大学等教育研究機関における就業前及び若手技術者向けの安全工学教育プログラムの提案

文献情報

文献番号
201425003A
報告書区分
総括
研究課題名
大学等教育研究機関における就業前及び若手技術者向けの安全工学教育プログラムの提案
課題番号
H24-労働-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡崎 慎司(国立大学法人横浜国立大学 安心・安全の科学研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤江 幸一(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 大谷 英雄(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 三宅 淳巳(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 上野 誠也(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 岡 泰資(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 亀屋 隆志(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 小林 剛(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 澁谷 忠弘(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 熊崎 美枝子(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 笠井 尚哉(国立大学法人 横浜国立大学 安全・安心の科学研究教育センター)
  • 伊藤 大輔(国立大学法人 横浜国立大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、社会構造・産業構造の急激な変化により科学技術がかつてない速度で複雑化・高度化している。このような情勢において、現段階では産業技術や社会システム等を人類が十分にコントロールしきれておらず、事故や産業災害が頻発するという深刻な状況に我々は直面している。科学技術が社会に及ぼす負の効果をできる限り低減化するために、企業や自治体等の組織によるリスクマネジメントや安全文化の醸成が極めて重要とされているが、団塊世代の大量退職による技術伝承の困難さや若手技術者の資質の低下等で、このような取組が十分効果を発揮できていない現状がある。この問題を解決するためにも、次世代の産業界の担い手となる若年層の技術者・研究者に対して、時代のニーズに則した効果的な安全教育を施すことは、安心・安全な社会の創生に寄与するだけでなく、彼らを様々な労働災害から守ることにもつながる。本研究事業では、大学等高等教育機関において就業前教育の一環として実施できる効果的な安全工学教育カリキュラム例を示すとともに、産業界の若手技術者の安全意識を深化させるための教育プログラムを産業界と連携したニーズ調査に基づいて提案することを目的とした。
研究方法
平成26年度は当該研究の最終年度にあたるため、これまでの研究成果を踏まえた総括的な検討を行うとともに具体的には次に述べるような重点的な取組を行う。まず平成24年度に開発した安全工学教育プログラムをベースとして、国内外調査結果から抽出した情報を反映させた上で、当該教育プログラムを充実させる。また公的研究機関等の協力や事例調査等の提供を得て、演習教材など教育プログラムへの組み込みとその評価を行う。公開セミナーで本プロジェクトの研究成果を社会に発信し、そこでの議論を通してカリキュラム内容等のブラッシュアップを図る。さらに、大学機関又は化学系民間企業の一線で活躍する外部専門家へのヒアリング調査、安全工学教育等を実施する国内外機関への調査に基づいて、カリキュラムの検証、就業前学生及び若手技術者を対象とした教育プログラムのあり方、産業界との最適な役割分担や連携について提言を行う。
結果と考察
平成26年度は、平成24、25年度に開発した安全工学教育プログラムのコンテンツを整備・強化に資する情報をさらに収集するため、化学系専攻以外の学生に対しても安全工学・安全衛生に関する基礎事項の認識度調査を行い、その比較を行うとともに、課題の抽出や情報整理を行った。また、これまで実施した海外動向調査及び企業に対するアンケート調査について解析を行い、公開セミナーにおいて広く情報発信と関係者との意見交換を行い、カリキュラムの発展・向上に関する今後の方向性を明らかにした。特に今回開発したカリキュラムは基盤的能力の付与には効果的であるが、産業界としては技術伝承の不足、安全管理力の低下、ルールの軽視、リスクアセスメント不足に関連するヒューマンエラーに関するカリキュラムの発展も期待されていた。さらに、大学機関に属するあるいは化学系企業の安全部門を牽引する外部の専門家にヒアリングを行った結果、カリキュラムは機械工学や化学工学等の基盤的知識と連動しているので有効であるが、現場力を養成するための改良が必要であることがわかった。この他、国外調査としてチェコ・オストラバ工科大学、オランダ・デルフト工科大学の安全工学関連教育プログラムの調査・情報収集を行った。その結果、学部教育においては、安全工学のみならず、基礎科目の履修も重要なことが分かった。また修士教育や社会人教育において、教育カリキュラムはモジュール化されており、短期間で高い教育効果が得られている様子が伺えた。
結論
