気分障害の高精度候補領域解析および精神疾患ゲノムバンクの構築

文献情報

文献番号
200500761A
報告書区分
総括
研究課題名
気分障害の高精度候補領域解析および精神疾患ゲノムバンクの構築
課題番号
H15-こころ-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 武男(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 祐士(三重大学医学部)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院)
  • 加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター )
  • 功刀 浩(国立精神・神経センター)
  • 西川 徹(東京医科歯科大学医学部)
  • 三國 雅彦(群馬大学医学部)
  • 塩江 邦彦(山梨大学医学部)
  • 稲田 俊也(帝京大学医学部)
  • 南光 進一郎(帝京大学医学部)
  • 三辺 義雄(浜松医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
27,075,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気分障害の遺伝的基盤を明らかにしていく研究は、原因究明-それに基づく医療・福祉的援助の考案にとって必要不可欠である。本研究では、「気分障害の高精度候補遺伝子・候補領域解析」のアプローチをとることによって、多くの偽陽性および偽陰性の両方を排除し、真の感受性遺伝子群を明らかにし、診断・創薬・予防の根本的方策につながることを目的とする。また、収集するサンプルの末梢血リンパ球を株化し、「精神疾患ゲノムバンク」の構築を目指す。
研究方法
我々は、以下の4項目を研究の基軸に据えて研究目標にアプローチしている。
(1)解析対象の表現型を絞り遺伝的異質性を改善する
(2)解析対象サンプル数をなるべく多くする
(3)ゲノム上の候補遺伝子、候補領域に対して連鎖不平衡を考慮した十分な密度のタイピング、
ハプロタイプの構築など精緻な遺伝解析を行う
(4)集団遺伝的な解析で確かな証拠が得られた遺伝子多型については機能的な裏付けを調べる。
結果と考察
(1)全国ネットワークによる双極性障害サンプル収集:昨年度報告時点から増えていないが、年齢・性別をマッチさせたサンプルとして、双極性障害サンプル521例および対照群500例以上を収集した。(2)候補遺伝子解析:今年度、主任研究者の施設ではIMPA2遺伝子の解析を主として行い、プロモータハプロタイプと双極性障害、およびリスクハプロタイプの生物学的効果を明らかにすることができた。また、IMPA2遺伝子産物について結晶構造解析まで行った。これらの情報は罹患者のオーダーメイド医療に資する情報を提供するものと思われる。(3)全ゲノムの網羅的関連解析:双極性I型107例、年齢性別をマッチさせた対照群107例を用いて、Affymetrix社の100K SNP chipを使って全ゲノム上の10万個のSNP解析を行った。P < 0.01以下で対立遺伝子頻度および遺伝子型頻度で有意だったもの合計1576個のSNPを選択した。これらは現在、約400例の双極性障害、年齢性別をマッチさせた400例の対照群サンプルを用いて第2次スクリーニングを遂行している段階である。
(3)ゲノムバンクの構築に関しては、リンパ球の株化作業を継続している。
結論
気分障害の感受性遺伝子の同定に向けて、質の高い遺伝解析を実現すべく組織した共同研究体制は、平成16年度と同様その成果を着実に積み上げた。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200500761B
報告書区分
総合
研究課題名
気分障害の高精度候補領域解析および精神疾患ゲノムバンクの構築
課題番号
H15-こころ-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 武男(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 祐士(三重大学医学部)
  • 尾崎紀夫(名古屋大学大学院)
  • 加藤忠史(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター )
  • 功刀 浩(国立精神・神経センター)
  • 西川 徹(東京医科歯科大学)
  • 三國 雅彦(群馬大学医学部)
  • 塩江 邦彦(山梨大学医学部)
  • 稲田 俊也(帝京大学医学部)
  • 南光 進一郎(帝京大学医学部)
  • 三辺 義雄(浜松医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、「気分障害の高精度候補遺伝子・候補領域解析」のアプローチをとることによって、多くの偽陽性および偽陰性の両方を排除し、真の感受性遺伝子群を明らかにし、診断・創薬・予防の根本的方策につながることを目的とした。また、収集するサンプルの末梢血リンパ球を株化し、「精神疾患ゲノムバンク」の構築を目指した。
研究方法
我々は、次の項目を研究の基軸に据えて研究目標にアプローチした:(1)解析対象の表現型を絞り遺伝的異質性を改善する、(2)解析対象サンプル数をなるべく多くする、(3)ゲノム上の候補遺伝子、候補領域に対して連鎖不平衡を考慮した十分な密度のタイピング、ハプロタイプの構築など精緻な遺伝解析を行い、また機能的な裏付けを調べる。
結果と考察
(1)全国ネットワークによる双極性障害サンプル収集:年齢・性別をマッチさせたサンプルとして、3年間で双極性障害サンプル521例および対照群500例以上を収集した。(2)候補遺伝子解析:ケースコントロール研究で偽陽性の結果につながる因子としてサンプルの階層化がある。この問題を検討するため、全ゲノム上から20個のSNPsを選択し解析した。統計はPritchardらによるSTRUCTUREプログラムを用いて行い、Pr(K = 1)>0.99となりサンプルは遺伝的にほぼ均一な集団と考えられた。これまで解析した遺伝子の中で、気分障害に関与している可能性が検出できたものは、IMPA2, HTR3A&3B, NUDFV2, XBP1, HSPA5, NGFR, PDLIM5である。一方、関与が否定された遺伝子には、BDNF, FEZ1, PMX2B, ASCL1, SLC6A4 , GSK3B, CHGA, CHGB, TRPM2, PDE9A, SYNJ1がある。(3)全ゲノムの網羅的関連解析:双極性サンプルと年齢性別をマッチさせた対照群を用いて、100K SNP chipを使って全ゲノム上の10万個のSNP解析を行った。P<0.01で対立遺伝子頻度および遺伝子型頻度で有意だったもの合計1576個のSNPを選択した。(3)ゲノムバンクの構築に関しては、全体として800以上の精神疾患サンプルを株化して保存した。
結論
気分障害の感受性遺伝子の同定に向けて、質の高い遺伝解析を実現すべく組織した共同研究体制は、3年間でやり残したものもあるが成果を着実に積み上げた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500761C

