健康診査の精度管理に関する研究

文献情報

文献番号
200722009A
報告書区分
総括
研究課題名
健康診査の精度管理に関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 清明(国際医療福祉大学 三田病院検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 奈良 昌治(日本人間ドック学会)
  • 吉田 勝美(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
25,415,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度の研究は平成17年度および18年度の研究成果と合わせて、最終的に3年間の研究で得られた検証成績をもとに、健診、特に今年度から開始される特定健診の精度管理のためのガイドラインなどを作る事を目的とした。
研究方法
健診、特に特定健診実施に必要な実用的な指針あるいはガイドラインを、専門家のコンセンサスや実際の実験結果に基づいて作成した。検査手順のため指針作成の実験では、特定健診の検査項目について、検査前の食事などの諸因子の測定値への影響を5施設の対象者で検討した。特定健診のプログラムに基づいたシミュレーション研究は、ある企業の健診受診者1,479名のデータを用いて検討した。受診勧奨値を超えた受診者に対する保健指導の研究は特定健診と専門学会の判定区分を比較検討した。階層化後の優先順位の判断基準の妥当性の検討では、「動機づけ支援」や「積極的支援」の対象者の優先順位の判断基準の実用可能性を検討した。事後指導方法の策定に関する研究では、成人の習慣的運動量を定量的に評価するツールを用いて運動量の定量を行った。健診のアウトカムとして病休日数に与える健診成績については疫学的な面からの検討を行った。
結果と考察
以下の健診のための実用ガイドラインを作成した:1)健診項目の共通コードと結果記載に必要な事項、2) 検体検査の検査前手順についてのエビデンスに基づく留意事項をまとめた指針、3)特定健診用の検査全行程の手順のガイドライン、4) 受診者側の条件を整えるための受診者向マニュアル、5) 特定健診判定区分に準じる新たな健診総合判定基準、6) 個人情報保護に関するチェック項目。
今回の成績により、最低限の健診のガイドラインが策定されたが、これらは今春から開始された特定健診にすぐ応用可能であると考えた。
また、保健指導の指標に運動によるカロリー消費定量などの数値が必要であること、保健指導判定値には、専門学会基準での検討結果と必ずしも一致しない部分があり、再検討の余地があること、保健指導分類が最終アウトカムの予防に適当かが不明確であることなどが分かったので、今後のこれらの点につき改善する必要がある。

結論
今春から始まる特定健診が具体的に実行できるガイドライン案を出来る範囲で検討し一定の成果を得た。
最終的に、以上の成果が特定健診の精度管理のための厚生労働行政施策および指針作成へ具体的に活用されることを大いに期待する。

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200722009B
報告書区分
総合
研究課題名
健康診査の精度管理に関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 清明(国際医療福祉大学 三田病院検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 奈良 昌治(日本人間ドック学会)
  • 吉田 勝美(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健診過程全体にわたる精度管理の向上のための新たな評価基準や実用ガイドラインを策定する事を目的とした。とくに特定健診において精度管理向上に役立たせる事を目標にした。


研究方法
1) 健診の事業計画や組織体制に妥当性をもたせる事、2)健診項目の適正化とコード化の実用性がなされる事、3)検査結果の正確性の確保および受診者が検査結果を正確に比較できる事、4) 健診結果が受診者に適正に判定されて、適正に指導される事、5)健診の結果を踏まえ、受診者が医療機関を受診し適切な診断・治療を受ける事、6)健診結果などに関する個人情報の確保や保護がなされている事などが可能となるようなガイドラインの作成のための実験を行った。また、専門家のコンセンサスによる合意も3つの分担研究班でまとめた。

結果と考察
① 人間ドック型健診の方が、医療費抑制につながる事が判明した。
②血圧測定の標準法を確立し、心電図、体脂肪率、内臓脂肪の標準測定法を設定した。
③検査項目と問診項目のデータ内容と記載に必要な属性をコード化した。
④検査前の手順の精度管理方法につき医学的エビデンスに基づく検査前手順を明確にした。
⑤特定健診用の検査全行程の手順のガイドラインを作成した。
⑥40歳以上の男女の健診データを用い解析を行い、特定健診の在り方の提言を行った。
⑦特定健診の肝機能検査で、脂肪肝がスクリーニングできる事が判明した。また、糖尿病の保健指導判定値として空腹時血糖:100 mg/dl、HbA1c:5.2 %を妥当とした。
⑧ 健診の判定区分を6区分とし、健診項目の判定基準および指導区分を作成した。高コレステロール血症を予防する減量指導は若年者において効果的であった。
⑨個人情報保護のためのチェックリストを作成した。
⑩特定健診の保健指導・受診勧奨の判定値について、学会ガイドラインを参考に設定し直した。
⑪日常生活における習慣的運動量の測定装置が積極的支援のツールとして有用であった。
⑫人間ドック型健診の実施施設に対する機能評価基準をベースにマニュアルを作成した。

