文献情報
文献番号
201823001A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の安全性確保のための研究
課題番号
H28-食品-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
- 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 多田 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター)
- 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
8,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品添加物の安全性確保のために、使用実態の把握が重要となることから、1)香料の使用量調査、2)マーケットバスケット(MB)方式による香料の摂取量調査及び3)食品添加物の生産量統計調査を基にした摂取量の推定を行った。また、18 項目の類又は誘導体として指定されている香料(18類香料)の安全性確保に重要となる、4)香料化合物規格の国際整合化に関わる調査研究、5)香料化合物の遺伝毒性評価予測システムの研究を行うとともに、食品添加物の規格試験法(一般試験法)の向上のため、6)食品添加物公定書一般試験法の改良に関する研究、7)赤外スペクトル(IR)測定法に関する調査研究並びに8)食品添加物中の鉛とヒ素の同時分析法に関する研究を行った。
研究方法
1)香料化合物については、日米欧及び中南米6地域において実施された使用量調査の結果及び算出した摂取量を比較した。天然香料については、今回の使用量調査結果と平成26年度の調査結果を比較した。2)MB試料中のアルデヒド系及びケトン系香料を分析し、成人の喫食量データを基に、摂取量を推計した。3)製造・輸入事業者を対象に指定添加物の平成28年度の取扱量の追調査及び既存添加物の平成29年度の取扱量の調査を行い、集計化した。4)香料化合物のFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)規格の検証のため、試験成績表等の調査及び平成25~29年度のデータの見直しを行い、JECFA規格との整合性を検討した。5)昨年度QSARにより変異原性が予測された香料化合物6物質のAmes試験、新たな定量的構造活性相関(QSAR)ソフト開発、香料のAmes試験データベースの見直しを行った。6)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のJECFA規格に規定されているGC-MSを用いたプロピレンクロロヒドリン(PCH)定量法を検証した。7)IR法の減衰全反射法(ATR法)により、屈折率の異なる4種の液体試料及び固体試料(バニリン)についてIRを測定した。8)炭酸塩類中の鉛及びヒ素の同時分析の前処理法として鉄共沈法を検討し、食用赤色3号(R3)中の鉛、ヒ素及び亜鉛について鉄共沈法及びキレート固相カートリッジを用いた抽出法の検討を行い、ICPにより分析した。
結果と考察
1)香料化合物については、日本は、品目数としては最も多く、総使用量は中南米に次いで少ないことが分かった。天然香料については、ほとんどの基原物質は平成25年と同様の使用量であった。2)アルデヒド系及びケトン系香料の流通側からの摂取量推計を明らかとした。最も摂取量が多かったのはバニリンであった。その摂取量は許容一日摂取量の0.21%であり、ADIに比べて摂取量は十分に低いことが示された。3)平成29年度と30年度の合計調査数は595件、回収数は531件、回収率は89.2%となり、回収率は前回を上回った。4)1016品目の規格を精査し、317品目はJECFA規格で問題なし、161品目は変更が望ましいと判断した。365品目は問題があり実測値を基に修正案を策定、173品目は更なる調査が必要と判断した。5)QSARが変異原性予測に有効であることが示された。また、新たに開発した香料に特化したローカルQSARモデルは予測精度から実用性に耐えうることが示された。6)HPMCの PCH定量法の検証結果より、GC-MSを用いる試験法の分析精度は、妥当と考えられた。7)測定試料の物性がスペクトル形状に影響を与えたことから、参照スペクトルとの比較の場合は条件を規定する必要があると考えられた。8)炭酸塩は試料液の調製法を変更することで、R3は鉄共沈法とキレート固相カートリッジを用いた抽出法を組み合わせることで、同時分析が可能となった。
結論
香料の使用量調査、MB方式による香料の摂取量調査の検討及び食品添加物の生産量統計調査を基にした摂取量の推定により、食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、これらの結果は食品の安全の確保に資すると考えられる。香料化合物規格については、多くの品目でJECFA規格の確認、修正を行うことができた。食品香料についての遺伝毒性評価予測システムの研究では、香料に特化したQSARモデルを開発した。食品添加物公定書一般試験法の改良に関する研究では、JECFA規格等で採用されている一般試験法のうち、質量分析計を用いる試験法等は、汎用性や国際整合の観点から今後公定書への追加を検討すべきと考えられた。IR測定法に関する調査研究では、確認試験にATR法を取り入れ、参照スペクトル法とする場合は、測定試料の物性を考慮した条件を規定する必要であると考えられた。鉛とヒ素の同時分析法に関する研究では、鉄共沈法やキレート固相カートリッジを用いた抽出法の適用により、ICPによる同時分析が可能となった。
公開日・更新日
公開日
2019-09-19
更新日
-