スモンに関する調査研究

文献情報

文献番号
200000648A
報告書区分
総括
研究課題名
スモンに関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
岩下 宏(国療筑後病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小長谷正明(国療鈴鹿病院)
  • 小西哲郎(国療宇多野病院)
  • 高瀬貞夫(広南病院)
  • 早原敏之(国療南岡山病院)
  • 松本昭久(市立札幌病院)
  • 水谷智彦(日本大神内)
  • 中江公裕(獨協医大公衆衛生)
  • 宮田和明(日本福祉大社会福祉)
  • 森英俊(筑波技術短大)
  • 松岡幸彦(国療鈴鹿病院)
  • 安藤徳彦(横浜市立大医療センター)
  • 池田修一(信州大三内)
  • 一居誠(大阪府健康福祉部)
  • 乾俊夫(国療徳島病院)
  • 上田進彦(大阪市立総合医療センター)
  • 上野聡(奈良県立医大神内)
  • 宇山英一郎(熊本大神内)
  • 大井清文(いわてリハセンター)
  • 大竹敏之(東京都立神経病院)
  • 岡本幸市(群馬大神内)
  • 岡山健次(大宮赤十字病院)
  • 蔭山博司(国療北海道第一病院)
  • 加知輝彦(国療中部病院)
  • 加藤昌弘(愛知県健康福祉部)
  • 北川達也(国療西鳥取病院)
  • 姜進(国療刀根山病院)
  • 吉良潤一(九州大神内)
  • 鯨井隆(国療米沢病院)
  • 佐藤正久(新潟大神内)
  • 三宮邦裕(大分医大三内)
  • 塩澤全司(山梨医大神内)
  • 塩屋敬一(国療宮崎東病院)
  • 渋谷統寿(国療川棚病院)
  • 島功二(国療札幌南病院)
  • 庄司進一(筑波大臨床)
  • 杉村公也(名古屋大保健)
  • 妹尾秀雄(北海道保健福祉部)
  • 祖父江元(名古屋大神内)
  • 高橋桂一(国療兵庫中央病院)
  • 高橋光雄(近畿大神内)
  • 竹内博明(香川医大看護)
  • 千田富義(秋田県立リハセンター)
  • 千野直一(慶応義塾大リハ)
  • 津坂和文(釧路労災病院)
  • 椿原彰夫(川崎医大リハ)
  • 寺澤捷年(富山医薬大和漢)
  • 中瀬浩史(虎の門病院)
  • 中野今治(自治医大神内)
  • 西郡光昭(宮城教育大教育)
  • 長谷川一子(国立相模原病院)
  • 蜂須賀研二(産業医大リハ)
  • 服部孝道(千葉大神内)
  • 林正男(石川県健康福祉部)
  • 林理之(大津市民病院)
  • 平山幹生(福井医大二内)
  • 發坂耕治(岡山県保健福祉部)
  • 松永宗雄(弘前大脳研)
  • 丸山征郎(鹿児島大臨検)
  • 溝口功一(国立静岡病院)
  • 森松光紀(山口大神内)
  • 森若文雄(北海道大神内)
  • 山下元司(高知県立芸陽病院)
  • 山下順章(松山赤十字病院)
  • 山田淳夫(国立呉病院)
  • 山中克己(名古屋市立中央看護専)
  • 山本悌司(福島県立医大神内)
  • 雪竹基弘(佐賀医大内)
  • 吉田宗平(和歌山県立医大神内)
  • 渡辺幸夫(大垣市民病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
84,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スモン患者の医療・福祉の現状調査とQOLの向上
研究方法
1.「医療システム委員会」メンバーにより全国スモン患者医療・福祉特に介護・介護保険申請などの現状を「スモン現状調査個人票」と「介護に関するスモン現状調査票(補足調査)」を用いて調査した。2.この調査を基礎として、全国スモン患者、各ブロック、各地区の現状、合併症、QOL、自律神経、心理、その他を調査した。3.神奈川県と共催で「スモン・神経難病セミナー」、当研究班主催で「スモンフォーラムIN大阪2000」を開催した。
結果と考察
1. スモン検診結果 ; 本年度は、 全国1,073名のスモン患者を検診した。男284名、女789、男女比 1 : 2.8、「新聞の大見出しは読める」以上の視力障害39.0%、「一本杖歩行」以上の歩行障害43.4%、中等度以上の下肢筋力低下38.9%、中等度以上の下肢痙縮26.3%、上肢運動障害26.7%、中等度以上の異常知覚74.8%、尿失禁は52.4%、便失禁25.2%にみられた。何らかの合併症を有するもの90.6%、特に白内障51.3%、高血圧34.5%、脊椎疾患31.1%、四肢関節疾患26.7%、障害度は極めて重度4.5%、重度17.4%、中等度43.2%、軽度24.7%、極めて軽度3.7%などであった。本年度の成績からも、今日のスモン患者の障害度は合併症に起因する頻度がますます高まっていることが示された。北海道地区では、在宅訪問13名含む115名を検診し、104名は在宅療養、36名は過去5年内で入退院を繰り返し、11名は長期入院中であった。東北地区では、89名検診したが、ADL軽症者が多く、介護保険認定申請者20名、認定を受けた患者15名(16.9%)、ホームヘルパー派遣サービス受けているのは有資格者12名中8名であった。
