除染等作業での内部被ばく防止措置等の最適化のための研究

文献情報

文献番号
201425016A
報告書区分
総括
研究課題名
除染等作業での内部被ばく防止措置等の最適化のための研究
課題番号
H25-労働-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
甲田 茂樹(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 研究企画調整部)
研究分担者(所属機関)
  • 鷹屋 光俊(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
  • 篠原 也寸志(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
  • 中村 憲司(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
  • 山田 丸(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,426,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,福島第一発電所の事故により放射性セシウムで汚染された土壌の除染処理業務を対象に,作業者がばく露する土壌粉じんの濃度測定を実施し、内部被ばくに関与する粉じんばく露を評価することである。具体的には、1.除染業務を実施する土質の違い等によりK値が影響を受けるのかどうか、2.粉じん濃度と比放射能を測定することで空気中放射性物質の推定の精度を検証する。そして、粉じんの粒度別の比放射能を測定することで、粉じんばく露に伴う内部被ばくの防止に効果的な対策が存在するのかについての知見を得る。
研究方法
帰還困難区域にある常磐高速道工事現場での除染業務において土壌粉じんの濃度を測定し、内部被ばくに関与する粉じんばく露を評価した。除染業務にあたる2名の作業者の協力を得て、IOMサンプラーを用いてインハラブル粉じん(粒径は0.106mm以下)の個人ばく露測定を行い、さらにIOMサンプラーやアンダーセンサンプラーを用いて定点の粉じんばく露及びその粒度分布を測定評価した。K値はIOMサンプラーとデジタル粉じん計LD-5での併行測定で求めた。粉じん捕集にはフッ素樹脂処理ガラス繊維フィルターを用い、捕集前後のフィルター重量をウルトラミクロ天秤により秤量した。ゲルマニウム半導体検出器を用いたセシウム137濃度(Bq/g)の測定は、日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター・核燃料サイクル工学研究所で実施した。また、汚染土壌を研究所に持ち帰って、実験室レベルで再発じん実験を行い、粉じん濃度やその粒径分布、さらには、セシウム137濃度の測定評価を実施した。土壌の汚染度合いによる違いを検討するため、高濃度汚染が予想される福島第一原発近傍の土壌も研究所に持ち帰って同様の測定評価を実施した。再発じん実験には今回の研究専用に土壌再発じん装置(DF-3、柴田科学製)を作成して用いた。現場等から持ち帰った汚染土壌はあらかじめふるい等で106µm以下に前処理したものを再発じん実験装置に投入し、粉じんの測定評価にはIOM・アンダーセン・NWPS245・LD-6Nなどを用いた。常磐高速道工事現場と福島第一原発近傍の土壌については、粉末X線回折装置を用いた鉱物分析と分析透過電子顕微鏡による観察を行い、土壌の性質等を比較検討した。
結果と考察
常磐高速道工事現場の現場調査で得られた個人ばく露測定結果をみると、0.67-1.82mg/m3で、セシウム137濃度は124-241Bq/gであった。今回実施し得た現場調査は重機による除染業務であり、過去に申請者たちが測定してきた除染業務に比べて大がかりなものであることから、通常の除染業務よりは土壌の発じんの程度が強いことが予想された。また、今回測定された例数は限られてはいるものの、粉じん濃度除染作業時のばく露粉じん濃度とセシウム137濃度との相関が認められなかった。常磐高速道の工事現場と福島第一原発近傍で採取した汚染土壌の再発じん実験結果から、粉じんの粒径分布等とセシウム137濃度との関係を検討した結果、粉じんの粒径の大きさによって両者の間に異なる関係が存在することが確認された。すなわち、粉じんの比表面積が小さい場合には、セシウム137濃度との間に比例関係を認めたが、比表面積が大きくなると、セシウム137濃度と比表面積との関係は無関係となり、粒径の大きさによって粉じんと放射性セシウム含有鉱物との関係が異なる状態にあることが示唆された。また、除染作業におけるK値についても、昨年度の非汚染土壌を用いた模擬作業や除染作業の現場で測定調査から、得られたK値は0.0039-0.0044 mg/m3/cpmであった。ちなみに、投入された土壌サンプルが106µm以下と均一な試料で実施した再発じん実験で得られたK値も0.0041-0.0111 mg/m3/cpmであった。
