革新的医療機器開発を加速する規制環境整備に関する研究

文献情報

文献番号
201328030A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的医療機器開発を加速する規制環境整備に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
新見 伸吾(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
研究分担者(所属機関)
  • 配島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 澤田 留美(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 加藤 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 植松 美幸(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 石原 一彦(東京大学大学院 工学系研究科 マテリアル工学専攻)
  • 佐々木 啓一(東北大学大学院 歯学研究科 歯科インプラント学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
32,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、材料/細胞界面特性を支配する主要因子である水和状態、イオン及び蛋白質吸着挙動等は、材料が持つ血液適合性や骨親和性のほか、力学的特性にも関与することが明らかになりつつある。本研究では、これら支配因子のほか、材料上で培養した細胞の挙動を分子レベルで詳細に検討し、医用材料が示す生物学的特性等との相関性を総合的に検証することにより、各因子を指標として医用材料の生体適合性をin vitroで評価する簡易スクリーニング系を開発することを目的とする。歯科分野においては、新規歯科用インプラントについて、科学的根拠に基づく審査基準の策定を目指す。
研究方法
新規材料の物理化学的特性評価については、AFMフォースカーブ測定により、材料表面と蛋白質の相互作用を定量的に分析した。血液適合性評価マーカの探索については、生体適合性の異なる23種類の材料に吸着する血漿・血清蛋白質の網羅的比較定量解析により選定したマーカ候補蛋白質の絶対定量を行った。蛋白質吸着の動力学的解析については、各種高分子材料をコーティングしたQCMセンサーを作製し、血漿蛋白質の吸着挙動を解析した。分子シミュレーションを用いた材料表面の水和状態については、中間水の動き易さの数値化に関するin silico解析を行った。既存試験法の予備的検証実験では、ISO/WD 10993-4(血液適合性試験)に掲げられている試験項目の評価を兼ねて、各種高分子材料を浸漬したヒト血液の補体、血小板及び血液凝固系活性を測定した。細胞挙動については、各種高分子材料上でhMSC又はTHP-1細胞を培養し、細胞内の遺伝子及び蛋白質発現挙動を解析した。歯科用インプラントについては、歯科インプラントの機械的強度に係るワーストケース設定の根拠やインプラント表面処理方法等の考え方について国際的な動向を踏まえて討議した。
結果と考察
AFMフォースカーブ測定により、材料表面と蛋白質の相互作用を定量分析した結果、蛋白質吸着を高度に抑制するためには、官能基との分子間相互作用を排除する表面設計が必要不可欠であることが判明した。血液適合性評価マーカ探索に関する研究では、候補蛋白質の検証を行った結果、FA7、FA9、C1s、FINC及びVTNCがマーカとして利用できることが確認された。MEA/ HEMA共重合体をコーティングしたQCMセンサーによる解析の結果、FIBはMEA比率の増加に伴って解離速度定数が増加し、結合定数が低下する傾向が確認された。各種高分子材料を浸漬したヒト血液を用いて既存血液適合性試験の検証実験を行った結果、TAT活性は材料が有する血液適合性と相関する可能性が示唆された。分子シミュレーションによる解析では、メトキシ基近傍に存在する水分子がバルク水と交換される現象が観測され、当該水分子が中間水に相当することが示唆された。MEA/ HEMA共重合体をコーティングした材料上で培養したhMSCの遺伝子発現プロファイルの解析の結果、細胞の運動性や未分化性の維持等に関与するEMT Pathwayの亢進が全群に認められ、MEAの割合が高い方がより亢進される可能性が示唆された。また、THP-1を用いた遺伝子発現解析の結果、PMEAでは有意に上昇する機能が多く観察され、PHEMAでは逆に低下する機能が多く認められた。THP-1の細胞内蛋白質発現挙動解析の結果、PMEAでは炎症系蛋白質、血液凝固関連蛋白質及び細胞形態・接着に関与する一連の蛋白質の誘導が低下する傾向が認められた。今後、これらの界面特性評価や細胞挙動解析等を引き続き行うと共に、国際規格の整合に必要な基礎データの収集等について広範且つ詳細に検討し、血液適合性に関する新たなin vitro試験法を提案する。新規歯科用インプラントに関する研究では、承認審査で行うべき考え方を学術的に検討・整理し、「課題解決に向けた提言」としてまとめた。この提言は申請資料作成の効率化及び審査の迅速化に繋がることが期待される。
結論
高分子材料の血液適合性を評価する簡易in vitro試験法の開発を目指して、種々の基礎データを収集した結果、同材料の血液適合性は表面に吸着する血漿蛋白質の種類と量、結合・解離速度定数のほか、材料上で培養した細胞の遺伝子及び蛋白質発現挙動を指標として評価できる可能性を見出した。既存試験法の検証実験においては、現在、改訂作業が進められているISO文書の試験項目について、妥当性評価のための基礎データが得られた。また、材料表面の水和状態の解析が分子シミュレーションにより予測できる可能性が示唆されると共に、新規生体適合性高分子材料の創製における表面設計に関する知見が得られた。新規歯科用インプラントに関しては、承認審査における「課題解決に向けた提言」を取りまとめた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
32,840,000円
(2)補助金確定額
32,840,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 22,815,276円
人件費・謝金 1,302,359円
旅費 2,978,660円
その他 5,745,805円
間接経費 0円
合計 32,842,100円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
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