社会的責任に応える医療の基盤となる診療ガイドラインの課題と可能性の研究

文献情報

文献番号
201520041A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的責任に応える医療の基盤となる診療ガイドラインの課題と可能性の研究
課題番号
H26-医療-指定-038
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学 理工学術院創造理工学部)
  • 水流 聡子(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 津谷 喜一郎(東京有明医療大学 保健医療学部)
  • 稲葉 一人(中京大学 法科大学院法務研究科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター研究所)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 吉田 雅博(国際医療福祉大学 臨床研究センター)
  • 石崎 達郎(東京都健康長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療ガイドラインが医療施策へ展開され、適切に発展、機能することを目指して、関連諸課題の理論的・実証的研究に取り組み、日本社会において望まれる診療ガイドラインの在り方・方向性を提示する。研究成果は関連学会や成果発表事業、患者会やマスメディアとの懇談会などを通じて社会にも積極的に還元し、関心を持つ人々との継続的な対話、協力関係の基盤を構築する。本課題の成果は厚生労働省が公益財団法人医療機能評価機構に委託事業としている診療ガイドラインをはじめとする医療情報サービスMindsにも積極的に提供し、その事業の推進を支援する。
研究方法
課題に応じて文献研究、疫学研究、ワークショップ等の方法を適用する。  
・クリティカル(クリニカル)・パスとの連携
・診療ガイドラインからの診療の質指標(QI)の開発と試行
・診療ガイドラインの法的位置づけ
・診療ガイドラインの作成・利用・普及における患者・一般市民参加の方向性
・コミュニケーションの基点としての診療ガイドラインの可能性
・診療ガイドラインを通した医療者の社会的責任とプロフェッショナリズムの検討
結果と考察
「リンパ浮腫診療ガイドライン構築過程」「乳がんガイドラインの組み込みによる推奨標準の実装状態評価」「多重ガイドラインの臨床活用に関する支援システムの必要性と患者毎疾病管理の最適化」「PCAPSサーベイに基づくガイドラインへの新たな基準の組み込み」について実証研究を進めた。PCAPSは麻生飯塚病院で局所麻酔~日帰り手術、聖マリア病院で電子カルテと粗結合したシステムにより動脈硬化性心血管疾患外来疾病管理(外来)・嚥下リハビリテーション(入院)・褥瘡(入院)、禎心会病院では電子カルテとの密結合との試験運用を終え、PCAPS-HIS連動システムとして循環器内科,脳外科から稼働、大久野病院は電子カルテとは独立に回復期病棟・療養型病棟で運用開始。トヨタ病院は婦人科系腫瘍術後の下肢リンパ浮腫の発生に年齢、BMI、子宮体がん、放射線治療、初期周囲径が独立した予測因子であることを示した。レセプトデータベースを用いて橈骨遠位端骨折後のリハビリテーション実施状況を検討、対象者11,981名のうちリハビリテーション実施は約20%、2011年の「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン」発表後も実施率の向上は見られず、未成年では10%ときわめて低率であった。修正デルファイ法で開発した心臓リハビリテーションと院内助産のQIを国際誌に投稿中。2014年の「難病の患者に対する医療等に関する法律」の成立と共に希少疾患のガイドライン作成が注目され、小児科領域疾患をモデルとしてその問題に取り組んだ。「診療ガイドラインの質」は「含まれている科学的根拠の質」ではないこと、結果的に科学的根拠がなくともシステマティックレビューを実施し、その結果十分な文献がなかったという事実が大事であること、科学的根拠を求めることが不適切でも総意形成手法によって客観性を高めることが可能という示唆を得た。米国のChoosing Wiselyキャンペーンを診療ガイドラインとの視点から考察し、過剰・過少医療の両方の視点からエビデンス診療ギャップの検討を進めた。医薬品安全性情報に関して平成24年に導入された医薬品リスク管理計画(RMP)の安全性検討事項の内容の診療ガイドラインでの言及について検討を進めた。判例データベースからカンガルーケアに関連した乳幼児の有害事象の裁判で「Mindsで評価された診療ガイドライン」が言及され(大阪高裁平成26年10月31日判決)、判決に明確な形で診療ガイドラインが参照されていることが示された。多疾患併存状況の実状解明に向けて、まず合併症(complication)、併存症:(comorbidity)、多病(multimorbidity, multiple chronic conditions)の概念を整理し、外来レセプトから東京都後期高齢者医療広域連合医療費分析を実施した。頻度の高い、関節症・高血圧・骨粗鬆症・脂質異常症・消化性潰瘍・糖尿病・認知症・白内障の8疾患をモデルに2病併存状態の定量的検討を進めた。
公開班会議を2016年1月9日、shared decision makingをテーマとした公開フォーラムを2016年2月24日に開催。またPCAPS研究会と協力して2014年から2015年に5回の研究会を行い、その成果を基盤として新たに「構造化臨床知識学会」が発足した(2015 年 12 月 12 日 設立シンポジウム 東京大学)。
結論
多面的な取り組みにより診療ガイドラインが社会的責任に応える医療の基盤としての成熟していくための課題と方向性を提示した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201520041B
