文献情報
文献番号
201415031A
報告書区分
総括
研究課題名
HAMの革新的な治療法となる抗CCR4抗体療法の実用化に向けた開発
課題番号
H25-難治等(難)-一般-023
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
- 松本 直樹(聖マリアンナ医科大学 薬理学)
- 菊地 誠志(国立病院機構北海道医療センター)
- 藤原 一男(東北大学 多発性硬化症治療学)
- 中川 正法(京都府立医科大学附属北部医療センター)
- 竹之内 徳博(関西医科大学 微生物学講座)
- 永井 将弘(愛媛大学医学部附属病院臨床薬理センター)
- 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院 神経内科学)
- 中村 龍文(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学)
- 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 神経病学講座)
- 渡嘉敷 崇(琉球大学大学院医学研究科 循環器腎臓神経内科学)
- 高田 礼子(聖マリアンナ医科大学 予防医学)
- 中島 孝(国立病院機構新潟病院)
- 山海 嘉之(筑波大学大学院 システム情報工学研究科)
- 齊藤 峰輝(川崎医科大学医学部 微生物学教室)
- 外丸 詩野(北海道大学大学院医学研究科 病理学講座分子病理学分野)
- 植田 幸嗣(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
- 松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所 ウイルス制御研究領域)
- 内丸 薫(東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
256,422,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HTLV-1関連脊髄症(HAM)は進行性の痙性脊髄麻痺を特徴とし、有効な治療法がなく極めて深刻な難治性疾患であり、画期的な新薬の実用化が急務である。そこで本研究では、HAMに対する有効性が期待される新規医薬品の医師主導治験を実施し、その実用化を推進する。本研究班では、平成24年度までに、国内企業が開発したヒト化抗CCR4抗体(KW-0761)の、HAMにおける抗感染細胞活性と抗炎症活性を証明し(特許取得)、治験プロトコールの作成、PMDAの対面助言を完了。また、GCP準拠の治験実施体制を整備し、HAMに対するKW-0761の医師主導治験を実施できるレベルを達成した。本研究ではその成果を踏まえ、HAMに対するKW-0761の安全性と有効性に関する第I/IIa相医師主導治験を実施する。また、治験の症例集積性を確保するために、本研究班が構築したHAM患者登録システム(HAMねっと)を充実させ、治験の円滑な運営を図る。
研究方法
試験デザインは、HAMが希少難病であることを踏まえ、出来るだけ早期に新薬承認がなされるよう、第 I/IIa相試験と工夫した。第 I相では、最初に静脈内投与し、その後は4週毎に12週間観察、抗KW-0761阻害抗体が検出されなければ第IIa相に移行する。第IIa相では、4週毎に観察し、末梢血中のウイルス量が検出された場合、8~12週間隔で再投与となり、平成27年10月まで観察する。対象は、既存治療で効果不十分なステロイド維持療法中のHAM患者。主要評価項目は安全性で、用量制限毒性(DLT)の発現状況に基づき、最大耐用量(MTD)を明らかにし、同時に薬物動態について検討する。また副次的に、抗感染細胞効果と10m歩行時間の非増悪期間(臨床効果)を検討して有効性を探索する。KW-0761の投与量は、5段階の投与量レベルからなり、低いレベルから段階的に高いレベルへと移行し、投与量レベル移行の判断は効果安全性評価委員会で諮られる。なお、モニタリング、データマネジメント、安全性情報管理、治験薬管理、生物統計解析、CRCの確保、監査、効果安全性評価委員会など、GCPに準拠した治験実施体制で行った。実施施設は、聖マリアンナ医科大学付属病院で、治験薬は企業より無償提供される。また本治験では、付随研究として、髄液中のウイルス定量、各種炎症マーカー、血液中の制御性T細胞率、抗HTLV-1免疫応答、ATL前駆細胞率、次世代シークエンサーを用いた感染細胞のクローナリティなどを解析し、KW-0761の有効性や宿主免疫応答への影響、ATL発症予防効果などについても詳細に検討する。また、HAMねっとのデータシステムを構築し、それを活用した疫学調査を実施する。
結果と考察
本研究課題は平成25年9月に採択され、同年10月に治験審査委員会の承認を受け、11月に治験届を提出し、公開した(UMIN 000012655)。治験の進捗は順調で、平成26年1月から第1相の症例登録を開始し、全部で5段階ある投与レベルのうち、全ての投与レベルでの安全性を確認し、本薬剤のHAMにおける最大耐用量を明らかにした。第I相が終了した患者は、順次第IIa相へ組入れる計画となっており、平成26年5月から第IIa相の症例登録を開始した。予定被験者(21名)のリクルートも、本研究班で確立したHAMねっとを活用して順調に進捗し、平成27年2月に最終症例の組入れが完了した。また、平成26年11月にデータセンター・モニタリング実施機関の、同年12月に治験実施医療機関の外部監査を完了した。今後は、第I相を平成27年5月に、第IIa相を平成27年10月に終了する予定である。また有効性に関しても、POC(proof of concept)がほぼ得られている状況であり、HAMの画期的な新薬を実用化できる可能性が見えてきた。
また、本研究で構築したHAMねっとのデータシステムを活用し、ステロイド内服療法の長期的な治療効果を示した。このような治療に関する情報の収集と解析は、新薬開発における試験デザインの設計などに重要であるのみならず、HAMの最適な治療法の確立に結び付くエビデンスを構築していく上でも極めて重要である。
また、本研究で構築したHAMねっとのデータシステムを活用し、ステロイド内服療法の長期的な治療効果を示した。このような治療に関する情報の収集と解析は、新薬開発における試験デザインの設計などに重要であるのみならず、HAMの最適な治療法の確立に結び付くエビデンスを構築していく上でも極めて重要である。
結論
本研究は、これまで有効な治療法がなかったHAMに対する日本発の革新的な医薬品の実用化に向けた第I/IIa相医師主導治験の進展を着実に達成し、さらにHAMの最適な治療法の確立に結びつくエビデンスの構築を推進した。
公開日・更新日
公開日
2017-03-31
更新日
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