介護サービスと類型化された要介護状態像との相互関連に関する研究

文献情報

文献番号
200619026A
報告書区分
総括
研究課題名
介護サービスと類型化された要介護状態像との相互関連に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(国立保健医療科学院福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮野尚哉(立命館大学理工学部マイクロ機械システム工学科)
  • 西村秋生(国立保健医療科学院研修企画部)
  • 齋藤安彦(日本大学・総合科学研究科)
  • 東野定律(国立保健医療科学院福祉サービス部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,875,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年度は、第1に、わが国の要介護高齢者の特徴について分析する。第2に、昨年度の研究成果を基に要介護高齢者の予防サービスの有用性を判断するための基礎資料として、初めて受けた要 介護認定から、4回目までの認定情報が存在している高齢者を抽出し、これらの高齢者の認定情報および介護給付受給情報等に関する経年的なデータを作成する。第3に、これらの高齢者群から、予防サービスが有用であると想定されたグループ(以下、予防有用型と略す)を抽出するため、昨年度に開発された数学モデルを改良し、大規模多変量データにおける一般的パターンの自動抽出アルゴリズムを開発する。第4に、このアルゴリズムを用いて、要介護高齢者群を分類し、予防サービスが有用と想定された群を抽出する。第5に、予防有用群の初回から4回までの経年的推移を分析し、これらの高齢者の予後について他の要介護高齢者との比較を行い、その特徴を明らかにする。第6に、予防有用群における介護サービスの利用状況とその特徴を明らかにする。第7に、健康余命モデルを用い、要介護高齢者が重度化するまでの期間を推定する。第8に、要介護高齢者の性年齢別および要介護度別に介護保険サービスの平均利用期間を推計する。これらのことを目的とした
研究方法
大規模多変量データにおける一般的パターンの自動抽出アルゴリズムに関しては、集団同期減少を記述する蔵本方程式を基礎とし、これをベクトル変数に拡張し、位相ベクトルおよび周波数ベクトルという概念を導入した。
要介護度の悪化に関する平均期間は、生命表の手法を用いて推計し、特定介護サービスの平均利用期間は健康状態別余命の概念とサリバン法を用いて推計を行った。
結果と考察
要介護高齢者の経年的データを分析することによって、初回の要介護認定時からの衰退モデルを明らかにした。また開発した一般的パターンの自動抽出アルゴリズムによって要介護状態像を類型化し、衰退モデルに適合しない予防有用群が抽出された。さらに、これらの群における介護サービスの利用の特徴が明らかにされた。高齢者類型によって予防給付が有用かどうかを判断できるスクリーニングが可能となったことは、介護サービスの適正化に大きく寄与できるものと考えられる。
結論
予防有用群のスクリーニングシステムの開発及び要介護高齢者の介護サービス利用期間の標準化は、介護保険制度自体の評価をする際に重要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200619026B
報告書区分
総合
研究課題名
介護サービスと類型化された要介護状態像との相互関連に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(国立保健医療科学院福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮野 尚哉(立命館大学理工学部)
  • 齋藤 安彦(日本大学大学院総合科学研究科)
  • 西村 秋生(国立保健医療科学院研修企画部 )
  • 兼板 佳孝(日本大学医学部社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 東野 定律(国立保健医療科学院福祉サービス部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①わが国の要介護高齢者22,356,876名の認定情報と介護給付の実態をマージしたデータベースをつくる。
②わが国における要介護高齢者の特徴を明らかにする。
③要介護高齢者の特徴別に、提供された介護サービスの特徴を明らかにする。
④認定情報および介護給付受給情報等に関する経年的なデータベースをつくる。
⑤大規模多変量データにおける一般的パターンの自動抽出アルゴリズムを開発する。
⑥開発されたアルゴリズムによって要介護高齢者の状態情報から「高齢者類型」を抽出する。
⑦「高齢者類型」から予防サービスが有用と想定された「予防有用型」を抽出する。
