文献情報
文献番号
201318007A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法と標準化に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所 )
研究分担者(所属機関)
- 森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 見理 剛(国立感染症研究所 細菌第二部)
- 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
- 堀野 敦子(国立感染症研究所 細菌第二部)
- 黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
- 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
- 永田 典代(国立感染症研究所 感染病理部)
- 倉園 久生(帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門)
- 田中 智之(堺市衛生研究所 )
- 岩本 愛吉(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
- 松本 哲哉(東京医科大学 微生物学講座)
- 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 中村 修(慶応義塾大学 環境情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
37,156,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
バイオテロに利用される可能性のある病原体等は、感染し発症すれば非常に高い致死率を示す物が多い。バイオテロは病原体等が散布されて患者発生までに潜伏期があり、さらに稀な病原体が使用されるため、早期検知には一次医療機関の医師等への臨床診断支援が必須である。患者検体、時には環境検体から原因病原微生物の迅速な検出と同定、かつ確認のために患者の血清抗体検査や病原体等の分離同定が必要となる。さらに病原体の由来を知るための塩基配列の解析とデータベースの確立も重要となる。一方通常の病院や検査機関では確定診断が困難であり、確定検査が遅れる可能性がある。バイオテロ対策としては、病原体の早期検知法の確立と迅速診断システムの整備が必須である。さらに、早期検出により、感染拡大を防止し、社会的なパニックを防止する必要がある。本研究では、バイオオテロの迅速な検出を可能とし、さらに感染防止策等の迅速な対応策の策定を可能とする科学的基盤を確立することを目的とした。
研究方法
研究は研究代表者及び研究分担者15名の計15名によって研究を進めた。研究は当初の計画に沿い行われ順調に進展した。研究は、病原体特異的検査法の確立、病原体の網羅的検査法の確立、病理学的検査法の確立、検査ネットワークの整備、各病院への検査診断支援法の確立を目指して行われた。
結果と考察
特定病原体等に対する、遺伝子今朝法、抗原抗体検出法、毒素迅速検出法の確立と標準化を行った。新種アレナウイルスに対応可能なウイルス抗原検出法の開発を行った。ボツリヌス菌・毒素の検査検出法の改良を行った。リケッチア・コクシエラ・クラミジアの迅速検出法の開発としてQ熱コクシエラのゲノム解析による基盤情報の整備を行った。バイオテロの可能性のある真菌感染症としてコクシジオイデスの迅速診断法としてLAMP法による高感度検出系の構築を行った。類鼻疽菌検出用LAMP法の確立を行い既存の方法との感度の比較を行った。また病原体の網羅的検出法および未知の病原体検出法の確立のため、網羅的PCR法、特異抗体の作製、それらを用いた検出系について、検出系の検証と精度管理法の確立を行った。次世代シーケンサによる超高速病原体ゲノム解読システムと全ゲノム配列データベースのシステムの評価を行った。病理学的手法や電子顕微鏡を用いた病原体検出法の確立のため、バイオテロに使用される可能性のある病原体に対する免疫組織学的方法の改良を行った。電顕を用いた迅速診断のためレファレンス用写真リストを作成した。さらに、技術の評価のため外部評価に参加し良好な結果を得た。バイオテロに使用される病原体の可能性のある真菌の検査の標準化を行うとともに、検査マニュアルの作成を行った。バイオテロ対応ホームページを発展させ、診断アルゴリズムを高度化した。生物テロに関連する疾患について、インターネット上で手軽に情報を得ることを目的としたホームページの情報を改訂した。新たに特定病原体等に指定された重症熱性血小板減少症候群を含む2疾患を追加した。これにより一種から三種の病原体すべてと四種病原体の大部分を網羅した。本年度得られた成果により、①バイオテロへの迅速な検出が可能となり、感染防止策等の迅速な対応策の策定が可能となる。②国民のバイオテロに対する不安が軽減され、バイオテロ事件および模倣事件に対する抑止効果も期待できる。③バイオテロ対策の必要性について、各医療機関の認識を高めることができる。④国内の状況を考慮し、ホームページ等を通じた情報提供が可能となり、バイオテロ対策をより充実させることができる。
結論
バイオテロの迅速な検出を可能とし、さらに、感染防止策等の迅速な対応策の策定を可能とすることを目的として、以下の5項目に関して研究を行った。①特定病原体等に対する、遺伝子検出法、抗原抗体検出法、毒素迅速検出法等の迅速診断法の確立と標準化を行った。②網羅的検出法として、網羅的ウイルス検出法、網羅的細菌検出法、超高速ゲノム解読法の確立を行い、さらに未知の病原体等検出法、病原体のデータベース等の開発と確立を行った。③病理学的、また電子顕微鏡を用いた病原体検出法、免疫組織化学的検出法の確立を行った。④地方衛生研究所への真菌検査の技術移転を行い、併せて技術移転時における問題点も明らかにした。⑤診断検査支援のため、 ホームページを整備し、バイオテロ対応関係機関との情報交換を密にするシステムの確立を行った。以上の研究より、バイオテロの迅速な検出が可能となり、防止策等の対応を迅速に取るための基盤整備が進展した。国民のバイオテロに対する不安の軽減が可能となり、模造事件やバイオテロ発生に対する抑止効果も期待される。また、バイオテロ対策について各医療機関の認識を高めることができる。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
-