成果

専門的・学術的観点からの成果
掘り下げて解析することに成功した遺伝子として、セロトニン受容体3A (HTR3A), 3B (HTR3B)遺伝子、IMPA2 (myo-inositol monophosphatase)遺伝子がある。前者に関しては、我々はHTR3B遺伝子のミスセンス変異がうつ病発症に重要であることを見いだし、後者に関してはプロモータ領域にある多型と双極性障害の関連、その転写活性に及ぼす機能、遺伝子産物の結晶構造解析まで明らかにした。
臨床的観点からの成果
HTR3B, IMPA2の多型の情報は、今後気分障害罹患者のオーダーメイド医療に資する可能性がある。また、IMPA2遺伝子産物については結晶構造が明らかとなったため、双極性障害の治療にこれまで使われてきたリチウムに代わって、新規の薬物を開発できる状況が開けた。双極性障害の全ゲノム網羅的関連解析は、第1次スクリーニングまで終了したが、今後多くの感受性遺伝子の同定が進む可能性が出てきた。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発は、現時点では行っていない。
その他行政的観点からの成果
将来の精神疾患ゲノムバンク設立に向けて、全国の分担研究者および研究協力者から血液サンプルを送ってもらい、リンパ球の株化作業を継続してきたが、全体として800以上の精神疾患サンプルを株化して保存した。このようなリソースは、当該研究の近視眼的成果ばかりでなく、幅広く国民の保健・医療・福祉の充実につながる研究に資することが期待される。
その他のインパクト
研究期間内に行った研究で、今後論文化していくものがいくつかあり、それらのうち適当と判断されるものが出てきたらプレス発表も考える。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
207件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
66件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
(尾崎紀夫)双極性感情障害、統合失調症等の精神病性障害の予防・治療剤、そのスクリーン具方法、及び該疾患の発症リスクの判定方法:特願2005-150215、出願中
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Aoki-Suzuki M, Yamada K, Meerabux J,et al.
A family-based association study and gene expression analyses of netrin-G1 and -G2 genes in schizophrenia.
Biological Psychiatry , 57 (4) , 382-393  (2005)
原著論文2
Yamada K, Ohnishi T, Hashimoto K,et al.
Identification of multiple serine racemase (SRR) mRNA isoforms and genetic analyses of SRR and DAO in schizophrenia and D-serine levels.
Biological Psychiatry , 57 (12) , 1493-1503  (2005)
原著論文3
Ide M, Yamada K, Toyota T,et al.
Genetic association analyses of PHOX2B and ASCL1 in neuropsychiatric disorders: evidence for association of ASCL1 with Parkinson’s disease.
Human Genetics , 117 (6) , 520-527  (2005)
原著論文4
Horiuchi Y,Nakayama J, Ishiguro H,et al.
ossible association between a haplotype of the GABA-A receptor alpha 1 subunit gene (GABRA1) and mood disorders.
Biological Psychiatry , 55 (1) , 40-45  (2004)
原著論文5
Toyota T,YoshitsuguK, Ebihara,M, et al.
Association between schizophrenia  with ocular misalignment and polyalanine length variation in PMX2B.
Human Molecular Genetics , 13 (5) , 551-561  (2004)
原著論文6
Ide M,Muratake T, Yamada K,et al.
Genetic and Expression Analyses of FZD3 in Schizophrenia.
Biological Psychiatry , 56 (6) , 462-465  (2004)
原著論文7
Yamada K,Nakamura K, Minabe Y, et al.
Association analysis of FEZ1 variants with schizophrenia in Japanese.
Biological Psychiatry , 56 (9) , 683-690  (2004)
原著論文8
Kunugi H,Iijima Y, Tatsumi M, et al.
No association between the Val66Met polymorphism of the brain-derived neurotrophic factor (BDNF) gene and bipolar disorder in Japanese: a multi-center study.
Biological Psychiatry , 56 (5) , 376-378  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-