ナノレベルイメージングによる分子の機能および構造解析

文献情報

文献番号
200609001A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノレベルイメージングによる分子の機能および構造解析
課題番号
H14-ナノ-指定-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 望月直樹(国立循環器病センター研究所 循環器形態部)
  • 若林繁夫(国立循環器病センター研究所 分子生理部)
  • 武田壮一(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
  • 増田道隆(国立循環器病センター研究所 循環器形態部)
  • 井上裕康(奈良女子大学生活環境学部生活環境学科食物科学専攻)
  • 中村俊(国立精神・神経センター神経研究所 診断研究部)
  • 諸根信弘(国立精神・神経センター神経研究所 微細構造研究部)
  • 和田圭司(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第四部)
  • 土屋利江(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 中澤憲一(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 中岡竜介(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 永井健治(北海道大学 電子科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
136,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疾患制圧のためにナノテクノロジーを駆使して、病態の理解・診断法、および治療法の開発を目指した研究を行う。
研究方法
①分子機能イメージング:循環系ではBARドメインを持つ分子Endphilinによる血管内皮細胞内の管腔形成メカニズムについて検討した。②神経系では、蛍光性のタグをもった神経機能分子を作製し、それらの動態を計測した。より微細な細胞構造を電子線トモグラフィー法により研究した。in silicoでタンパク質の予測構造にもとづく創薬の候補分子を探索した。③新たなイメージング技術の開発として、励起光源を必要としない発光タンパク質と蛍光タンパク質との間のエネルギー移動(Bioluminescence resonance energy transfer, BRET)を利用する方法を開発した。④構造イメージングではX線回折法を用いて疾患関連タンパク質の結晶構造を解析した。⑤ナノ医用材料の開発に関して、ATP受容体(ラットP2X2受容体)の構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察し、細胞接着関連配列であるRGD及びPHSRNを含むペプチドが培養細胞の分化に与える影響を検討した。
結果と考察
①Endophilinに特徴的な膜との会合に重要なメカニズムを突き止めた。アミノ末端のにHelix構造が脂質二重層への接着・会合に重要であることを示した。②脳由来神経栄養因子BDNFは神経細胞の形態を制御し、シナプスの機能的成熟にも関与し、グリア細胞の形態と、神経伝達の調節に関与している可能性を示した。また、ユビキチン水解酵素L1型の分子構造と発症リスクの関連を中性子小角散乱法で明らかにした。同タンパク質に結合するパーキンソン病治療薬のリード化合物候補を2種類同定した。③BRETによる細胞内カルシウムイメージングに成功した。④アポトーシス誘導因子VAP1の結晶構造、イオン交換輸送体調節因子(CHP2/NHE1)複合体の結晶構造、Endophilinの結晶構造を論文として発表した。⑤ATP受容体(P2X2)の構造をAFMで明らかにした。RGDとPHSRNが軟骨細胞及び骨芽細胞の分化に与える影響を明らかにした。
結論
イメージングによる細胞内・組織での分子の機能の理解、分子の構造決定による創薬基盤情報、新規医用材料の開発など次世代医療の基盤技術形成に貢献した。

