論文15
F.Watari, N.Takashi, A.Yokoyama, et al.
Material nanosizing effect on living organism: non-specific, biointeractive, physical size effect
J.Roy.Soc.Interface DOI:10.1098/rsif.2008.0488.focus  (2008)
原著論文16
Watari F., Abe S., Koyama C., et al.
Behavior of in vitro, in vivo and internal motion of micro/nano particles of titanium, titanium oxides and others
J. Ceram. Soc. Jpn. , 116 (1) , 1-5  (2008)
原著論文17
Watari F., Abe S., Tamura K., et al.
Internal diffusion of micro/nanoparticles inside body
Bioceramics 20(Key Engineering Materials, 361-363) , 20 , 95-98  (2008)
原著論文18
F. Watari, K.Tamura, A.Yokoyama, et al.
Biochemical and Pathological Responses of Cells and Tissue to Micro- and Nanoparticles from Titanium and other Materials
Handbook of Biomineralization (Editors M.Epple and E.Bauerlein, WELEY-VCH, Weinheim) , 127-144  (2007)
原著論文19
F.Watari, S.Abe, C.Koyama, et al.
Effect of nanosizing of materials on living organism
Proc. Int.Sympo.on Nano Science and Technology (ISNST) 2007 , 43-52  (2007)
原著論文20
Aoki,N.,Akasaka,T.,Watari,F., et al.
Carbon nanotubes as scaffolds for cell culture and effect on cellular function
Dent Mater J. , 26 , 178-185  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-