介護予防サービスの新技術開発とシステム構築に関する研究

文献情報

文献番号
200500272A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防サービスの新技術開発とシステム構築に関する研究
課題番号
H16-長寿-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 権藤恭之(東京都老人総合研究所痴呆介入グループ)
  • 芳賀 博(東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科)
  • 高田和子(独立行政法人国立健康・栄養研究所健康増進研究部)
  • 粟田主一(仙台市立病院神経科精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
10,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
以下の4点の解明を目的とする。要介護ハイリスク群を適切にスクリーニングする手法、うつ・閉じこもり高齢者に対する支援策、介護予防に向けた地域づくりの方策、そして地域における介護予防の効果評価のためのグローバルな指標の開発。
研究方法
1)要介護発生リスクに関するコホート研究: 70歳以上の男女958名を対象に心身機能などの健診を実施して、その後2年間の介護保険新規認定リスクとの関連を分析した。
2)運動訓練を中心とする地域づくりに関する介入研究:高齢者の体操や軽運動の習慣化を目指した地域づくり事業を実施して、その効果を検証した。
3)うつ高齢者に対する地域ケアに関する介入研究:うつ高齢者を対象に、抑うつ症状や自殺念慮の改善を目標とする地域介入プログラムを策定して、その効果を検証した。
4)談話ボランティア活動に関する介入研究:後期高齢者を対象に、博物館資料としての地図作成プログラムを実施して、その効果を検証した。
5)転倒骨折の発生に関する研究:骨粗鬆症検診を受診した50歳以上女性11,396名を対象に、検診受診後2年間の転倒骨折の発生状況を調査した。
6)健康寿命の推移:65歳以上仙台市民から5%無作為抽出した7000名を対象に、日常生活活動(ADL)自立度を2年間調査し、健康寿命(ADL自立期間)を測定した。
なお、すべての分担研究課題は所属施設の倫理委員会から承認を受けている。
結果と考察
1)要介護発生リスクに関するコホート研究:抑うつ、認知機能低下、運動機能低下、低栄養、心身活動の不活発性などが、介護保険の新規認定リスクを有意に高めた。
2)運動訓練を中心とする地域づくりに関する介入研究:非介入地域に比べて、介入地域での要介護リスクは軽減し、介護保険認定率も減少した。
3)うつ高齢者に対する地域ケアに関する介入研究:精神科医・保健師の訪問などの地域ケアにより、抑うつ度・自殺念慮・精神的健康度が改善した。
4)談話ボランティア活動に関する介入研究:超高齢者に地図作製を通じた社会参加を支援したところ、認知機能や運動機能が改善した。
5)転倒骨折の発生に関する研究:転倒骨折の発生率は高齢者ほど高かった。
6)健康寿命の推移:この10年間で健康寿命は男女とも延長したが、要介護期間は男性で短縮し、女性で延長した。
結論
心身機能や生活機能の評価による要介護ハイリスク群の拾い上げは可能であった。うつ高齢者の地域ケア、心身活動の活性化に向けたポピュレーション戦略の有効性が示された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200500272B
報告書区分
総合
研究課題名
介護予防サービスの新技術開発とシステム構築に関する研究
課題番号
H16-長寿-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 権藤恭之(東京都老人総合研究所痴呆介入グループ)
  • 芳賀 博(東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科)
  • 高田和子(独立行政法人国立・健康栄養研究所健康増進研究部)
  • 粟田主一(仙台市立病院神経科精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護予防を効果的に運用するには、要介護ハイリスク群のスクリーニング手法、うつ高齢者に対する支援策、介護予防の地域づくりの推進方策、介護予防の効果評価の指標が必要である。本研究の目的は、これら4点を解明することである。
研究方法
1)「寝たきり予防健診」受診者に関する研究:標記健診受診者1,476名を対象に、健診結果とその後の介護保険新規認定リスクとの関連などを検討した。
2)運動訓練を中心とする地域づくりに関する介入研究:高齢者の運動の習慣化を目指した地域づくりを実施して、その効果を検証した。
3)うつ高齢者に対する地域ケアに関する介入研究:うつ病高齢者を対象に、抑うつ症状や自殺念慮の改善を目標とする地域介入を実施して、その効果を検証した。
4)談話ボランティア活動に関する介入研究:超高齢者を対象に、自分史や昭和初期の地図を作成する活動を実施して、その効果を検証した。
5)自立度低下・寝たきり移行の関連要因:高齢者約2万名に生活習慣などを調査してから3年後に生活自立度を調査し、自立度低下・寝たきり移行のリスク因子を検討した。
6)健康寿命の推移:65歳以上仙台市民を対象に、日常生活活動自立度を調査し、健康寿命を測定した。約10年前の調査結果と比べて、その推移を検討した。
 なお、すべての分担研究課題は所属施設の倫理委員会から承認を受けている。
結果と考察
1)「寝たきり予防健診」受診者に関する研究:抑うつ、低栄養、ソーシャルサポートの欠如、心身活動の不活発性が、介護保険新規認定リスクを有意に高めた。
2)運動訓練を中心とする地域づくりに関する介入研究:非介入地域に比べて、介入地域での要介護リスクは軽減し、介護保険認定率も減少した。
3)うつ高齢者に対する地域ケアに関する介入研究:地域ケアを受けた者では、抑うつ症状や精神的健康度が有意に改善した。
4)談話ボランティア活動に関する介入研究:高次生活機能や認知機能などに良好な効果があった。
5)自立度低下・寝たきり移行の関連要因:社会活動や身体活動、豊富な食生活をしている者で、リスクが低かった。
6)健康寿命の推移:この10年間で健康寿命は男女とも延長したが、要介護期間は男性で短縮し、女性で延長した。
結論
要介護ハイリスク群の拾い上げは可能である。うつ高齢者への地域ケア、健常高齢者への心身活動活性化には介護予防効果が期待できる。健康寿命という指標は介護予防の効果評価に応用できる

