一般用医薬品の安全な販売制度体制の確保に関する研究

文献情報

文献番号
201328043A
報告書区分
総括
研究課題名
一般用医薬品の安全な販売制度体制の確保に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-034
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宜彦(埼玉県立大学 埼玉県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 延原 弘章(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 中村 好一(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の郵便等販売についての必要性と郵便等販売を認める場合の条件の検討を行うための基礎資料を提供することを目的として、郵便等販売利用者の意識と実態等に関する調査および郵便等販売方法別の情報提供の効果に関する調査を行った。
研究方法
(1)郵便等販売利用者の意識と実態等に関する調査
 鹿児島県において郵便等販売を行っている薬局等24店舗に対して調査協力を依頼し、同意の得られた14店舗を通じて、第2類医薬品または薬局製造販売医薬品を郵便等販売により購入している者のうち、各店舗が調査協力可能と回答した82人を対象に調査を実施した。調査は平成25年1月に、郵送調査法により無記名で行った。
 昨年度は調査開始が遅く、単純集計のみであったため、今年度、詳細な分析を行った。
(2)郵便等販売方法別の情報提供の効果に関する調査
 調査協力者に、実際に店舗に行き医薬品を購入する方式(以下、対面方式とする)とインターネットで医薬品を購入する方式(以下、インターネット方式とする)のどちらかの方式で、第1類医薬品であるガスター10、ロキソニンSのいずれかを購入させた。その後、調査協力者に対して、予め定められた項目について個別に聞き取り調査を行い、医薬品の情報提供の状況および理解度の比較を行った。
 調査は東京23区と高知市で行った。調査地区、性別、年齢、購入医薬品についてバランスを考慮した計122人を調査協力者とした。
結果と考察
(1)郵便等販売利用者の意識と実態等に関する調査
 多くの者は漢方薬の購入者であり、近隣の薬局等では入手困難であるために郵便等販売を利用していた。ただし、一般的な物品の通信販売とは異なり、多くの場合、薬局等と購入者の間には面識があり、電話でのやり取りも行われているなど、ある程度の信頼関係が構築されている様子が見受けられた。
 このような傾向に、性・年齢による大きな差異は認められなかったが、漢方製剤の購入者は、女性では半数強であるのに対して、男性では9割以上と、男性のほとんどは漢方製剤の購入者であった。
さらに、漢方製剤購入者では電話による注文がほとんどで、ほぼ毎月購入する者が7割を占めた。また、副作用があったと仮定した場合の相談先としては、漢方製剤購入者では病院・診療所等を挙げる者が少なく、購入したお店を挙げる者が比較的多くみられるなど、薬局等とのより密接な関係がうかがえた。
 対面販売によらない医薬品の購入といえば、近年では不特定多数を対象としたインターネットによる購入を思い浮かべがちであるが、漢方薬、特に漢方製剤に関しては、店舗への訪問経験があり、ある程度限定された者を対象とした繰り返しの販売で、注文時も含めて電話でのやり取りが交わされているため、比較的リスクの低い販売方法のように思われた。
(2)郵便等販売方法別の情報提供の効果に関する調査
 対面方式とインターネット方式による第1類医薬品販売の際の情報提供の比較では、それぞれの課題が示された。
 対面方式では、購入者の状況に合わせて、薬剤師による臨機応変の対応が可能であるが、担当する薬剤師によって提供する情報や対応が異なっており、薬剤師によって提供される情報と、薬剤師による購入者の状態把握能力の標準化を図ることが課題として挙げられた。
 インターネット方式では、提供される情報が標準化されるが、購入者が読み飛ばす傾向がみられたため、情報提供の方法に工夫が必要であった。チェックリストの採用により、ある程度の効果は期待できるものの、チェックの項目が多かったり、提供される情報が多かったりすると、やはり読み飛ばしが発生するため、購入者の読み飛ばしを防ぐ方法を検討し、情報提供方法の標準化が必要である。
 対面方式、インターネット方式に共通した課題としては、購入者に提供される情報の優先順位を医薬品ごとに定め、用語や表現の簡素化や説明方法の効率化を図ることが必要であろう。
結論
 医薬品の郵便等販売のうち、漢方製剤に関しては、薬局等と購入者の間でコミュニケーションのとれているケースが多く、比較的リスクが低いように思われた。
 また、対面方式においては、薬剤師によって提供される情報と、薬剤師による購入者の状態把握能力の標準化を図ること、インターネット方式においては、購入者の読み飛ばしに対する工夫の必要性が示された。さらに、対面方式、インターネット方式に共通した課題としては、購入者に提供される情報の優先順位を医薬品ごとに定め、用語や表現の簡素化や説明方法の効率化を図ることが必要であり、これらに対する検討が進められることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201328043B
報告書区分
総合
研究課題名
一般用医薬品の安全な販売制度体制の確保に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-034
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宜彦(埼玉県立大学 埼玉県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井 博通(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 延原 弘章(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 横井 英人(香川大学 医学部付属病院医療情報部)
  • 中村 好一(自治医科大学 医学部)