結論
除染業務の際の粉じんばく露を評価する際に質量濃度変換係数(K値)が用いられるが、このK値を活用したリスク管理が空気中の放射性物質濃度を推定する指標として活用できるか検討した結果、困難であることが判明した。土壌粉じんにセシウム137がどのように付着しているのかを検討した結果、粉じんの比表面積が小さい場合にはセシウム137濃度との間に比例関係を認めたが、粉じんの比表面積が大きくなるとセシウム137濃度と比表面積との関係は無関係となり、粒径の大きさによって粉じんと放射性セシウム含有鉱物との関係が異なる状態にあることがわかった。今回の現場での測定結果などを参考にすると、粉じん濃度が10mg/m3を下回る環境では、除染電離則で想定していた値に比べて、K値はさらに一桁低い値であり、土壌の違い等によってもさほど影響されないことがわかった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201425016B
報告書区分
総合
研究課題名
除染等作業での内部被ばく防止措置等の最適化のための研究
課題番号
H25-労働-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
甲田 茂樹(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 研究企画調整部)
研究分担者(所属機関)
  • 鷹屋 光俊(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
  • 篠原 也寸志(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
  • 中村 憲司(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
  • 山田 丸(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 環境計測管理研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,福島第一発電所の事故により放射性セシウムで汚染された土壌の除染処理業務を対象に,作業者がばく露する土壌粉じんの濃度測定を実施し、内部被ばくに関与する粉じんばく露を評価することである。具体的には、1.除染業務を実施する土質の違い等によりK値が影響を受けるのかどうか、2.粉じん濃度と比放射能を測定することで空気中放射性物質の推定の精度を検証する。そして、粉じんの粒度別の比放射能を測定することで、粉じんばく露に伴う内部被ばくの防止に効果的な対策が存在するのかについての知見を得る。
研究方法
粉じんばく露の測定評価系については、先行研究で実施してきた内容を参考にしたが、試行的に福島県楢葉町での除染作業でその精度の確認を行った。さらに、除染作業時の粉じんばく露が土質による異なるかどうかを確認するために、非汚染土壌を用いて模擬実験を行った。次に、帰還困難区域にある常磐高速道工事現場での除染業務において土壌粉じんの濃度を測定し、内部被ばくに関与する粉じんばく露を評価した。除染業務にあたる2名の作業者の協力を得て、IOMサンプラーを用いてインハラブル粉じん(粒径は0.106mm以下)の個人ばく露測定を行い、さらにIOMサンプラーやアンダーセンサンプラーを用いて定点の粉じんばく露及びその粒度分布を測定評価した。K値はIOMサンプラーとデジタル粉じん計LD-5での併行測定で求めた。ゲルマニウム半導体検出器を用いたセシウム137濃度(Bq/g)の測定は、日本原子力研究開発機構で実施した。また、汚染土壌を研究所に持ち帰って、実験室レベルで再発じん実験を行い、粉じん濃度やその粒径分布、さらには、セシウム137濃度の測定評価を実施した。土壌の汚染度合いによる違いを検討するため、高濃度汚染が予想される福島第一原発近傍の土壌も研究所に持ち帰って同様の測定評価を実施した。再発じん実験には今回の研究専用に土壌再発じん装置(DF-3、柴田科学製)を作成して用いた。現場等から持ち帰った汚染土壌はあらかじめふるい等で106µm以下に前処理したものを再発じん実験装置に投入し、粉じんの測定評価にはIOM・アンダーセン・LD-6Nなどを用いた。比較した両者の土壌については、粉末X線回折装置を用いた鉱物分析と分析透過電子顕微鏡による観察を行い、土壌の性質等を比較検討した。
結果と考察
