食品添加物の規格基準設定等に関する基礎的調査研究

文献情報

文献番号
199800581A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の規格基準設定等に関する基礎的調査研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
山田 隆(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 義平邦利(東亜大学)
  • 伊藤誉志男(武庫川女子大学)
  • 川崎洋子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 藤井正美(神戸学院大学)
  • 石綿肇(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 河村葉子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
19,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第七版食品添加物公定書が出版され、「食品中の食品添加物分析法」(食品化学課編)も大幅な改正が見込まれている。一方、既存添加物名簿には収載されているが規格がない品目も多い。これらについては、規格案を設定するための調査研究が必要である。そのため、一部既存添加物の組成、主成分の構造を明らかにする。
食品添加物の安全性を確保するためには、その摂取量調査が必要不可欠である。これまで、マーケットバスケット方式による調査が行われてきているが、これを補完するための調査も必要である。また、現在の「食品中の食品添加物分析法」に記載されている方法をより良くするため、あるいは、それに載っていないものを分析するために、新しい分析法の開発が必要である。また、今後使用される分析法には、環境や人体に対する負荷を減らすため、使用する溶媒等の選択に注意しなければならない。
ゴム製器具・容器包装は、用途が広く、使われる添加剤も多数にのぼるにもかかわらず、これまでの報告は少ないため、シリコーンゴムについて残存化学物質及びそれらの溶出傾向等を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.規格試験法、分析法からの有害試薬の除去に関しては、「第七版食品添加物公定書」から、まだ有害と考えられる試薬を使用している試験法を拾い出した。
2.既存添加物の規格設定のための検討では、クチナシ青色素のSDSゲル電気泳動による分子量の測定、PTC化法によるアミノ酸の測定等を行った。また、JECFA規格に関する検討を行った。
3. 既存添加物の主要成分の構造に関する研究は、ベニコウジ色素について、市販品の色素成分を単離し、機器分析を用いて行った。
4.食品中の食品添加物の定量法の作成とその実態調査は食品中のショ糖脂肪酸エステル(SFEA)を抽出し、ショ糖とSFEAを固相抽出により分離後SFEAをアルカリ加水分解し、生成したショ等を定量する。
5.食品中の未許可添加物の分析法の開発では、溶媒抽出の後に固相抽出を行い、パラヒドロキシ安息香酸メチルを分析した。透析後逆相HPLCすることにより、甘味料アリテームを分析した。
6.生産量統計を基にした食品添加物の摂取量の推定では、平成8、9年度に開始した食品添加物製造業者・輸入業者からの実需量アンケート調査の回答を精査し、食品添加物の使用量を推定した。
7.行政検査結果を基にした食品添加物の使用濃度と摂取量の推定は、全国の地方公共団体の行政検査の結果を集計して、食品中の保存料の平均濃度を求め、これに食品の摂取量を乗じて、保存料の摂取量を推計した。
8.ゴム製器具・容器包装中の間接添加物に関する研究 食品に用いる23検体のシリコーンゴム製品について、材質試験はシクロヘキサン:2-プロパノール混液で抽出し、GC/MSで同定及び定量、溶出試験は、20%エタノールで60℃30分間及びn-ヘプタン25℃60分間溶出の後、濃縮後GC/MSで測定した。
結果と考察
1.規格試験法、分析法からの有害試薬の除去では、第七版食品添加物公定書中より、水銀化合物、シアン化合物、ベンゼン、四塩化炭素を使用しているものそれぞれ、4品目、2品目、3品目、6品目見いだされた。これらについては、別の試験法を考案する必要がある。
2.既存添加物の規格設定のための検討 分子量は、検討した3社の製品ですべて異なっていた。アミノ酸としては、1社の製品は主としてproを含んでいた。香料212品目について業界で使用している規格を調査した。
3.既存添加物の主要成分の構造に関する研究では、市販品より、5種類の色素成分を新たに単離した。これらは、モナスコルブリン又はルブロパンクタチンの母核を有し、既存の色素とは置換したアミノ酸の種類が異なっていた。
4.食品中の食品添加物の定量法の作成とその実態調査では、SFEAの抽出にはメタノールが、固相抽出にはC-18が最適で、加水分解を5 mol/Lの水酸化カリウム、25℃,15分行った後、アンペロメトリー検出器付きHPLCで定量出来た。
5.食品中の未許可添加物の分析法の開発では、パラヒドロキシ安息香酸メチルを他のパラベン類と同時に、すべて回収率良く分析できた。甘味料アリテームを、サッカリン、アスパルテーム等他の合成甘味料と同時分析することが出来た。
6.生産量統計を基にした食品添加物の摂取量の推定では、指定添加物348品目について食品向け実使用量及び一日平均摂取量をリスト化する作業を完了した。
7.行政検査結果を基にした食品添加物の使用濃度と摂取量の推定では、一人1日当たり、安息香酸11.0 mg、デヒドロ酢酸0.047 mg、p-ヒドロキシ安息香酸1.06mg、プロピオン酸
5.43 mg、ソルビン酸26.0mgの結果を得た。1994年度の調査結果と大きな差はなかった。
8.ゴム製器具・容器包装中の間接添加物に関する研究 材質中からBHT、フタル酸ジブチル(DBP)及びフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)、ジメチルシロキサンの環状オリゴマー群が検出された。環状オリゴマーは、原料の未反応体、湿潤剤、充填剤等として添加されたものと推定された
結論
第七版食品添加物公定書中のヒト又は環境に有害な試薬を使用している品目を検索し、次回の改訂の資とした。
クチナシ青色素について規格設定時に問題となりそうな項目について検討した。また、JECFA規格のない既存添加物に対する業界自主規格の検討、及びJECFA規格のある香料化合物品目における市販製品の適合性の検討を行った.
ベニコウジ色素の市販品より、既知のものと異なる5種類の色素を得、構造を決定した。
食品より抽出後固相抽出によりショ等と分離、加水分解後アンペロメトリー検出によるHPLCを行うことで、食品中のショ糖脂肪酸エステルが定量出来た。
パラヒドロキシ安息香酸メチルを他のパラベン類と同時分析できた。アリテームを他の合成甘味料と同時分析できた。
食品添加物の製造業者と輸入業者に対するアンケート調査をまとめ、指定添加物348品目の一日平均摂取量の推定が出来た。
1996年度の安息香酸、デヒドロ酢酸、p-ヒドロキシ安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸の摂取量は、1994年度と大きな差はなかった。
シリコーンゴム中にBHT、フタル酸エステル類、ジメチルシロキサン環状オリゴマーが認められた。これらの物質の20%エタノールへの溶出は認められなかった。

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