関東・甲越地区では、スモン熟練医師・花籠良一メンバーの引退により、昨年度より76名少ない(自然減少24名含む)212名検診し、高齢化に伴う合併症の増加など他地区と同様であった。中部地区では、193 名を検診し、介護保険申請は24.9%、6割強がなんらかの不安を抱え、約7割が最近1年間にふらつきや転倒を経験していた。近畿地区では、156名を検診し、81歳以上の超高齢者34名(22%)で、過半数が排尿障害を訴え、男性より女性患者に多かった。中国・四国地区では、全患者の約3割である216名が検診され、痴呆3.2%、記憶力低下25%と増え、さらに有配偶者率低下と長期入院例の増加がみられた。九州地区では、93名を検診し、介護保険申請者は重症者でも比較的少なく、スモン障害度は異常感覚が重くとられるが、介護保険で重視されない例がみられた。その他札幌地区、青森県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県、福井県、奈良県、兵庫県、鳥取県、山口県および香川県におけるスモン患者の現状が報告された。
2. 治療・ Q O L、若年発症 ; 高瀬らは、スモン患者4例にメキシレチンを150mg/日より1週間毎に150mgずつ増量、4週で効果判定、4例全例で有痛性異常知覚の軽減が得られ、血液検査や心電図などで異常なく、スモンへの有効かつ安全な新治療法と報告した。西郡らは、スモン患者における生活満足度の低下はADLの低下に関連していると報告した。杉村らは、若年発症スモン患者の主観的満足度は家庭生活・仕事・経済で低く、低い婚姻率や親族の高齢化・病弱化が関与していると報告した。竹内らは、2歳3カ月で発症した35歳男性患者が盲学校教育後あん摩・マッサージ師となり、生活に分を感じつつも、前向きに生活していることを報告した。
3. 合併症・心理 ; 中江らは、スモン患者の高齢化に伴う日常生活能力の低下にスモン特有なものがみられることを検診受けた述べ8,743名(男2,246、女6,485、不明12)の分析から報告している。松岡らは、平成2年から11年の10年間で、毎年検診受けた194名の分析から、スモン障害度要因は、スモン+合併症が22.7%から45.4%へ増加し、スモン単独は減少していたと報告した。小長谷らは、スモン発症時全盲患者の4割が30年以上経過後も全盲で、高度視覚障害患者ほど現在の歩行能力やADLの各スコアが悪く、きめ細かな対応が必要と報告した。早原らは、スモン患者にはストレス対処行動を踏まえたメンタル・ケアと社会的支援が望まれると報告した。
4. 自律神経・病理ほか ; 服部らは、スモン患者の排尿障害は骨盤神経の核上性障害が主であると報告した。小西らは、排尿障害はスモン患者の67%に認め、専門医の対応が必要と報告した。椿原らは、スモン患者では重度の嚥下障害は多くないが、軽度障害合併頻度は低くないと報告した。高瀬らは、既報告剖検11例から、錐体路徴候7例、後索変性9例、側索変性2例などであったと報告した。
5. 介護、福祉 ; 宮田らは、スモン患者65歳以上801名中229名(28.6%)が介護保険認定申請し、129名(16.1%)が実際に介護サービスを利用していたと報告した。小西らは介護保険利用者は80歳以上の高齢者に多かったと報告した。杉村らは、自宅療養破綻の要因として、高齢者特有の合併疾患、骨折、介護者不在があるが、スモンの特殊性を考える必要性があると報告した。松岡らは、上記10年間における変化として、歩行の増悪傾向、上肢運動障害者の増加などがみられたが、視力は一定の傾向なく、表在覚障害の範囲、異常知覚の程度には大きな変動はみられなかったと報告した。乾らは、多くのスモン患者は、公的支援を受けるよりは家族の介護を好むが、家族の高齢化からスモン患者に公的支援を受けることを勧める必要があると報告した。
結論
全国的なスモン患者の医療と福祉の現状調査を継続し、・全国で1073名(北海道115、東北89、関東・甲越212、中部193、近畿156、中国・四国216、九州93、男女比1:2.8)を検診した。合併症を有するもの90.6%で、本年度も、高齢化等による合併症が今日のスモン患者障害度を決めていた。・2000年4月導入の介護保険要介護度認定は、65歳以上801名中229名(28.6%)が申請し、129名(16.1%)が、サービスを利用していた。

公開日・更新日

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