常磐高速道工事現場の現場調査で得られた個人ばく露測定結果をみると、0.67-1.82mg/m3で、セシウム137濃度は124-241Bq/gであった。今回実施し得た現場調査は重機による除染業務であり、過去に申請者たちが測定してきた除染業務に比べて大がかりなものであることから、通常の除染業務よりは土壌の発じんの程度が強いことが予想された。また、今回測定された例数は限られてはいるものの、粉じん濃度除染作業時のばく露粉じん濃度とセシウム137濃度との相関が認められなかった。常磐高速道の工事現場と福島第一原発近傍で採取した汚染土壌の再発じん実験結果から、粉じんの粒径分布等とセシウム137濃度との関係を検討した結果、粉じんの粒径の大きさによって両者の間に異なる関係が存在することが確認された。すなわち、粉じんの比表面積が小さい場合には、セシウム137濃度との間に比例関係を認めたが、比表面積が大きくなると、セシウム137濃度と比表面積との関係は無関係となり、粒径の大きさによって粉じんと放射性セシウム含有鉱物との関係が異なる状態にあることが示唆された。また、除染作業におけるK値についても、昨年度の非汚染土壌を用いた模擬作業や除染作業の現場で測定調査から、得られたK値は0.0039-0.0044 mg/m3/cpmであった。ちなみに、投入された土壌サンプルが106µm以下と均一な試料で実施した再発じん実験で得られたK値も0.0041-0.0111 mg/m3/cpmであった。
結論
除染業務の際の粉じんばく露を評価する際に質量濃度変換係数(K値)が用いられるが、このK値を活用したリスク管理が空気中の放射性物質濃度を推定する指標として活用できるか検討した結果、困難であることが判明した。土壌粉じんにセシウム137がどのように付着しているのかを検討した結果、粉じんの比表面積が小さい場合にはセシウム137濃度との間に比例関係を認めたが、粉じんの比表面積が大きくなるとセシウム137濃度と比表面積との関係は無関係となり、粒径の大きさによって粉じんと放射性セシウム含有鉱物との関係が異なる状態にあることがわかった。今回の現場での測定結果などを参考にすると、粉じん濃度が10mg/m3を下回る環境では、除染電離則で想定していた値に比べて、K値はさらに一桁低い値であり、土壌の違い等によってもさほど影響されないことがわかった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201425016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
除染等作業における内部被ばくに関与する土壌粉じんばく露を評価した。土壌粉じんの粒径分布等とセシウム137濃度との関係を検討した結果、粉じんの粒径の大きさによって両者の間に異なる関係が存在することが確認された。すなわち、粉じんの比表面積が小さい場合には、セシウム137濃度との間に比例関係を認めたが、比表面積が大きくなると、セシウム137濃度と比表面積との関係は無関係となり、粒径の大きさによって粉じんと放射性セシウム含有鉱物との関係が異なる状態にあることが示唆された。
臨床的観点からの成果
土壌粉じんの粒径分布等とセシウム137濃度との関係を検討した結果、粉じんの粒径の大きさによって両者の間に異なる関係が存在することが確認されたため、除染業務の際の粉じんばく露を評価する際に質量濃度変換係数(K値)を活用したリスク管理が空気中の放射性物質濃度を推定する指標として活用することは困難であることと考えられる。また、今回の研究結果から、除染電離則で想定していた値に比べて、K値はさらに一桁低い値であり、土壌の違い等によってもさほど影響されないことがわかった。
ガイドライン等の開発
現段階では審議会等で参考にされた事実はないが、今後、除染電離則の運用や見直しを審議する検討会などでは参考にされる可能性がある。
その他行政的観点からの成果
現段階では審議会等で参考にされた事実はないが、今後、除染電離則の運用や見直しを審議する検討会などでは参考にされ、行政施策に反映される可能性はある。
その他のインパクト
今回の調査結果がまとまったのが2015年4月末であるため、5月の第88回日本産業衛生学会で学会報告したが、今後は論文等にもまとめていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
山田丸他「重機を用いたセシウム汚染土壌除去作業時における粉じんおよび放射能濃度」、第88回日本産業衛生学会、2015年5月、大阪市
学会発表(国際学会等)
2件
2015年にミネアポリスで行われた米国エアロゾル学会、2017年に札幌で開催された第27回日本韓産業保健交流会で山田が発表した。
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
2022-06-09

収支報告書

文献番号
201425016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,774,681円
人件費・謝金 197,752円
旅費 360,840円
その他 92,727円
間接経費 1,574,000円
合計 7,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
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