文献情報
文献番号
201919011A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
課題番号
H30-新興行政-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学)
研究分担者(所属機関)
- 荒川 創一(神戸大学大学院医学研究科)
- 川名 敬(日本大学医学部)
- 釜萢 敏(公益社団法人日本医師会)
- 白井 千香(大阪市立大学大学院医学研究科/枚方市保健所)
- 山岸 由佳(愛知医科大学医学部)
- 斎籐 益子(東京医療保健大学東が丘立川看護学部)
- 余田 敬子(東京女子医科大学東医療センター 耳鼻咽喉科・)
- 安田 満(国立大学法人岐阜大学医学部附属病院 泌尿器科)
- 伊藤 晴夫(千葉大学/NPO千葉健康づくり研究ネットワーク)
- 五十嵐辰男(聖隷佐倉市民病院 泌尿器科)
- 金山 博臣(徳島大学大学院医歯薬学研究部 泌尿器科学)
- 谷畑 健生(神戸市環境保健研究所)
- 大西 真(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,295,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
4県における性感染症全数調査を実施し、継続梅毒抑制に向けて政策提言を行う。性感染症原因菌の薬剤耐性動向を調査する。母子感染(経胎盤感染)による先天梅毒の発症回避のために梅毒合併妊婦への治療法として経口ペニシリン薬の有効性を検討する。医療者および国民への適切な啓発と中高生生徒への教育により、性感染症の発生抑制を図る。日本人の咽頭・喉頭におけるHPV保有状況に関する検討は十分ではないため術中検体を用いてHPVの有無、型別を明らかにする。耳鼻咽喉科にて性感染症を疑った受診者、または患者自ら口腔・咽頭の性感染症検査を希望した受診者の詳細を検討し、これらの症例から示唆される耳鼻咽喉科医を含めた一般臨床医における性感染症診療の現状と問題点、今後の課題について考察する。淋菌臨床分離株を広く収集し、淋菌臨床分離株の薬剤感受性測定することを目的とする。さらに薬剤耐性化が著しい尿道炎・子宮頸管炎原因菌であるMycoplasma genitaliumに関する研究の準備を行う。
研究方法
千葉県・岐阜県・兵庫県・徳島県の4県の医療機関に性感染症の全数調査を実施した。梅毒合併妊婦の背景と治療時期について44施設からアンケートを分析した。性感染症予防の国民への啓発に関しては、高校生以上、小学生・中学生に向けて継続した。喉頭・咽頭におけるHPV感染率の検討、淋菌性尿道炎患者由来検体より淋菌と同定され保存された。
結果と考察
2017年10月の千葉県、岐阜県、兵庫県、徳島県のNESIDに対する梅毒報告数は、それぞれから12医療機関13例、5医療機関6例、18医療機関20例、0医療機関0例であった。2017年10月に実施した4県の全数調査の梅毒症例について精査したところ、20医療機関40例、16医療機関28例、35医療機関38例、3医療機関3例が報告されていた。同時期にNESIDにおける報告に比較して、報告数で1.9 ~ 4.7倍、報告医療機関数で1.7 ~ 3.2倍4県の全数調査の方が多かった。これらの結果から、梅毒流行を抑制するために政策提言を行った。2015年に大阪で分離されたセフトリアキソン耐性淋菌株FC428は耐性型のpenA遺伝子 (penA-60.001を保有していた。梅毒合併妊婦の背景と治療時期について44施設からの131例の梅毒合併妊婦の症例のアンケートを集積し、組入基準を満たした妊婦が80例であった。早期梅毒が39%、後期梅毒が61%であり、母子感染成立例は全例後期梅毒の妊婦であった。アモキシシリン治療群とアンピシリン治療群の母子感染率の比較では、AMPCが11%、ABPCが27%で有意ではないものABPCでは母子感染が起こりやすい傾向があった(p=0.11)。2019年度に作成した小中学生用の性感染症啓発資材は、今までの自分たちの使用してきたものを土台にしており、本研究班の目で見直し、加筆・修正した。若者へ情報を拡散するための方法としてSNSの活用(Twitter・Facebook・インスタ・ブログで配信・ユーチューバ―など)も有効と考えられた。喉頭・咽頭におけるHPV感染率の検討は、34例、57検体に実施した。全国の協力医療機関より送付された淋菌性尿道炎患者由来検体より最終的に641株が淋菌と同定され保存された。PCGは全ての株が非感受性でありempiric therapyはもちろんのことdefinitive therapyとしても使用できない。さらにペニシリナーゼ産生株がほとんど存在しないことよりβラクタマーゼ阻害剤配合薬も無効である。AZMは耐性菌が増加していた。AZMはガイドラインで推奨されている薬剤がアレルギー等で使用できないときに使用すべき薬剤であるためこれ以上耐性化を進行させないためにも使用制限すべきであると考えられる。
結論
これらの研究により得られた成果の今後の活用・提供:梅毒流行抑制のための政策提言を行う。
公開日・更新日
公開日
2022-01-05
更新日
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