  • 坪井 聡(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の郵便等販売についての必要性と郵便等販売を認める場合の条件の検討を行うための基礎資料を提供することを目的とする。
研究方法
(1)一般用医薬品購入者と専門家の意識と実態に関する調査
 長野県の一般住民(3000人)、山村居住の住民(500人)、松本市の薬剤師(200人)を対象とし、郵送法により無記名で調査を実施した。
(2)郵便等販売利用者の意識と実態等に関する調査
 鹿児島県において郵便等販売を行っている薬局等24店舗に対して調査協力を依頼し、同意の得られた14店舗を通じて、第2類医薬品または薬局製造販売医薬品を郵便等販売により購入している者のうち、各店舗が調査協力可能と回答した82人を対象に郵送調査法により無記名で調査を実施した。
(3)遠隔医療を用いた服薬指導・服薬管理・相談応需の可能性に関する研究
 遠隔医療に関する先行研究情報の抽出および医学中央雑誌とPubMedによる国内外の遠隔医療および服薬指導に関する研究事例の検索を行うとともに、香川県「かがわ医療福祉総合特区」について、県庁および実施地域関係者への聞き取り調査を行い、これらを基に専門家による分析を行った。
(4)郵便等販売方法別の情報提供の効果に関する研究
 調査協力者に、実際に店舗に行き医薬品を購入する方式(以下、対面方式とする)とインターネットで医薬品を購入する方式(以下、インターネット方式とする)のどちらかの方式で、第1類医薬品であるガスター10、ロキソニンSのいずれかを購入させた。その後、調査協力者に対して、予め定められた項目について個別に聞き取り調査を行い、医薬品の情報提供の状況および理解度の比較を行った。
結果と考察
(1)一般用医薬品購入者と専門家の意識と実態に関する調査
 インターネットサイトで医薬品の購入経験者は2%にすぎなかった。医薬品購入に関する一般人の認識としては、リスクと利便性は相反するものとして捉える傾向が見られた。また、テレビ電話、電話あるいはインターネットを利用した医薬品の説明は、店頭での対面での説明に比べて、分りやすさ、信頼性ともに劣ると考えており、ネットで購入を希望する者は少なかったが、薬剤師についてもほぼ同様であった。
(2)郵便等販売利用者の意識と実態等に関する調査
 多くの者は漢方薬の購入者であり、近隣の薬局等では入手困難であるために郵便等販売を利用していた。ただし、一般的な物品の通信販売とは異なり、多くの場合、薬局等と購入者の間には面識があり、電話でのやり取りも行われているなど、ある程度の信頼関係が構築されている様子が見受けられた。さらに、漢方製剤購入者では薬局等とのより密接な関係がうかがえた。
(3)遠隔医療を用いた服薬指導・服薬管理・相談応需の可能性に関する研究
 現時点の遠隔医療技術では、「特定少数」の対象者に、対面時に得た情報を活用した服薬指導・管理・相談応需のみ実現されているだけで、大規模な「遠隔医療による服薬指導」等に活かせる知見は少なかった。海外の医薬品のネット販売に関しては、処方箋医薬品および非処方箋(薬局販売)医薬品ともに、米英独3国で認められていた。いずれも薬局の登録・認証制度があり、販売者の信頼性確保策が定められているが、日本で知られていない、海外の優越した制度やシステムは見受けられなかった。
(4)郵便等販売方法別の情報提供の効果に関する研究
 対面方式では、購入者の状況に合わせて、薬剤師による臨機応変の対応が可能であるが、担当する薬剤師によって提供する情報や対応が異なっており、薬剤師によって提供される情報と、薬剤師による購入者の状態把握能力の標準化を図ることが課題として挙げられた。インターネット方式では、提供される情報が標準化されるが、購入者が読み飛ばす傾向がみられたため、情報提供の方法に工夫が必要であった。両方式に共通した課題としては、購入者に提供される情報の優先順位を医薬品ごとに定め、用語や表現の簡素化や説明方法の効率化を図ることが必要であろう。
結論
 医薬品の郵便等販売については、比較的小規模で同じ対象について繰り返し販売を行っている漢方薬等の販売とインターネットを介した大規模な販売については、対応方法を分けて考える必要がある。特に、インターネットを介した医薬品の販売には、どのようなリスクが存在するのか不明な点も多いが、日本遠隔医療学会のまとめた「遠隔医療技術を用いた服薬指導や管理に関する意見書」を参考に、必要な措置が講じられることが望まれる。一方、一般人・薬剤師共に、医薬品の対面販売は、他の方法にくらべて信頼度が高く、分りやすいと思われているが、対面販売、インターネット販売ともそれぞれに、医薬品の情報提供に問題点がみられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201328043C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 一般の医薬品購入者および薬剤師の医薬品販売方法についての意識と実態、郵便等販売の利用者の意識と実態、医薬品情報提供に関する情報通信技術の可能性、対面販売とインターネット販売による医薬品情報提供の特徴と課題などを明らかにした。本研究の成果は、一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討に活用された。
臨床的観点からの成果
 本研究は臨床研究ではないが、適切な医薬品情報の提供が行われることにより、より安全な医薬品の使用が期待される。
ガイドライン等の開発
 本研究は臨床研究ではないが、適切な医薬品情報の提供が行われることにより、より安全な医薬品の使用が期待される。
その他行政的観点からの成果
 改正された薬事法の下、平成26年6月より新しいルールの下で一般用医薬品のインターネット販売が開始されるが、このルールを検討する際に資料として活用されただけでなく、一般用医薬品のインターネット販売が開始された後も、医薬品情報のさらなる効果的な提供方法を検討する際の基礎資料として利用されることが期待される。
その他のインパクト
 一部、学会での発表を行ったが、今後、学会発表および学術論文としての発表を予定している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-07-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328043Z