被災地のアルコール関連問題・嗜癖行動に関する研究

文献情報

文献番号
201317064A
報告書区分
総括
研究課題名
被災地のアルコール関連問題・嗜癖行動に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松下 幸生(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
  • 尾崎米厚(鳥取大学医学部環境予防医学分野)
  • 村上 優(独立行政法人国立病院機構琉球病院)
  • 石川 達(医療法人東北会東北会病院)
  • 杠 岳文(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター)
  • 長 徹二(三重県立こころの医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
被災地の飲酒行動、嗜癖行動やアルコール関連問題について実態を調査し、支援活動を実施して災害時のアルコール関連問題、嗜癖問題の効果的な予防方法や対策を検討する。
研究方法
1 住民調査
1)調査票
面接調査ではDSM4のアルコール依存症、乱用の基準項目について調査した。
自記式調査票ではAUDIT質問票、CAGE質問票、ニコチン依存質問票(FTND、TDS)、ギャンブル依存質問票(SOGS)、ベンゾジアゼピン系薬物依存質問票(BDEPQ)を調査した。
2)標本抽出
層化2段無作為抽出法により、全国100地点から20歳以上の男女2000名を抽出した。
3)調査方法
調査は平成24年11月7日から同年12月3日までの間に実施した。
2 全国調査結果と被災地調査結果の比較
平成24年度に実施した岩手、宮城県住民調査結果と全国調査結果とを比較した。
3 福島市における震災の生活影響、アルコール等嗜癖行動に関する実態調査
福島市における健康診査の結果を震災前2年、震災後2年で比較検討した。
4 被災地における介入研究
釜石市では平成14年と平成25年に行われた健康調査の中の飲酒調査の分析を行った。宮古市では特定検診のデータから飲酒頻度および量からスクリーニングおよび介入を行った。東北会病院の分担研究者は一次予防、二次予防、三次予防活動を実施し、さらに同院を新規に受診した者におけるアルコール依存症の割合を震災前後で比較、集計した。
結果と考察
1 アルコール関連問題・嗜癖行動に関する全国住民調査
有効回答は1082名(54.1%)から得られた。
1)飲酒頻度・量の性別、年齢別比較
毎日飲酒する者の割合は男性の場合は50、60歳代で最多。女性は40歳代で最多。一方、20歳代では女性の飲酒頻度が高い。1回の飲酒量は男性が女性より多いが、20歳代のみ平均飲酒量はほぼ同じであり、多量飲酒者の割合は女性で高かった。
3)DSM4によるアルコール依存症、アルコール乱用の有病率調査
最近1年間のアルコール依存症の有病率は、男性の9.9%、女性の1.5%であった。中年世代の有病率が高かった。
4)喫煙者の割合
喫煙者は男性の33.9%、女性の8.5%であった。
5)ギャンブル依存
SOGS5点以上の割合は男性は女性より高い。男性は中年世代で高率だが女性は若年世代で最多であった。
6)睡眠薬の使用とベンゾジアゼピン系薬物依存
睡眠薬をほぼ毎日使用している割合は女性に多い。BDEPQ 23点以上は男性の0.4%、女性の2.0%と女性で高い。
2 岩手・宮城県住民調査と全国住民調査の比較
岩手・宮城県の調査結果を沿岸部と内陸部に分けて全国調査結果と比較した。
1)AUDIT点数の比較
AUDITの点数を比較すると、男性は16点以上の割合が沿岸部で最も頻度が高い。女性は12点以上の割合が沿岸部で最も高い。
2)ニコチン依存の比較
FTNDでみたニコチン依存の割合は男女とも沿岸部で最も高く、次いで内陸部、全国調査の順である。
4)ギャンブル依存の比較
SOGS高得点の割合は男性では沿岸部で最も頻度が高い。
5)睡眠薬・安定剤依存の比較
BDEPQ23点以上の割合は女性では沿岸部で最も高率であった。
3 福島市における震災の生活影響、アルコール等嗜癖行動に関する実態調査
震災前後で健診結果を比較すると、震災後にBody Mass Index (BMI)、LDLコレステロール値が上昇、HDL値が減少。また、血圧降下剤の服用者、睡眠が不十分と回答した者の割合が震災後に増加していた。血圧値は未治療では震災後に血圧が上昇、血清脂質も未治療で、震災後に上昇していた。
4 被災地における介入研究
平成14年と平成25年に釜石地区で行われた飲酒調査を比較したところ、多量飲酒者の割合は、それぞれ2.77%、2.94%と有意差を認めなかった。宮古市で研修を受講した保健師を対象にAAPPQを実施したところ、知識とスキル、仕事満足と意欲の2つの因子が、受講後に有意に得点が増加していた。東北会病院を受診する新規外来患者の平成20年~22年の3年間での、アルコール依存症の割合は平均32.1%であったが、震災後の平成23年度は36.6%、平成24年度は35.0%、平成25年度は38.3%であった。また、患者実数も増加傾向であった。
結論
1)全国調査結果では20歳代は男性より女性の飲酒頻度、飲酒量が多い。
2)DSM4による男性のアルコール依存症有病率は中年世代で高い。
3)沿岸部で飲酒問題が増加している傾向は明らかではないが、アルコール問題の2極化が生じている可能性が示唆された。
4)沿岸部では喫煙、ニコチン依存、ギャンブル依存、睡眠薬依存といった問題が多い。
5)福島県ではメタボリック症候群に関連した要因が悪化していた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317064Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,000,000円
(2)補助金確定額
19,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,692,361円
人件費・謝金 854,376円
旅費 4,601,843円
その他 11,851,541円
間接経費 0円
合計 19,000,121円

備考

備考
自己負担金として処理

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-