免疫疾患診断用プロテイン・チップの開発

文献情報

文献番号
200712002A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫疾患診断用プロテイン・チップの開発
課題番号
H17-ナノ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 嘉浩(独立行政法人理化学研究所・伊藤ナノ医工学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 上阪 等(東京医科歯科大学・医学部)
  • 諏訪 昭(東海大学・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
42,936,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 自己免疫疾患は免疫系が内因性自己抗原に反応して起こる疾患で、自己細胞成分に対する種々の自己抗体が血清中に産生されることを基本的特徴とする。これらの自己抗体は特定の臨床像と密接に関連し、疾患の診断や病型分類、治療効果判定、生命予後推定など臨床的に極めて重要である。本研究では、我々が開発した生体分子の光固定化技術および抗原マイクロアレイを応用し、細胞内外の分子に対する自己抗体を自己免疫疾患患者において解析することを目的とした。
研究方法
 フェニルアジド基と分子量約500のポリエチレングリコール基を側鎖にもつメタクリル系ポリマーを光反応性マトリックスとし、金属基板を用いた自己免疫診断チップの作製を行った。
 化学発光法による検出は、固定化した抗原に対応する各種自己抗体陽性血清またはインフォームドコンセントのもとに頂いた患者血清を一次反応溶液とし反応させ、そのあと標識抗体を反応させ、最終的にECL Advance(GE healthcare製)を用いて行った。
結果と考察
 全身性だけでなく肝臓、甲状腺、腎臓など局所的な自己免疫疾患に関与する自己抗体も新たなコンテンツとして追加を目指した。そこで微小領域へのマイクロアレイを可能にし、より少ない試料から多くの情報が得られるように、従来のインクジェットタイプ(吐出型)のアレイヤーではなく、スタンプタイプ(接触型で、DNAマイクロアレイに多用される)のアレイヤーを用いた。この変更に伴い、これまでのマイクロアレイ・チップの作成条件を見直し、最適化を図った。
 次に、スクリーニングのための抗核抗体検査(間接蛍光抗体法)を検査項目としてマイクロアレイ・チップに組み込むことを目的とした。HEP-2細胞より抽出した核画分溶液をマイクロアレイ固定化し、化学発光による測定を行い、アレイ型検査でも測定可能であることがわかった。
 従来のハイインパクトポリスチレン基板を使用してきたが、安定性や新しいアレイヤーへの適合性などから、クロム蒸着基板を代替えとすることとし、その性能評価を行った。
 最終的に自己免疫疾患診断プロテインチップをより臨床診断に応用しやすくするためには、多検体をできるだけ短時間に測定できるシステムへ改良することが必須である。しかし、これまで開発したマイクロ流路デバイスには問題点があった。そこでマイクロプレートを応用したウェル型の開放系測定システムとして完成させた。最高48検体を並行して連続的に処理できるようにした。
結論
 臨床ニーズに対応した検査システム(チップ、自動測定装置)を完成することができたので、臨床検査会社などと製品化にむけた展開を行いたい。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200712002B
報告書区分
総合
研究課題名
免疫疾患診断用プロテイン・チップの開発
課題番号
H17-ナノ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 嘉浩(独立行政法人理化学研究所・伊藤ナノ医工学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 上阪 等(東京医科歯科大学・医学部)
  • 諏訪 昭(東海大学・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 自己免疫疾患は免疫系が内因性自己抗原に反応して起こる疾患で、自己細胞成分に対する種々の自己抗体が血清中に産生されることを基本的特徴とする。これらの自己抗体は特定の臨床像と密接に関連し、疾患の診断や病型分類、治療効果判定、生命予後推定など臨床的に極めて重要である。本研究では、我々が開発した生体分子の光固定化技術および抗原マイクロアレイを応用し、細胞内外の抗原分子に対する自己抗体を自己免疫疾患患者において解析することを目的とした。抗体検査をより微量なサンプル量で、より迅速に、より多くの種類について同時に検出でき、かつ従来にない自己抗体も検出可能であることから、疾患の早期診断や従来診断が困難だった自己免疫疾患の診断を容易にするものと期待される。
研究方法
 以下の項目について検討を行った。
1.バイオチップ製造法の最適化
2.光固定化法の有用性確認
3.酵素免疫抗体(ELISA)法との相関性検討
4.高密度マイクロアレイの確立
5.保存安定性評価
6.新規マイクロアレイ抗原の検討
7.評価用血清の確立
8.完全自動化測定器の開発
結果と考察
 自己免疫疾患の網羅的診断のためには、同一チップ上で複数の自己抗体を検出することは臨床診断上、極めて重要であると考えられる。しかし、自己抗原はDNAから蛋白まで様々であり、同じ方法で同一チップ上へ複数種の自己抗原をマイクロアレイ固定化することは基本的に困難である。そこで我々は、本研究室で開発した光固定化技術と抗原マイクロアレイを応用し、この問題を解決すべく研究を行った。
 その結果、多項目同時測定チップおよびそれに伴う診断システムの構築を行うことができ、従来のELISA法と比べて多種類の自己抗体検査を微量な検体で、同時に短時間で一括して行える解析システムを開発することができた。従来の1種類の自己抗原ごとの自己抗体を中心とした検査項目に加え、新たなスクリーニング用抗核抗体の検査項目の追加が可能となり、最終的に検査の効率化に向けた基盤を作ることができた。臨床現場での要請に応えるべく、複数検体の同時測定を行うために、ウェル型の開放系測定システムとし、検体の分注、洗浄、化学発光の撮影操作を自動的に行うことができ、また最高48検体を連続的に処理できるような装置開発を行った。
結論
 微量な血液をから多種類の抗体を同時に短時間で測定できるプロテイン・バイオチップの開発に成功し、それを用いて、いくつかの血液サンプルを並行に連続測定可能な完全自動測定システムも開発することができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 微量な血液をから多種類の抗体を同時に短時間で測定できるプロテイン・バイオチップの開発に成功し、それを用いて、最高48検体の血液サンプルを並行に連続測定可能な完全自動測定システムも開発することができた。

臨床的観点からの成果
 従来臨床検査室で行われていたマイクロウェルプレートを用いたELISA法による臨床分析と比較して、質、量ともに格段と性能向上した。容易に短時間で多くの検査情報が得られるようになるため、診断精度の向上に大きく貢献することが期待できる。
ガイドライン等の開発
直接の関わりはなかった。
その他行政的観点からの成果
 マイクロアレイ型の診断システムは、検査システムの省力化につながり、臨床検査費削減に有効な手段と考えられる。
その他のインパクト
 平成18年5月19日に日経新聞に、自己免疫診断チップの記事が掲載され、その他にも新しい診断システムとして東京新聞、中日新聞、赤旗、日刊工業新聞、日経産業新聞でも取り上げられた。平成17年度と19年度に財団法人医療機器センサーの助成により、ナノメディシンや診断チップの未来医療への貢献を主題に公開シンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
27件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
30件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
43件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahiro Matsudaira, Saki Tsuzuki, Akira Wada, et al.
Automated microfluidic assay system for autoantibodies found in autoimmune diseases using a photoimmobilized autoantigen microarray
Biotechnology Progress  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-