本事業において開発した安全工学教育基盤モジュールは、化学安全・環境安全・材料安全とそれを包括するリスクに関する教育カリキュラムから構成される。前年度のアンケート調査などから就業前学生に対して実施することの有用性や学生の学習意欲が高いことが明らかとなっているが、本年度の調査においてもそれが確認されると同時に、外部専門家へのヒアリング調査などから若手技術者の育成など産業界においても一定の役割を果たすであろうことが明らかになった。今後は、これらのカリキュラムを学内外に開き、その効果の検証が行われること、その過程でカリキュラムのさらなる改善や補充を産業界と連携して行い、企業内でも活用されることを期待したい。これらの啓蒙活動により労働災害の減少や労働災害自主管理に関する能力の早期向上に役立つものと考えられる。さらに、この教育プログラムを通じて、安全に関する高い意識と感度を有する中堅技術者の育成だけでなく、安全を牽引するエンジニアリングリーダーの育成にもつながっていけるよう活用の幅を広げる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201425003B
報告書区分
総合
研究課題名
大学等教育研究機関における就業前及び若手技術者向けの安全工学教育プログラムの提案
課題番号
H24-労働-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡崎 慎司(国立大学法人横浜国立大学 安心・安全の科学研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤江 幸一(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 大谷 英雄(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 三宅 淳巳(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 上野 誠也(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 岡 泰資(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 亀屋 隆志(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 小林 剛(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 澁谷 忠弘(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 熊崎 美枝子(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 笠井 尚哉(国立大学法人 横浜国立大学 安全・安心の科学研究教育センター)
  • 伊藤 大輔(国立大学法人 横浜国立大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、社会構造・産業構造の急激な変化により科学技術がかつてない速度で複雑化・高度化している中、現段階では産業技術や社会システム等を人類が十分にコントロールしきれず、事故や産業災害が頻発するという深刻な状況に我々は直面している。この問題を解決するためにも、次世代の産業界の担い手となる若年層の技術者・研究者に対して、時代のニーズに則した効果的な安全教育を施すことは、安心・安全な社会の創生に寄与するだけでなく、彼らを様々な労働災害から守ることにもつながるため極めて重要と考えられる。本研究事業では、大学等高等教育機関において就業前教育の一環として実施できる効果的な安全工学教育カリキュラム例を示すとともに、産業界の若手技術者の安全意識を深化させるための教育プログラムを産業界と連携したニーズ調査に基づいて提案することを目的とした。
研究方法
本研究事業は平成24~26年度の3カ年計画であり、下記のような内容の研究を行った。
まず、就業前教育の一環として実施できる効果的な安全工学教育プログラムとして、化学安全・環境安全・材料安全とそれを包括するリスクに関する教育カリキュラムの開発を行った。教育プログラムに関する評価を産業界へのアンケート等により行い、学生のエンプロイアビリティの向上に資するための情報抽出と教育プログラムの強化を図った。また主に京浜京葉工業地帯に所在するモノづくり企業に対するアンケート及びヒアリング調査を行い、就業前教育として企業ニーズに合致しているかを評価した。
次に、安全工学各分野に関連した重要要素に対する理解度を測定するための基本問題をアンケートテンプレートに組み込み、本学学生にアンケート調査を実施、学生の安全工学教育に対する受容性について調べた。
この他、このカリキュラム強化につながる基礎情報収集するため、国内外教育機関の調査も行った。

結果と考察
24年度は、就業前教育の一環として効果的な安全工学教育プログラムとして化学安全工学、環境安全工学、材料安全工学の3つの柱からなる専門プログラムに、包括的なリスク/危機管理を加えた教育プログラムパッケージを開発、さらに学生の教育受容性や理解・達成度等をアンケート調査するためのテンプレートを開発し、学生の教育受容性や安全工学の基礎的事項に関する理解度状況を調査・解析した。安全工学に対する関心や自己のキャリア形成に必要と考える学生が大半を占める一方、基礎的な事項に関する理解が浅い点も多く存在することが判明した。国外調査では既存の安全工学教育プログラムの詳細な調査を行った。
