ウイルス等感染性因子安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201427032A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス等感染性因子安全性評価に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-029
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 遊佐 敬介(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 橋井 則貴(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 菊池 裕(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部)
  • 吉倉 廣(国立感染症研究所)
  • 前田 洋助(熊本大学大学院 生命科学研究部)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 研究・産学連携推進機構 再生医療研究センター)
  • 黒須 剛(大阪大学 難治疾患研究所)
  • 萩原 克郎(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類)
  • 小林 哲(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
31,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年,改正薬事法と再生医療安全性確保法が施行となり,難治性疾患治療等を対象とした細胞組織加工製品に強い国民の期待が寄せられている.同時にiPS細胞研究等の基礎研究の優位性を生かした成長産業としての期待も大きい.一方,バイオ医薬品も,癌やリウマチ治療等における重要性が認識され,革新的で多様な製品の開発が進んでいる.細胞組織加工製品や革新的バイオ医薬品の研究成果の早期実用化に向けた課題として,ウイルス等感染性因子の安全性確保のための要件を明らかにすることが求められている.特に期待が寄せられている細胞組織加工製品に関しては,ウイルス,細菌,マイコプラズマ,異常型プリオン等の感染性因子に関する安全性をいかに確保していくかが最優先課題となっている.本研究では,細胞組織加工製品及びバイオ医薬品の開発,治験,承認申請・審査,適正使用の環境整備を目的として4つの課題,(1)細胞組織加工製品のウイルス安全性確保,(2)ウシ等由来原料に係る基準の見直し,(3)プリオン安全性確保,並びに(4)細胞組織加工製品に適用可能な無菌試験法,マイコプラズマ否定試験法及びエンドトキシン試験法の開発及び標準化,を行った.
研究方法
(1)では,細胞組織加工製品におけるウイルス感染リスク要因を考慮しながら,文献調査,臨床検体の分析,感染性実験等のデータに基づくリスク評価を行い,リスク対応策としての検出方法,及び製造管理方法等をまとめた.(2)では,国際獣疫事務局において,日本・米国等が新たに伝達性海綿状脳症の「無視できるリスク国」に指定されたことを踏まえ,医薬品等原料規制のあり方を検討した.(3)では,国際動向調査,及びin vivo, in vitro高感度異常プリオン検出法の開発を行い,調査結果及び高感度検出法により得られたデータに基づき,現在の異常プリオン評価基準を科学的見地から検証した.(4)では,マイコプラズマ否定試験について,細胞組織加工製品の特性を踏まえた試験法に関する考え方を整理し,細胞組織加工製品に適用可能な試験法について検討した.また,細胞組織加工製品の安全性確保のための出荷判定試験として実施可能な無菌試験法について検討した.さらに,細胞組織加工製品にエンドトキシン試験をどのように適用していくべきか検討した.
結果と考察
(1)では,細胞組織加工製品製造の原材料の新規のウイルス検出系として次世代シークエンサーを使った網羅的なウイルス検出のためのパイプラインを構築し,新規ウイルス検出法として実用化が可能であるかどうかの検討を行った.また,iPS細胞が単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に感受性を持つことも示した.さらに,副作用症例報告のデータベースを解析するソフトウェアを開発し,リスク因子の分析を試みた.加えて,「細胞組織加工製品におけるウイルス安全性確保に向けたリスクマネジメントケーススタディ」を行った.(2)では,国際獣疫事務局(OIE)において,日本,米国等が新たにBSEの「無視できるリスク国」に指定されたことを踏まえ,OIEによる指定の妥当性,原産国規制,原材料のリスク,高度精製品,非定型BSE等を検討した.そして,これらに基づいて,提言を「医薬品等のウシ等由来原料のBSEリスク評価について」にまとめた.(3)では,バイオ医薬品等の原料への異常型プリオン (PrPSc) の混入/迷入リスクを低減するために,クリアランス工程の評価法について最新の状況を調査した.また,工程評価法としてマウス馴化vCJD株を用いて,プリオン除去能を算出した. (4)では,出荷時に適用される日局無菌試験が細胞組織加工製品に最適化されていないことから,現実に実施可能な無菌試験法について検討した.また,最終製品の出荷試験として,マイコプラズマ否定試験の実施が求められているが,日局参考情報による試験法は細胞組織加工製品の特性を考慮すると必ずしも最適とはいえない.そこで,本研究ではマイコプラズマの迅速検査法として核酸増幅法を細胞組織加工製品に適用する場合の評価法を整理した.同様に細胞組織加工製品に適用するエンドトキシン試験に関しては,日局エンドトキシンに沿った試験が困難な場合にどのように試験を実施するのが合理的であるのか検討,整理した.
結論
細胞組織加工製品のウイルス安全性に関して,特に同種及びiPS細胞等の感染リスクを分析するとともにリスク低減策を考察した.ウシ等由来原料に係る基準の見直し,プリオン安全性評価,並びに細胞組織加工製品に適用可能な無菌試験法・マイコプラズマ否定試験法・エンドトキシン試験法の開発及び標準化も行った.これらの結果は相互に役立つものであり,計画通りにリスクマネジメントプロセスを例示することができた.