公開日・更新日

公開日
2007-03-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200609001B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノレベルイメージングによる分子の機能および構造解析
課題番号
H14-ナノ-指定-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 望月直樹(国立循環器病センター研究所 循環器形態部)
  • 若林繁夫(国立循環器病センター研究所 分子生理部)
  • 井上裕康(奈良女子大学生活環境学部生活環境学科食物科学専攻)
  • 武田壮一(国立循環器病センター研究所心臓生理部)
  • 増田道隆(国立循環器病センター研究所 循環器形態部)
  • 中村 俊(国立精神・神経センター神経研究所 診断研究部)
  • 諸根信弘(国立精神・神経センター神経研究所 微細構造研究部)
  • 和田圭司(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第四部)
  • 土屋利江(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 中澤憲一(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 中岡竜介(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 永井健治(北海道大学・電子科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疾患の制圧のためにナノイメージングによる分子機能の可視化、分子の構造決定による創薬、さらに新規医用材料の開発を目指した研究を実施した。
研究方法
分子機能イメージングに関して種々の循環系タンパクの活性化を可視化し、蛍光性のタグをもった神経機能分子の動態を計測した。電子線解析から3次元画像の研究も進めた。さらに、in silicoで創薬候補分子を探索した。新たなイメージング技術として発光タンパク質と蛍光タンパク質との間のエネルギー移動(BRET)法を開発した。分子構造イメージングに関しては、疾患関連タンパクの結晶を作成し、X線回折法により構造を決定した。ナノ構造に基づく医用材料の開発に関しては、ATP受容体(ラットP2X2受容体)の原子間力顕微鏡(AMF)像を分析した。
結果と考察
①分子機能イメージング循環系:血管内皮細胞の創傷治癒機転としてRap1の活性化を観察した。Endophilinに特徴的な膜との会合メカニズムを突き止めた。②分子機能イメージング神経系:脳由来神経栄養因子BDNFの様々な働きを明らかにした。プリオンタンパク質が微小管にそって移動することを明らかにした。電子線トモグラフィーによる細胞膜直下の細胞骨格系のナノスケールの構造単位を確認した。パーキンソン病の責任遺伝子としてユビキチン水酸化酵素L1型(UCH-L1)を同定し、変異体(I93M)高次構造を中性子線解析により分析した。③新たなイメージング技術の開発:励起光を必要としないBRETを利用したカルシウムイオンの指示薬検出法を開発した。④分子構造イメージングX線回折:心筋収縮タンパク調節分子トロポニン(Tn)のコアドメイン、アポトーシス誘導因子VAP1、イオン交換輸送体CHP2/NHE1複合体の結晶構造、BARドメイン構造を有するEndophilin結晶構造等を解明した。⑤ナノ構造に基づく医用材料の開発:ATP受容体タンパクの形状を原子間力顕微鏡観察により解明した。
結論
分子機能イメージングに関して、循環系情報伝達分子の活性化を可視化、BDNFの作用機構、UCH-L1のタンパク質構造を中性子線解析を実現した。新たなイメージング技術としてBRET法の実用化に成功した。分子構造イメージングX線回折では、創薬や新研究領域の創成につながる複数のタンパクの構造決定に成功した。ナノ構造に基づく医用材料の開発にも一定の成果を挙げた。

