文献情報
文献番号
201519001A
報告書区分
総括
研究課題名
急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究
課題番号
H25-肝炎-一般-010
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 内田 茂治(日本赤十字社血液事業本部 中央血液研究所)
- 山崎一美(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター)
- 池田 健次(虎の門病院 肝臓センター肝臓内科)
- 相崎英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 日野啓輔(川崎医科大学医学部内科学)
- 江口有一郎(佐賀大学 肝疾患医療支援学)
- 三浦 宜彦(埼玉県立大学)
- 宮坂昭生(岩手医科大学医学部 内科学講座)
- 島上哲朗(金沢大学附属病院 消化器内科)
- 片山惠子(安田女子大学 看護学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
36,875,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎、肝がんによる健康被害の抑制、防止を最終的な目標とした肝炎ウイルスキャリア対策、ウイルス肝炎・肝がん対策及び肝炎ウイルス感染予防対策を策定するための基礎的資料を収集、提示することを目的とする
研究方法
基礎医学、臨床医学、社会医学の専門家の参加を得て組織的に実施した
結果と考察
Ⅰ. 新規感染も含めた肝炎ウイルス感染状況に関する疫学
1)1971-2010年8期の肝癌標準化死亡比SMR、ベイズ型標準化死亡比EBSMRを市区町村別に推定
2)医系学生へのHBワクチン接種前後の抗体獲得率と抗体価の動態、3回接種後1ヵ月で陰転4.6%、弱陽性からの陰転63%
3)新規原発性肝癌273例のHBc抗体の関与を検討、HCV・NBNC関連共にHBc抗体陽性約40%
4)9施設共同研究7451名のHCV遺伝子型は、1b65%、2a+2b: 23+8%、1970年以降出生では1b38%,2a+2b :27+25%
5)血液透析患者集団3,087名中、245例HCV遺伝子型は1b73%, 2a+2b:11+7%
6)総献血者4953084人を対象とした2014全国HBV調査。CLEIA法HBs抗原・個別NAT陽性904例の解析と2006、2010年調査と比較。HBs抗原陽性率は40歳代以降減少。沖縄県は減少せず、中四国・九州地方で陽性率の高い県あり。遺伝子型Aは微増、新規感染例の25%以上
7)献血者集団約300万人、5年間対象としたRetrospective cohort 研究により罹患率を推定。HCV新規感染66例、0.7/10万人年。女性50歳代のリスク高、IDSCとも合致。HBV新規感染266例、4.1人/10万人年。関東、西日本で高。感染経路の探索と予防対策は重要
8)住民検診「HCVキャリアを見出すための検査手順」を64233例の判定振り分けにより検証。精度は維持、手順簡便化。新たな測定系「HISCL HCV Ab」を住民検査としての有用性を検討
9)検診集団550474人のHBs抗原陽性率1.97 %。1917年出生群(4.6 %)と1947年出生群(2.6 %)、1968年出生群(2.1%)にピーク。HBs抗体陽性率は24 %。1971年以降出生群のHBV感染は極めて減少
4)14事業所職域集団2285人、受検歴14%と低。HBs抗原陽性率1.0%HBc抗体陽性率15.7%、HCVキャリア率0.44% 。初めて感染が判明HBV10人とHCV4人。職域の検査の推進が重要
Ⅱ.感染後の長期経過と治療導入対策に関する研究
1)1979年からの住民コホートHBV キャリア944例の生命予後を検討。肝疾患関連死亡率は肝硬変で高、HBe抗原陰性で低。HBs抗原消失率はHBe抗原陰性と肝硬変は同率
2)患者コホートA病院HCV患者2,743人(32,120unit)およびB病院1,173人(12,379unit)の肝癌累積罹患率を有限Markov確率モデルにより推定、IFN治療SVR以外はIFN治療無し群と同等。SVR後肝発癌は男性30%、女性11%
3)2000年以後に肝細胞癌と診断された患者コホート:1934例の背景病態は糖尿病20%、高血圧15%。近年増加傾向は心疾患7%、脳血管障害3%、認知症0.5%
4)HCVキャリア患者コホート8954名中2743例、傾向スコアマッチングによる検討、IFN-SVR群の20年肝発癌率はnon-IFN群より有意に低、全生存率は長期。競合リスクモデルによりウイルス駆除は肝疾患非関連死亡も抑制する
5)岩手、岐阜、茨城、石川、佐賀、広島のキャリア対策と治療導入対策:フォローアップシステムの導入効果や改善点を提示。医療機関への未受診や通院中断患者の対策、人間ドック受診後の働きかけも重要。チラシを局所的に大量に配布する事が有効。ウイルス性肝炎はほとんどが無症状であるために感染の重大性が理解出来ないことが課題
