文献情報
文献番号
201303005A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア、オセアニアにおける生活習慣病対策推進のための学際的研究
課題番号
H24-地球規模-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
青山 温子(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 磯 博康(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 八谷 寛(藤田保健衛生大学 医学部)
- 本庄かおり(大阪大学 グローバルコラボレーションセンター)
- 三田 貴(大阪大学 未来戦略機構)
- 崔 仁哲(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 江 啓発 (コウ ケイハツ)(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 李 媛英 (リ エンエイ)(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,885,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究全体の目的は、東アジア、オセアニア島嶼地域における生活習慣病 (Non-communicable diseases: NCD) の実態と、生活習慣・社会的因子等の危険因子を、調査対象地 (中国、パラオ) での疫学調査及び社会学調査、及び既存データに基づき解明し、各国の社会文化的背景に適合した有効な生活習慣病対策を提言することである。本研究は3年間の計画であり、平成25年度 (第2年度) は、パラオ疫学調査、及び中国社会学調査を実施した。
研究方法
パラオでは、第1年度に検討した調査方針に基づき、WHOのNCD危険因子調査 [WHO STEPwise approach to surveillance (STEPS)] に準じた方法で、18~24歳を対象として、コロール地域にて疫学調査を実施した。パラオにてデータ入力後、保健省の研究調査責任者を日本に招聘し、本調査結果、及び本調査直前に完了した保健省とWHOによるSTEPS (25~64歳対象) の調査結果を、協力して分析した。
中国では、北京大学の研究協力者とともに、北京市房山区にて、年齢層別のフォーカスグループインタビューと、キーインフォーマントインタビューを実施した。
また、東アジア、東南アジア、オセアニア諸国における既存データを、WHOデータベースから収集し、階層的クラスター分析して、NCD危険因子をパターン化した。
中国では、北京大学の研究協力者とともに、北京市房山区にて、年齢層別のフォーカスグループインタビューと、キーインフォーマントインタビューを実施した。
また、東アジア、東南アジア、オセアニア諸国における既存データを、WHOデータベースから収集し、階層的クラスター分析して、NCD危険因子をパターン化した。
結果と考察
パラオでの疫学調査に参加した356人のうち、肥満または過体重は48.9 %、高血圧症は13.5 %、糖尿病域の血糖値は3.5 %、中性脂肪高値は7.6 %、高コレステロール血症は20.9 %であった。また、タバコ使用者は70.2 %と高く、野菜果物を殆ど摂取しない者は24.1 %、身体活動が乏しい者は19.9 %であった。STEPSの対象者2,171人の平均BMIは、男性29.4kg/m2、女性30.0 kg/m2と男女とも極めて高く、BMI 30 kg/m2以上の肥満者は43.3 %にのぼった。高血圧症は52.3 %、高血糖は20.4 %、高コレステロール血症は22.8 %と、いずれも予想を超えて高かった。
中国での社会学調査の結果、房山区では漬物の摂取習慣があり塩分摂取が多く、野菜の摂取も多いこと、食事摂取量は増加しており、肉類の摂取も特に若年層で増加していること、体重は増加傾向にあること、特に、60歳以上で健康意識が高く運動習慣のある人も多いことなどがわかった。
東アジア、東南アジア、オセアニア諸国の既存データを分析した結果、高血圧が主体で肥満、高血糖、高コレステロール血症の少ない「低所得アジア型」、高コレステロール血症を特徴とし、肥満、高血圧、高血糖は軽度である「高所得アジア型」、著しい肥満、高血圧、高血糖が認められ、高コレステロール血症の少ない「オセアニア島嶼型」の、3パターンに分類できた。かつて日本は、高血圧主体の「低所得アジア型」だったが、社会経済状況向上と体系的な高血圧・脳卒中対策によって、高コレステロール血症を特徴とする「高所得アジア型」に変化した。他の国でも、経済社会発展と生活習慣変化によりパターンが変化する可能性がある。
中国での社会学調査の結果、房山区では漬物の摂取習慣があり塩分摂取が多く、野菜の摂取も多いこと、食事摂取量は増加しており、肉類の摂取も特に若年層で増加していること、体重は増加傾向にあること、特に、60歳以上で健康意識が高く運動習慣のある人も多いことなどがわかった。
東アジア、東南アジア、オセアニア諸国の既存データを分析した結果、高血圧が主体で肥満、高血糖、高コレステロール血症の少ない「低所得アジア型」、高コレステロール血症を特徴とし、肥満、高血圧、高血糖は軽度である「高所得アジア型」、著しい肥満、高血圧、高血糖が認められ、高コレステロール血症の少ない「オセアニア島嶼型」の、3パターンに分類できた。かつて日本は、高血圧主体の「低所得アジア型」だったが、社会経済状況向上と体系的な高血圧・脳卒中対策によって、高コレステロール血症を特徴とする「高所得アジア型」に変化した。他の国でも、経済社会発展と生活習慣変化によりパターンが変化する可能性がある。
結論
パラオでの本研究による疫学調査 (18~24歳) と STEPS (25~64歳) の結果より、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症の有病率が、若年者を含め、予想を超えて高いことが明らかになった。パラオにおいては、日本に比べて肥満者が多く、肥満の程度も著しい。また、噛みタバコの使用頻度が高いこと、野菜・果物の摂取量が少ないこと、運動習慣のない人が少なくないことなどについても、数値的根拠が示された。このように、本研究により、パラオにおける今後のNCD対策を進めるための科学的根拠が示された。
今後、本研究による調査とSTEPSの結果を統合して統計学的分析を進め、生活習慣病危険因子の実態を明らかにしていく。また、社会学調査結果の質的分析を進めて、疫学調査の分析結果と統合して、社会的文化的に適正で有効な生活習慣病対策を、パラオの研究協力者とともに策定する。
中国においては、第3年度に、北京大学と協力して疫学調査を実施する。また、社会学調査結果の質的分析を進めて、疫学調査の分析結果と統合して、有効な生活習慣病対策を立案する。あわせて、パラオの分析結果と比較検討する。
今後、本研究による調査とSTEPSの結果を統合して統計学的分析を進め、生活習慣病危険因子の実態を明らかにしていく。また、社会学調査結果の質的分析を進めて、疫学調査の分析結果と統合して、社会的文化的に適正で有効な生活習慣病対策を、パラオの研究協力者とともに策定する。
中国においては、第3年度に、北京大学と協力して疫学調査を実施する。また、社会学調査結果の質的分析を進めて、疫学調査の分析結果と統合して、有効な生活習慣病対策を立案する。あわせて、パラオの分析結果と比較検討する。
公開日・更新日
公開日
2015-03-06
更新日
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