報告書区分
総合
研究課題名
社会的責任に応える医療の基盤となる診療ガイドラインの課題と可能性の研究
課題番号
H26-医療-指定-038
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学 理工学術院創造理工学部)
  • 水流 聡子(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 津谷 喜一郎(東京有明医療大学 保健医療学部)
  • 稲葉 一人(中京大学 法科大学院法務研究科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター研究所)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 吉田 雅博(国際医療福祉大学 臨床研究センター)
  • 石崎 達郎(東京都健康長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療ガイドラインが医療施策へ展開され、適切に発展、機能することを目指して、関連諸課題の理論的・実証的研究に取り組み、日本社会において望まれる診療ガイドラインの在り方・方向性を提示する。研究成果は関連学会や成果発表事業、患者会やマスメディアとの懇談会などを通じて社会にも積極的に還元し、関心を持つ人々との継続的な対話、協力関係の基盤を構築する。本課題の成果は厚生労働省が公益財団法人医療機能評価機構に委託事業としている診療ガイドラインをはじめとする医療情報サービスMindsにも積極的に提供し、その事業の推進を支援する。
研究方法
課題に応じて文献研究、疫学研究、ワークショップ等の方法を適用する。  
・クリティカル(クリニカル)・パスとの連携
・診療ガイドラインからの診療の質指標(QI)の開発と試行
・診療ガイドラインの法的位置づけ
・診療ガイドラインの作成・利用・普及における患者・一般市民参加の方向性
・コミュニケーションの基点としての診療ガイドラインの可能性
・診療ガイドラインを通した医療者の社会的責任とプロフェッショナリズムの検討
結果と考察
「リンパ浮腫診療ガイドライン構築過程」「乳がんガイドラインの組み込みによる推奨標準の実装状態評価」「多重ガイドラインの臨床活用に関する支援システムの必要性と患者毎疾病管理の最適化」「PCAPSサーベイに基づくガイドラインへの新たな基準の組み込み」について実証研究を進めた。PCAPSは麻生飯塚病院で局所麻酔~日帰り手術、聖マリア病院で電子カルテと粗結合したシステムにより動脈硬化性心血管疾患外来疾病管理(外来)・嚥下リハビリテーション(入院)・褥瘡(入院)、禎心会病院では電子カルテとの密結合との試験運用を終え、PCAPS-HIS連動システムとして循環器内科,脳外科から稼働、大久野病院は電子カルテとは独立に回復期病棟・療養型病棟で運用開始。トヨタ病院は婦人科系腫瘍術後の下肢リンパ浮腫の発生に年齢、BMI、子宮体がん、放射線治療、初期周囲径が独立した予測因子であることを示した。レセプトデータベースを用いて橈骨遠位端骨折後のリハビリテーション実施状況を検討、対象者11,981名のうちリハビリテーション実施は約20%、2011年の「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン」発表後も実施率の向上は見られず、未成年では10%ときわめて低率であった。修正デルファイ法で開発した心臓リハビリテーションと院内助産のQIを国際誌に投稿中。2014年の「難病の患者に対する医療等に関する法律」の成立と共に希少疾患のガイドライン作成が注目され、小児科領域疾患をモデルとしてその問題に取り組んだ。「診療ガイドラインの質」は「含まれている科学的根拠の質」ではないこと、結果的に科学的根拠がなくともシステマティックレビューを実施し、その結果十分な文献がなかったという事実が大事であること、科学的根拠を求めることが不適切でも総意形成手法によって客観性を高めることが可能という示唆を得た。米国のChoosing Wiselyキャンペーンを診療ガイドラインとの視点から考察し、過剰・過少医療の両方の視点からエビデンス診療ギャップの検討を進めた。医薬品安全性情報に関して平成24年に導入された医薬品リスク管理計画(RMP)の安全性検討事項の内容の診療ガイドラインでの言及について検討を進めた。判例データベースからカンガルーケアに関連した乳幼児の有害事象の裁判で「Mindsで評価された診療ガイドライン」が言及され(大阪高裁平成26年10月31日判決)、判決に明確な形で診療ガイドラインが参照されていることが示された。多疾患併存状況の実状解明に向けて、まず合併症(complication)、併存症:(comorbidity)、多病(multimorbidity, multiple chronic conditions)の概念を整理し、外来レセプトから東京都後期高齢者医療広域連合医療費分析を実施した。頻度の高い、関節症・高血圧・骨粗鬆症・脂質異常症・消化性潰瘍・糖尿病・認知症・白内障の8疾患をモデルに2病併存状態の定量的検討を進めた。
公開班会議を2016年1月9日、shared decision makingをテーマとした公開フォーラムを2016年2月24日に開催。またPCAPS研究会と協力して2014年から2015年に5回の研究会を行い、その成果を基盤として新たに「構造化臨床知識学会」が発足した(2015 年 12 月 12 日 設立シンポジウム 東京大学)。
結論
多面的な取り組みにより診療ガイドラインが社会的責任に応える医療の基盤としての成熟していくための課題と方向性を提示した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201520041C

収支報告書

文献番号
201520041Z