Ⅲ.対策の効果評価および効果測定指標に関する研究
1)47自治体から得た情報から肝炎対策の進行度と対策stage別にスコアを設定し、自治体毎の対策推進の指標を提示した
2)北海道診療報酬記録を用い保険者・肝癌肝硬変別医療費を推計
3)4施設共同研究1995~2015年肝癌患者3,902名を対象にリードタイムバイアスを補正した手法によりHCCサーベイランスの有効性を提示
4)2011年時点における肝炎ウイルス持続感染者数を210-275万人と推計(2000年300~370万人)。ウイルス排除率の多寡別に2030年までの将来予測モデルを構築、HCV感染者数の推定予測
1)1971-2010年8期の肝癌標準化死亡比SMR、ベイズ型標準化死亡比EBSMRを市区町村別に推定
2)医系学生へのHBワクチン接種前後の抗体獲得率と抗体価の動態、3回接種後1ヵ月で陰転4.6%、弱陽性からの陰転63%
3)新規原発性肝癌273例のHBc抗体の関与を検討、HCV・NBNC関連共にHBc抗体陽性約40%
4)9施設共同研究7451名のHCV遺伝子型は、1b65%、2a+2b: 23+8%、1970年以降出生では1b38%,2a+2b :27+25%
5)血液透析患者集団3,087名中、245例HCV遺伝子型は1b73%, 2a+2b:11+7%
6)総献血者4953084人を対象とした2014全国HBV調査。CLEIA法HBs抗原・個別NAT陽性904例の解析と2006、2010年調査と比較。HBs抗原陽性率は40歳代以降減少。沖縄県は減少せず、中四国・九州地方で陽性率の高い県あり。遺伝子型Aは微増、新規感染例の25%以上
7)献血者集団約300万人、5年間対象としたRetrospective cohort 研究により罹患率を推定。HCV新規感染66例、0.7/10万人年。女性50歳代のリスク高、IDSCとも合致。HBV新規感染266例、4.1人/10万人年。関東、西日本で高。感染経路の探索と予防対策は重要
8)住民検診「HCVキャリアを見出すための検査手順」を64233例の判定振り分けにより検証。精度は維持、手順簡便化。新たな測定系「HISCL HCV Ab」を住民検査としての有用性を検討
9)検診集団550474人のHBs抗原陽性率1.97 %。1917年出生群(4.6 %)と1947年出生群(2.6 %)、1968年出生群(2.1%)にピーク。HBs抗体陽性率は24 %。1971年以降出生群のHBV感染は極めて減少
4)14事業所職域集団2285人、受検歴14%と低。HBs抗原陽性率1.0%HBc抗体陽性率15.7%、HCVキャリア率0.44% 。初めて感染が判明HBV10人とHCV4人。職域の検査の推進が重要
Ⅱ.感染後の長期経過と治療導入対策に関する研究
1)1979年からの住民コホートHBV キャリア944例の生命予後を検討。肝疾患関連死亡率は肝硬変で高、HBe抗原陰性で低。HBs抗原消失率はHBe抗原陰性と肝硬変は同率
2)患者コホートA病院HCV患者2,743人(32,120unit)およびB病院1,173人(12,379unit)の肝癌累積罹患率を有限Markov確率モデルにより推定、IFN治療SVR以外はIFN治療無し群と同等。SVR後肝発癌は男性30%、女性11%
3)2000年以後に肝細胞癌と診断された患者コホート:1934例の背景病態は糖尿病20%、高血圧15%。近年増加傾向は心疾患7%、脳血管障害3%、認知症0.5%
4)HCVキャリア患者コホート8954名中2743例、傾向スコアマッチングによる検討、IFN-SVR群の20年肝発癌率はnon-IFN群より有意に低、全生存率は長期。競合リスクモデルによりウイルス駆除は肝疾患非関連死亡も抑制する
5)岩手、岐阜、茨城、石川、佐賀、広島のキャリア対策と治療導入対策:フォローアップシステムの導入効果や改善点を提示。医療機関への未受診や通院中断患者の対策、人間ドック受診後の働きかけも重要。チラシを局所的に大量に配布する事が有効。ウイルス性肝炎はほとんどが無症状であるために感染の重大性が理解出来ないことが課題
Ⅲ.対策の効果評価および効果測定指標に関する研究
1)47自治体から得た情報から肝炎対策の進行度と対策stage別にスコアを設定し、自治体毎の対策推進の指標を提示した
2)北海道診療報酬記録を用い保険者・肝癌肝硬変別医療費を推計
3)4施設共同研究1995~2015年肝癌患者3,902名を対象にリードタイムバイアスを補正した手法によりHCCサーベイランスの有効性を提示
4)2011年時点における肝炎ウイルス持続感染者数を210-275万人と推計(2000年300~370万人)。ウイルス排除率の多寡別に2030年までの将来予測モデルを構築、HCV感染者数の推定予測
結論
上記、得られた知見は研究目的に適う
公開日・更新日
公開日
2017-01-17
更新日
-