介護者負担感、充実感に関する簡便な尺度の開発と介護サービス利用に関する調査研究

文献情報

文献番号
200200233A
報告書区分
総括
研究課題名
介護者負担感、充実感に関する簡便な尺度の開発と介護サービス利用に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
池上 直己(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険の施行は、高齢者の生活の質(QOL)を向上させると同時に、家族の介護者の負担を軽減させることも大きな目的である。介護者を適切に支援するためには、介護負担感が要介護者の特性や介護サービス、ケアマネジャーの対応によってどのように影響されているかを把握する必要がある。こうした観点から簡便な介護者の負担感・充実感尺度の開発と検証が、ケアの現場においても、政策レベルにおいても求められている。
昨年度は、国内外の介護負担感研究の比較検討を踏まえて、家族介護者対象のフォーカス・グループ・インタビューおよびアンケート調査を実施し、介護現場のための新しい尺度を開発した。アンケート調査は、5つの居宅介護支援事業者の協力を得、在宅家族介護者に対しては試作版の負担感尺度、既存の負担感尺度(Zarit Burden Interview)、精神的健康状況、および要介護者に対してはMDS-HCアセスメント表等の既存資料をそれぞれ収集して新尺度の妥当性を検証した。信頼性については、一部の介護者に対して再テスト法を実施することにより検証した。この負担感・充実感尺度は、合計12項目の介護に対する気持ちについて5段階で自記入する質問表で、我が国の介護現場での簡便な活用を念頭に置いて開発された。下位尺度として「束縛感」(0点~16点)と「孤立感」(0点~16点)と「充実感」(0点~16点)を測定できる。
本年度は、昨年度開発した尺度を用いて、北九州市全5地区をフィールドに、3地区を介入群、2地区を対照群として、8月と12月の2時点で、同居主介護者を対象に自記式質問紙調査を実施した。そして9月に介入3地区に属するケアマネジャーに対しては、調査を担当した家族介護者の1回目の測定結果を各々にフィードバックし、ワークショップを開催して、負担感を軽減する効果的な介入方法について研修を行った上で、介入を依頼した。そして、4ヵ月後の12月に、介入群と対照群について再度調査し、負担感・充実感の変化を比較した。
その結果、まず第1に、ベースラインとして第1回目調査時において介入群、対照群の3つの下位尺度得点に統計的に有意な差はなかった(一元配置分散分析)。第2に、1回目と2回目の得点の変化については、「束縛感」「孤立感」「充実感」ともに有意な差がなく、介入による軽減効果はなかった(対応あるT検定)。
そこで、層別分析したところ、家族介護者特性として「配偶者の親を介護」、要介護者特性として「痴呆なし・ADL援助群」の場合は、介入地区のみにおいて「束縛感」が軽減していた。しかし、反対に、家族介護者が「自分の親を介護」「60歳未満」「余暇活動が全く無し」「余暇活動が年に数回程度」「医療受診が有り」と回答した場合、また要介護者が「85歳以上」「医療の受診が有り」「痴呆軽度・中度」「痴呆あり・ADL援助群」と回答した場合には、介入地区のみで「孤立感得点」が介入により増大していた。介入により孤立感得点が健在化、意識化と推測される。(対応あるT検定)
ケアマネジャーによる具体的な対応内容やコストについては、介入地区で、1週間あたりの対応時間の平均は9.48分(1週間あたり)で、通常の対応時間(9.38分)と比較して変化しなかったが、介入中の対応回数は、介入前0.82回(1週間あたり)から介入中には1.14回に増大していた。介護サービス利用総額は介入前後で変わらなかった。介護負担感・充実感の下位尺度との平均値の差を層別にみたところ、ケアマネジャーが「12分以上」時間を費やした場合において、束縛感を軽減させる効果があった。しかし、ケアマネジャーの新しく行った対応項目は、すべて孤立感を増大させていた。(対応あるT検定)
3年目にあたる15年度(来年度)では、まず本年度の北九州市における調査結果から、介護負担感の軽減群、増大群について詳細にその特性や、ケアマネジャーの対応内容を、定量・定性の両面から内容分析する。その結果、軽減効果のある対象者と特定し、こうした対象者を抽出するための方法を考案する。そして、効果のあると考えられる対象者に対する実用的な対応マニュアルを作成する予定である。なお、長期的な介護負担感の経過についても検討を重ねたい。


研究方法
結果と考察
結論

公開日・更新日

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