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201427032B
報告書区分
総合
研究課題名
ウイルス等感染性因子安全性評価に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-029
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 遊佐 敬介(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 橋井 則貴(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 小林 哲(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 前田 洋助(熊本大学大学院 生命科学研究部)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 研究・産学連携推進機構 再生医療研究センター)
  • 山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 黒須 剛(大阪大学 難治疾患研究所)
  • 萩原 克郎(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類)
  • 菊池 裕(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部)
  • 吉倉 廣(国立感染症研究所)
  • 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年,改正薬事法と再生医療安全性確保法が施行となり,難治性疾患治療等を対象とした細胞組織加工製品に強い国民の期待が寄せられている.同時にiPS細胞研究等の基礎研究の優位性を生かした成長産業としての期待も大きい.一方,バイオ医薬品も,癌やリウマチ治療等における重要性が認識され,革新的で多様な製品の開発が進んでいる.細胞組織加工製品や革新的バイオ医薬品の研究成果の早期実用化に向けた課題として,ウイルス等感染性因子の安全性確保のための要件を明らかにすることが求められている.特に期待が寄せられている細胞組織加工製品に関しては,ウイルス,細菌,マイコプラズマ,異常型プリオン等の感染性因子に関する安全性をいかに確保していくかが最優先課題となっている.本研究では,細胞組織加工製品及びバイオ医薬品の開発,治験,承認申請・審査,適正使用の環境整備を目的として5つの課題,(1)細胞組織加工製品のウイルス安全性確保,(2)ウシ等由来原料に係る基準の見直し,(3)プリオン安全性確保,並びに(4)細胞組織加工製品に適用可能な無菌試験法,マイコプラズマ否定試験法及びエンドトキシン試験法の開発及び標準化,(5)「バイオ医薬品のウイルス安全性評価」を行った.
研究方法
(1)では,細胞組織加工製品におけるウイルス感染リスク要因を考慮しながら,文献調査,臨床検体の分析,感染性実験等のデータに基づくリスク評価を行い,リスク対応策としての検出方法,及び製造管理方法等をまとめた.(2)では,国際獣疫事務局において,日本・米国等が新たに伝達性海綿状脳症の「無視できるリスク国」に指定されたことを踏まえ,医薬品等原料規制のあり方を検討した.(3)では,国際動向調査,及び高感度異常プリオン検出法の開発を行い,調査結果及び高感度検出法により得られたデータに基づき,現在の異常プリオン評価基準を科学的見地から検証した.(4)では,マイコプラズマ否定試験,無菌試験法について検討した.さらに,細胞組織加工製品にエンドトキシン試験をどのように適用していくべきか検討した.
結果と考察
(1)では,細胞組織加工製品製造の原材料の新規のウイルス検出系として次世代シークエンサーを使った網羅的なウイルス検出のためのパイプラインを構築し,新規ウイルス検出法として実用化が可能であるかどうかの検討を行った.また,iPS細胞が単純ヘルペスウイルス1型に感受性を持つことも示した.さらに,副作用症例報告のデータベースを解析するソフトウェアを開発し,リスク因子の分析を試みた.加えて,「細胞組織加工製品におけるウイルス安全性確保に向けたリスクマネジメントケーススタディ」を行った.(2)では,国際獣疫事務局(OIE)において,日本,米国等が新たにBSEの「無視できるリスク国」に指定されたことを踏まえ,OIEによる指定の妥当性,原産国規制,原材料のリスク,高度精製品,非定型BSE等を検討した.そして,これらに基づいて,提言を「医薬品等のウシ等由来原料のBSEリスク評価について」にまとめた.(3)では,バイオ医薬品等の原料への異常型プリオン (PrPSc) の混入/迷入リスクを低減するために,クリアランス工程の評価法について最新の状況を調査した.また,工程評価法としてマウス馴化vCJD株を用いて,プリオン除去能を算出した.加えて異常型プリオンを特異的に検出する抗体の作製を行った.(4)では,出荷時に適用される日局無菌試験が細胞組織加工製品に最適化されていないことから,現実に実施可能な無菌試験法について検討した.また,最終製品の出荷試験として,マイコプラズマ否定試験の実施が求められているが,日局参考情報による試験法は細胞組織加工製品の特性を考慮すると必ずしも最適とはいえない.そこで,本研究ではマイコプラズマの迅速検査法として核酸増幅法を細胞組織加工製品に適用する場合の評価法を整理した.同様に細胞組織加工製品に適用するエンドトキシン試験に関しては,日局エンドトキシンに沿った試験が困難な場合にどのように試験を実施するのが合理的であるのか検討,整理した.(5)「バイオ医薬品のウイルス安全性評価」では,製品のウイルス汚染事例を精査することで製品のウイルス安全性の要件を明らかにした.
結論
細胞組織加工製品のウイルス安全性に関して,特に同種及びiPS細胞等の感染リスクを分析するとともにリスク低減策を考察した.ウシ等由来原料に係る基準の見直し,プリオン安全性評価,並びに細胞組織加工製品に適用可能な無菌試験法・マイコプラズマ否定試験法・エンドトキシン試験法の開発及び標準化も行った.これらの結果は相互に役立つものであり,計画通りにリスクマネジメントプロセスを例示することができた.

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201427032C

収支報告書

文献番号
201427032Z