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500272C

成果

専門的・学術的観点からの成果
要介護ハイリスク群の危険因子の解明、うつ高齢者に対する地域ケア、身体運動や談話活動を通じた地域高齢者の活動性向上支援など、介護予防の具体的なサービス技法を開発して、その効果を実地に証明した。これは当初の研究目的を十分に果たすものであった。
研究成果をもとに医学雑誌に31本の論文を発表し、国内外から大きな反響があった。介護予防プログラムの具体的方法について、多数の研究者から照会を受けている。
臨床的観点からの成果
これまで介護予防の重要性は広く理解されていたが、その具体的方法が十分に開発されているとは言い難い状況にあった。本研究で、様々な種類の介護予防サービスが開発され、その効果が実地に証明された。平成18年度より全国で実施される介護予防事業(新予防給付・地域支援事業)において、本研究で開発された介護予防サービスが実地に全国で行われる。それにより介護予防の効果が従来以上に高まることが期待されている。
ガイドライン等の開発
本研究ではガイドライン等の開発は実施しなかった。しかし、各分担研究者が開発した介護予防サービス技法については、その詳細な実施方法などに関するマニュアルを作成している。
その他行政的観点からの成果
本研究の主任研究者は、厚生労働省「老人保健事業の見直しに関する検討会」・同「介護予防サービス評価研究委員会」などの委員を務めた際に、本研究事業の成果を積極的に紹介するとともに、その根拠(エビデンス)に基づいた政策提言を活発に行って、制度改革に貢献した。
本研究は、介護保険制度の見直し-予防重視型システムへの転換-にあたって、その理論的根拠と具体的な方法論を提示したものとして、高く評価されている。
その他のインパクト
本研究の成果は、東北大学医学部公開講座「健康寿命の延伸を目指して-鶴ヶ谷プロジェクト-」や東京都老人総合研究所の市民公開講座などの一般市民を対象とする講演会・シンポジウムにおいて普及啓発された。
本研究の成果および専門誌に掲載された論文の要旨と一般向けの解説については、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野のホームページ(http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/)に公開している。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
厚生労働省「老人保健事業の見直しに関する検討会」・「介護予防サービス評価研究委員会」などの委員を務めた際に、本研究事業の成果に基づいた政策提言を活発に行って、制度改革に貢献した。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
東北大学医学部公開講座、東京都老人総合研究所市民公開講座、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野のHP(http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp)。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hozawa A, Ebihara S, Tsuji I, et al.
Increased plasma 8-isoprostane levels in hypertensive subjects: the Tsurugaya project.
Hypertension Research , 27 (8) , 557-561  (2004)
原著論文2
Hozawa A, Ohmori K, Tsuji I, et al.
C-Reactive protein and peripheral artery disease among Japanese elderly:the Tsurugaya Project.
Hypertension Research , 27 (12) , 955-961  (2004)
原著論文3
Ohmori K, Ebihara S, Tsuji I, et al.
The relationship between body mass index and a plasma lipid peroxidation biomarker in an older, healthy Asian community.
Annals of Epidemiology , 15 (1) , 80-84  (2005)
原著論文4
Ohmori K, Kuriyama S, Tsuji I, et al.
Modifiable factors for the length of life with disability before death: mortality retrospective study in Japan.
Gerontology , 51 (3) , 186-191  (2005)
原著論文5
Niu K, Hozawa A, Tsuji I, et al.
Influence of leisure-time physical activity on the relationship between C-reactive protein and hypertension in a community-based elderly population of Japan: the Tsurugaya project. 
Hypertension Research , 28 (9) , 747-754  (2005)
原著論文6
Taki Y, Kinomura S, Tsuji I, et al
Male elderly subthreshold depression patients have smaller volume of medial part of prefrontal cortex and precentral gyrus compared with age-matched normal subjects: A voxel-based morphometry.
Journal of Affective Disorders , 88 (3) , 313-320  (2005)
原著論文7
Kuriyama S, Hozawa A, Tsuji I, et al.
Green tea consumption and cognitive function: a cross-sectional study from the Tsurugaya Project.
erican Journal of Clinical Nutrition , 83 (2) , 355-361  (2006)
原著論文8
Awata S, Seki T, Tsuji I, et
Factors associated with suicidal ideation in an elderly urban Japanese population: a community-based, cross-sectional study. 
Psychiatry Clinical Neuroscience , 59 (3) , 327-336  (2005)
原著論文9
Koizumi Y, Awata S, Tsuji I, et al.
Association between social support and depression status in the elderly: Results of a 1-year community-based prospective cohort study in Japan. 
Psychiatry Clinical Neuroscience , 59 (5) , 563-569  (2005)
原著論文10
権藤恭之,古名丈人,小林江里香,他.
都市部在宅超高齢者の心身機能の実態:板橋区超高齢者悉皆訪問調査の結果から【第1報】.
日本老年医学会誌 , 42 (2) , 199-208  (2005)
原著論文11
岩佐 一,権藤恭之,古名丈人,他.
身体的に自立した都市部在宅超高齢者における認知機能の特徴:板橋区超高齢者悉皆訪問調査から【第2報】.
日本老年医学会誌 , 42 (2) , 214-220  (2005)
原著論文12
権藤恭之, 古名丈人, 小林江里香, 他.
超高齢期における身体的機能の低下と心理的適応-板橋区超高齢者訪問悉皆調査の結果から.
老年社会科学 , 27 (3) , 327-338  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-