公開日・更新日

公開日
2007-03-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200609001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
タンパクの構造と機能を可視化する技術を確立した。タンパク構造解析技術については本邦では医療機関における初めての構造生物学研究室の開設となった。5年間の研究で新規タンパク4種の構造解析に成功した。機能イメージングについては世界に先駆けてFRET法による細胞内タンパクの活性化を実現した。
臨床的観点からの成果
分子標的治療薬開発の基盤となる技術を確立した。今後はこの5年間の成果をもとに具体的な創薬研究に移行できる。すなわち、標的タンパクの活性中心部の構造情報を基にして、その部位と相互作用する最適な分子を選択する。この方法により、効果が大で副作用の少ない分子標的薬剤の開発に道を開く。本研究では、医療機関から疾患治療薬を発信する端緒となりうる。また、難治性疾患の克服に向けた治療薬の開発を期待できる。
ガイドライン等の開発
特に関係はない。
その他行政的観点からの成果
総合科学技術会議が指定した国の重要研究課題のひとつであるナノテクノロジーの領域では、厚生労働省に医療出口を見据えた研究が期待されてきた。本ナノレベルイメージング研究は厚生労働省のナノメデイシン研究の一翼を担って医療出口を見据えたナノテクノロジー研究という期待に答えることができたと考えて いる。
その他のインパクト
研究成果を一流の科学雑誌に発表することができた。(Nature, Nature Medicine, EMBO Journal, Proceedings of National Academy of Science,他)。 Japan Nano2007, Nanobio EXPO、American Academy of Nanomedicineなど国際的ナノテクノロジーの学術集会で研究成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
370件
その他論文(和文)
39件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
90件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計16件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
ナノメディシンフォーラムNMFコーディネーター、ナノテクノロジー総合シンポジウム、ナノバイオ国際シンポジウム、放射光医学研究会講演会、ナノバイオテクノロジー連携群成果報告会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ben Ammar Y, Takeda S, … Wakabayashi S
Crystallization and preliminary crystallographic analysis of the human calcineurin homologous protein CHP2 bound to the cytoplasmic region of the Na+/H+ exchanger NHE1
Acta Cryst. F , 61 , 956-958  (2005)
原著論文2
Ben Ammar Y, Takeda S, … Wakabayashi S
Crystal structure of CHP2 complexed with NHE1-cytosolic region and an implication for pH regulation
Embo J , 25 (11) , 2315-2325  (2006)
原著論文3
Igarashi T, …Mori H, Takeda S
Crystallization and preliminary X-ray crystallographic analysis of two vascular apoptosis-inducing proteins (VAPs) from Crotalus atrox venom
Acta Crystallograph Sect F Struct Biol Cryst Commun , 62 (7) , 688-691  (2006)
原著論文4
Masuda M, … Mori H,Mochizuki N
Endophilin BAR domain drives membrane curvature by two newly identified structure-based mechanisms
Embo J , 25 (12) , 2889-2895  (2006)
原著論文5
Takeda S, Igarashi T, Mori H, et al.
Crystal structures of VAP1 reveal ADAMs' MDC domain architecture and its unique C-shaped scaffold
Embo J , 25 (11) , 2388-2396  (2006)
原著論文6
Fukuhara S, … Mochizuki N
Cyclic AMP potentiates vascular endothelial cadherin-mediated cell-cell contact to enhance endothelial barrier function through an Epac-Rap1 signaling pathway
Mol Cell Biol , 25 (1) , 136-146  (2005)
原著論文7
Kogata N, … Mochizuki N
Cardiac ischemia activates vascular endothelial cadherin promoter in both preexisting vascular cells and bone marrow cells involved in neovascularization
Circ Res , 98 (7) , 897-904  (2006)
原著論文8
Park W, … Inoue H, et al.
Inhibitory effects of ginsenoside-Rb1 on activation of the 12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate-induced cyclooxygenase-2 promoter
Planta Med , 72 (3) , 272-275  (2006)
原著論文9
Fukuhra S, Sakurai A, … Mochizuki N
Vascular endothelial cadherin-mediated cell-cell adhesion regulated by a small GTPase, Rap1
J Biochem Mol Biol , 39 (2) , 132-139  (2006)
原著論文10
Somekawa S, Fukuhara S,… Mochizuki N
Enhanced functional gap junction neoformation by protein kinase A-dependent and Epac-dependent signals downstream of cAMP in cardiac myocytes
Circ Res , 97 (7) , 655-662  (2005)
原著論文11
Nagira T, Nagahata-Ishiguro M, Tsuchiya T
Effects of sulfated hyaluronan on keratinocyte differentiation and Wnt and Notch gene expression
Biomaterials , 28 , 844-850  (2007)
原著論文12
Nakaoka R, Hsiong S, Mooney D
Regulation of chondrocyte differentiation level via co-culture with osteoblasts
Tissue Engineering , 12 , 2425-2433  (2006)
原著論文13
Nakazawa K, Yamakoshi Y, Tsuchiya T, et al.
Purification and aqueous phase atomic force microscopic observation of recombinant P2X2 receptor
European Journal of Pharmacology , 518 , 107-110  (2005)
原著論文14
Nagahata M, Nakaoka R, … Tsuchiya T
The response of normal human osteoblasts to anionic polysaccharide polyelectrolyte complexes
Biomaterials , 26 , 5138-5144  (2005)
原著論文15
Nagira T,…Yamakoshi Y, Tsuchiya T
Enhancement of Gap Junctional Intercellular Communication of Normal Human Dermal Fibroblasts Cultured on Polystyrene Dishes Grafted with Poly-N-isopropylacrylamide (PIPAAm)
Tissue Engineering , 11 , 1392-1397  (2005)
原著論文16
Hoshino M, Yoshimori T, Nakamura S
Small GTPase proteins Rin and Rit Bind to PAR6 GTP-dependently and regulate cell transformation
J Biol Chem , 280 (24) , 22868-22874  (2005)
原著論文17
Ohira K, …Nakamura S, Hayashi M
A truncated tropomyosin-related kinase B receptor, T1, regulates glial cell morphology via Rho GDP dissociation inhibitor 1
J Neurosci , 25 (6) , 1343-1353  (2005)
原著論文18
Morone N, Fujiwara T, Murase K, et al.
Three-dimensional reconstruction of the membrane skeleton at the plasma membrane interface by electron tomography
J Cell Biol , 174 (6) , 851-862  (2006)
原著論文19
Ikegami K, Heier RL, … Morone N, et al.
Loss of {alpha}-tubulin polyglutamylation in ROSA22 mice is associated with abnormal targeting of KIF1A and modulated synaptic function
Proc Natl Acad Sci U S A , 104 (9) , 3213-3218  (2007)
原著論文20
Ohira K, … Kaneko T, Nakamura S
Truncated TrkB-T1 regulates the morphology of neocortical layer I astrocytes in adult rat brain slices
Eur J Neurosci , 25 (2) , 406-416  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-