結論
研究成果から、健診の実施に必要なかなりの数の実用マニュアルやガイドラインを作成する事ができた。
本研究の成果が具体的に特定健診などの健診の精度管理のための厚生労働行政施策および指針作成へ活用される可能性が大である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
検査項目と問診項目についてJLAC10に加えて必要な属性をコード化した。特定健診の肝機能検査項目のAST、ALT活性、AST/ALT比、およびγ-GT活性で、脂肪肝がスクリーニングできる事が判明した。健診の受診勧奨の判断基準は学会作成のガイドラインと矛盾しないよう設定すべきであると思われた。コレステロールのメガスタディで、高コレステロール血症を予防する減量指導は特に若年者に効果的であった。階層化後の優先順位の判断基準の検討では、フラミンガムリスクスコアが我が国で応用に簡便な事が分かった。

臨床的観点からの成果
標準的な健診・保健指導プログラムの暫定版の階層化に比し、確定版では保健指導を受ける受診者がかなり減少する事が示唆された。受診勧奨判定値を越えた者では、設定した区分・判定値に基づいた保健指導により医療費削減が期待された。日常における習慣的運動量の不足は、肥満を悪化させ、耐糖能、脂質プロフィールの変化を介して生活習慣病の進展に影響するとした。また、日常生活における習慣的運動量の測定装置は積極的支援におけるツールとして有用であった。
ガイドライン等の開発
研究成果から、健診(特に特定健診)の実施に必要な以下8種類の実用的マニュアルやガイドラインを作成する事ができた。
1.特定健診項目の共通コード及びコード化すべき特定健診項目と付帯情報2.健診における精度管理の在り方3.特定健診及び特定保健指導の実施について4.特定健診における検査の手順に関するガイドライン5.健診項目の基準値6.健診保健指導に必要とされる個人情報の保護に関する項目と指針7.特定健診・特定保健指導機関機能評価基準チェック表8.受診者マニュアル

その他行政的観点からの成果
30-49歳の働き盛りの年齢群では、従来型健診よりも人間ドック型健診の受診が、医療費抑制につながる事が判明した。また、特定健診受診者の生活習慣・リスクに応じた集団的・個別的保健指導を実施することが行動変容を起こし、医療費の削減に繋がる可能性が示唆された。本研究では、特定健診用の上記8種類のガイドラインを作成した。特定健診では、臨床検査は保健指導の判定値や経過観察の指標であるので、これらのガイドラインが具体的に特定健診の精度管理のための厚生労働行政施策および指針作成へ活用される可能性が大である。
その他のインパクト
腹囲やBMIのデータから、既に30歳、35歳の若年層より、メタボリックシンドロームの形跡が認められるため、対象年齢は、40歳以上というより30歳代前半に拡大することが望ましい。そのためには、健診作業に関わる総合的な作業基準(SOP)の充実、臨床検査の正確性及び精密性の向上、信頼できる健診情報仕様の確立、情報品質確保のためのデータ管理基準の確立、情報の長期保管が担保されるデータベースの基準の確立などが要件となる。このために関係機関が連携し、予防医学的活動に寄与できる体制づくりが望まれる。

発表件数

原著論文(和文)
3件
医学検査55:1187-1193,2006.Medical Technology 35(6):570-576,2007.検査と技術 35(11):1007-1014,2007.
原著論文(英文等)
1件
Impact of body mass index cholesterol levels of Japanese adults. IJCP 60: 770-782, 2006.
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
第80回日本産業衛生学会、2007年4月 第81回日本産業衛生学会、2008年6月(予定)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)平成19年4月発行「健康診査における精度管理の在り方」掲載。「特定健康診査及び特定保健指導の実施について」厚生労働省通知(平成20年3月10日発)参考資料。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-