⑧「予防有用型」の初回から4回までの経年的推移を分析する
⑨「予防有用型」の介護サービスの利用状況とその特徴を明らかにする
⑩健康余命モデルを用い、要介護高齢者が重度化するまでの期間を推定する
⑪要介護高齢者の性年齢別および要介護度別に介護保険サービスの平均利用期間を推計する。
研究方法
先験的な事例を必要としない大規模多変量データにおける一般的パターンの自動抽出アルゴリズムに関しては、集団同期減少を記述する蔵本方程式を基礎に、これをベクトル変数に拡張し、位相ベクトルおよび周波数ベクトルという概念を導入した。
要介護度の悪化に関する平均期間の推定に関しては、生命表の手法を用いた。また、特定介護サービスの平均利用期間は健康状態別余命の概念とサリバン法によって推計を行った。
結果と考察
わが国の要介護高齢者の特徴と介護サービス受給の実態が明らかになった。また要介護高齢者の経年的推移の分析によって、要介護度別変動に関する特徴を明らかにした。
開発した一般的パターンの自動抽出アルゴリズムによって4類型化し、この中から要介護度の悪化速度が遅い「予防有用群」を抽出し、この群の介護サービス利用の特徴を明らかにした。
要介護高齢者の性年齢別要介護度別の重度化までの期間と介護保険サービスの利用期間を推定した。
結論
要介護認定情報だけで要介護度の悪化速度の異なる群を抽出するアルゴリズムが開発されたことは、予防給付が有用な群のスクリーニングが可能となったことを意味しており、介護サービスの適正化や要介護認定審査会における認定の標準化に大きく寄与できるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
要介護高齢者22,356,876名の状態像と介護給付実績がマージされたデータベースが構築され、高齢者の予後に関する衰退モデルが明らかにされた。また健康余命モデルを用い、要介護高齢者が重度化するまでの期間や性年齢別要介護度別の介護保険サービスの平均利用期間が推計された。さらに先験的な事例を必要としない大規模多変量データにおける一般的パターンの自動抽出アルゴリズムはユニークであり、先駆的な成果である。
臨床的観点からの成果
予防サービスが要介護度の悪化に有用と予測される「予防有用型」が明らかにされたことは、要介護認定審査会の大きな負担となっている要支援2の判定業務に利用することが可能であり、審査会の標準化をすすめることができる。また、要介護高齢者の性年齢別要介護度別の重度化までの期間と介護サービスの利用期間が推定されたことにより、介護サービスの費用が推定できる。このことは介護保険行政にとって重要な成果と考えられる。
ガイドライン等の開発
国立保健医療科学院で毎年、実施している都道府県職員等を対象とした『介護サービスマネジメント研修』において、「予防有用型」の選定に関する理論的な背景や予後の説明を行い、これらの資料をテキストとして配布した。
その他行政的観点からの成果
来年から介護保険制度の実施を予定している韓国に設置された介護保険制度準備プロジェクト委員会からの要請があり、本研究で新たに開発された大規模多変量データにおける一般的パターンの自動抽出アルゴリズムを要介護認定に利用する方法について資料を提供し、講義を行った。また、近年、介護保険制度における判定業務の見直しをすすめているドイツ連邦政府からの求めに応じて新たな要介護認定のあり方のひとつとして、このアルゴリズムを用いた方法に関する資料を提供した。
その他のインパクト
 先験的な事例を必要としない大規模多変量データにおける一般的パターンの自動抽出アルゴリズムについては、Phys Rev Lett,信学技報.等の学会誌に掲載した。
また、今後のわが国の介護予防のあり方についてまとめた論文をJournal of American Geriatrics Societyに掲載した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takaya Miyano Takako Tsutsui
Data synchronization in a network of coupled phase oscillators
Phys Rev Lett , 98  (2007)
原著論文2
宮野尚哉 筒井孝子
集団同期によるデータクラスタリング
信学技報 , 3  (2007)
原著論文3
Takako Tsutsui, Naoko Muramatsu.
Japan’s Universal Long Term Care System Reform of 2005: Containing Costs and Realizing a Long-Term Vision.
Journal of American Geriatrics Society  (2007)
原著論文4
筒井孝子
介護保険制度下の要介護高齢者における認知症の特徴
厚生の指標  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-