25年度は、主に京浜京葉工業地帯に所在するモノづくり企業に対するアンケート及びヒアリング調査を行った。その結果、開発したカリキュラムは就業前教育として概ね企業ニーズに合致しているとの評価を得た。さらに、企業において新卒社員や中堅技術者の安全意識を向上させるために体感教育が相当充実していることが分かった。その根底にあるのは産業現場における世代の移り変わりや、KYT等で若者が危険予測ができなくなっている状況があり、体感教育・グループ討論が重要視されていた。国外調査では、当該カリキュラムに盛り込むことができる教材や教育システムに関する情報を収集した。
26年度は、安全工学に関する基礎事項の認識度の追加調査を化学系以外の学生に対しても行い、その比較と共に、課題の抽出や情報整理を行った。また、これまで実施した海外動向調査及び企業に対するアンケート調査についての解析を進め、公開セミナーにおける情報発信と関係者との意見交換を行い、カリキュラムの発展に向けた今後の方向性を明らかにした。さらに、外部大学機関及び化学系企業の専門家に対するヒアリングを行い、当該カリキュラムは機械工学や化学工学等の基盤的知識と連動しているので有効であるが、現場力を養成するための改良が必要であることが示唆された。
結論
本事業で開発した安全工学教育基盤モジュールは、化学安全・環境安全・材料安全とそれを包括するリスクに関する教育カリキュラムから構成されるが、3ヵ年にわたって実施したアンケート調査や大学機関あるいは化学系民間企業の一線で活躍する外部専門家に対するヒアリング調査などから就業前学生や民間企業の若手技術者に対して実施することの有用性や一定のニーズが存在することが明らかとなった。さらに、国外・国内調査を通じた外部機関との連携により視聴覚教材や演習等、カリキュラム強化につながる情報収集ができた。本プロジェクトで得られた研究成果を公開セミナーにより発信し、そこで議論した結果、カリキュラムに盛り込むべき内容や形態など更なる改善点も明らかになったが、それらは今後に向けた提言としたい。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-07-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201425003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
産業災害を低減化するために有効な安全工学教育について、イギリス・チェコ・オランダ・米国などの海外学術機関における先進例の調査を行うとともに、国内では大学及び化学安全等にかかわる教育機関や大学機関あるいは化学系民間企業の一線で活躍する外部専門家へのヒアリングや書面によるアンケート調査を行い、基本的な要素と効果的な実施形態を提言することができた。さらに、学生に対する学習意欲度や認識度も調査し、学生の安全工学教育に対する受容性等を明らかにすることができた。
臨床的観点からの成果
本研究における臨床的な要素を学生として捉え、学生に対するアンケート調査を詳述する。学生の教育受容性や理解・達成度等をアンケート調査するためのアンケートテンプレートを開発し、在学生を含め合計で400名程度に対して調査を実施してその状況を解析した。その結果、安全工学に対する関心や自己のキャリア形成に必要と考える学生が大半を占める一方、基礎的な事項に関する理解が浅い点も多く存在することが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
就業前教育の一環として実施できる効果的な安全工学教育プログラムとして燃焼、火災、爆発、混触などを中心に扱う化学安全工学、大気・土壌・河川などの環境汚染と浄化及び化学物質の管理に係る環境安全工学、座屈、疲労による破壊や腐食及び非破壊検査や防食方法などの対策を中心に扱う材料安全工学の3つの柱からなる専門プログラムに、包括的なリスク/危機管理を加えた教育カリキュラムと代表的なコンテンツを開発・提案した。
その他行政的観点からの成果
各企業内でOJTを実施する体力が減少している近年の経済情勢の中、卒業後に産業界で活動する将来の技術者に対し、適切な安全教育を事前に実施することができ、各企業の労働災害自主管理に貢献するものと期待される。特に、労働安全衛生法第19条の2第2項の規定に基づいて、事業者が行うべき能力向上教育に関する指針が公表されているが、本教育プログラムは当該業務に関する能力向上を図るための基盤教育として位置付けられ、大学等で実施できる体系的かつ教育効果の高いプログラムパッケージとして利用されることが期待できる。
その他のインパクト
公開セミナーを平成24年度と平成26年度の2回にわたって行い、本調査研究の情報や成果を広く情報発信するとともに関連分野に携わる多くの関係者との意見交換を行った。これにより、カリキュラムの発展・向上に関する今後の方向性を明らかにした。さらに、今回開発したカリキュラムは基盤的能力の付与には効果的であるが、産業界としては技術伝承の不足、安全管理力の低下、ルールの軽視、リスクアセスメント不足に関連するヒューマンエラーに関するカリキュラムの発展も期待されていた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
「第39回産業安全対策シンポジウム」「第9回体系的安全教育プログラムの構築と推進検討委員会」「第9回水道システムシンポジウム」「第274回総合安全懇話会」にて講演を行い、成果普及につとめた。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201425003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 68,621円
人件費・謝金 1,238,837円
旅費 1,501,293円
その他 191,249円
間接経費 900,000円
合計 3,900,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-