知的障害者の社会参加を妨げる要因の解明とその解決法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400555A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害者の社会参加を妨げる要因の解明とその解決法開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小枝 達也(鳥取大学地域学部)
  • 林   隆(山口県立大学看護学部)
  • 田中 敦士(琉球大学教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
知的障害者の行動のうち社会参加をせばめているものを抽出し、受け入れ環境の問題点、社会参加を妨害しうる外的要因や人的要因等の因子を明らかにし、知的障害者の社会参加を促す策を講じ、国民の福祉向上をねらった。知的障害児が将来の社会参加を円滑に行うようにする発達障害からの視点と、成人知的障害者の子育て支援の体勢作り、さらに就労の面からの生活支援の視点からの研究を加えた。
研究方法
知的障害児・者支援記録帳試作版を保護者に配布し、その体裁と内容について調査した。医学的治療や検査結果の記録の有無、医療・療育・教育機関との連携の問題点について調査した。また、知的障害のある母親の指導に関わった保健師から聞き取り調査を行い、子育てにおける課題を明らかにした。さらに、全国の知的障害児者施設、知的障害者授産施設において問題行動の原因として心身機能障害が関与する程度や問題行動発現に環境因子が影響する程度を調査した。全国の障害者就業・生活支援センター及び障害者雇用支援センターに対し知的障害者の就職・離職状況、社会資源を活用するための方策、学校との連携やジョブコーチの活用について調査した。
結果と考察
医療機関との連携で困った経験は約半数に、福祉機関、療育・教育機関連携では半数以上に困った経験があった。医療情報記録例は医療連携における困難度が少ないことも判明した。情報記録帳は保護者の心理的・時間的負担の軽減やサービス利用状況の確認につながり各機関サービス提供者の共通理解が進むと思われた。知的障害のある母親の子育てには母子支援と家族全体の生活支援の視点が求められていた。知的障害者が示す問題行動のうち、攻撃性、怒りっぽさ、引きこもり・没交渉、反抗的態度について環境因子の関与が強いと考えられた。障害者就業・生活支援センターは関係機関と連携して社会資源を活用しているが、障害者雇用支援センターは特に生活面の支援が不十分であることが示唆された。
結論
関係機関の連携において、情報記録帳の活用は知的障害児・者とその保護者にとって有用と考えられる。知的障害のある母親の子育てには、福祉と保健分野が協力体制をとって支援に当たる必要がある。知的障害者の就労継続、生活支援にあたっては地域での支援者養成と個別移行支援計画の周知、そして支援者のスキル向上と地域移行が重要であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200400555B
報告書区分
総合
研究課題名
知的障害者の社会参加を妨げる要因の解明とその解決法開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小枝 達也(鳥取大学 地域学部)
  • 林   隆(山口県立大学 看護学部)
  • 田中 敦士(琉球大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
知的障害者の社会参加を促進するために次の三点について調査を行った.すなわち,小児期おける医療,療育・教育連携の問題の解明,高等学校卒業後の就労や地域生活移行の問題の解析,そして知的障害のある母親とその家族が直面する子育ての問題の解決である.内的因子の解明と実際の受け入れ環境の問題点や人的要因・システムといった様々なファクターを明らかにすることによって,知的障害者の生涯にわたる社会参加を促す策を講じ,国民の福祉向上を図ることを考えた.
研究方法
発達障害児に対する医療・福祉資源の活用と連携状況の調査と障害児(者)地域療育等支援事業コーディネーターの医療連携の現状と環境因子の解析,知的障害児の情報の連携機関への伝達における困難性の抽出,知的障害のある母親への子育て支援に関する保健師聞き取り調査,そして入所施設における知的障害児・者の問題行動の特徴とその要因に関する検討と知的障害者の就労を促進する要因の解明を行った.
結果と考察
多くの医師が経験年数や勤務先によらずさまざまな制度を活用し,連携を実施している状況やコーディネーターのほとんどが相談する医師を有し,各機関・施設連携の元に事業を実施している実態が明らかとなった.しかし知的障害者の母親は医療機関との連携で困った経験があり,福祉機関,療育・教育機関連携でも困った経験があった.医療情報記録例は医療連携における困難度が少ないことも判明した.知的障害のある母親の子育てには母子支援と家族全体の生活支援の視点が求められており,知的障害者が示す問題行動のうち,攻撃性,怒りっぽさ,引きこもり・没交渉,反抗的態度について環境因子の関与が強いと考えられた.障害者就業・生活支援センターは関係機関と連携して社会資源を活用していることが示唆された.
結論
情報を記録することは保護者の心理的・時間的負担の軽減やサービス利用状況の確認につながり,情報記録帳の活用は関係機関連携において知的障害者とその保護者にとって有用と考えられる.知的障害のある母親の子育てには,福祉と保健分野が協力体制をとって支援に当たる必要がある.知的障害者の就労継続,生活支援にあたっては地域での支援者養成と個別移行支援計画の周知,そして支援者のスキル向上と地域移行が重要であると思われる.

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
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