ベルギーの産業保健制度における企業外産業保健サービス機関の分析

文献情報

文献番号
201205028A
報告書区分
総括
研究課題名
ベルギーの産業保健制度における企業外産業保健サービス機関の分析
課題番号
H24-特別・指定-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 孝司(獨協医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 春山 康夫(獨協医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
企業外産業保健サービス機関が多職種の専門家による各種産業保健サービスをほぼ全企業に提供しているベルギーの産業保健制度はわが国の産業保健制度の改善に参考になると思われるが、そのためには法制度の内容、運用実態や企業外産業保健サービス機関の事業活動に関する情報が必要とされる。しかし、これまで、わが国ではそのような点に注目して検討した調査・研究はない。本研究はベルギーの企業外産業保健サービス機関に関する法制度・その運用及び企業外産業保健サービス機関の事業について明らかにすることを目的として行われた。
研究方法
 平成24年8月13日から8月26日まで研究代表者がベルギーに出張して調査を実施した。ベルギーの企業外産業保健サービス機関に関する法令の収集は ルーヴェン・カトリック大学医学部のLode Godderis教授の協力を得て収集した。企業外産業保健サービス機関の事業内容の調査に関しては、ベルギーで最大の企業外産業保健サービス機関ideweで行っている事業について調べた。調査内容は、部門構成、各部門の事業内容、産業保健専門職の職種と各職種の職員数、顧客の企業数と対象労働者数、サービス料金などであった。本研究では個人データは取り扱わないため、倫理面の問題は生じないことから、倫理審査委員会での承認は求めなかった。
結果と考察
次の8つの法令がベルギーの産業保健制度、特に企業外産業保健サービス機関に関連した法令であった。
「就業中の労働者の福利に関する法律」
「労働における労働者の福利についての指針に関する王室法令」
「労働における予防と保護のための内部サービスに関する王室法令」
「労働における予防と保護のための外部サービスに関する王室法令」
「職場における技術検査のための外部サービス認可に関する王室法令」
「労働における予防と保護のための委員会の地位と役割に関する王室法令」
「労働者の健康監視に関する王室法令」
「労働における暴力、いやがらせ、セクシュアルハラスメントを含む労働を原因とする心理社会的負担防止に関する王室法令」
ベルギーには13の企業外産業保健サービス機関が存在していた。ideweはベルギーで最大の企業外産業保健サービス機関であり、約18%のマーケットシェアを有していた。ideweには経営者、労働組合代表、大学教授などからなる総会、理事会、企業の代表と労働者の代表から構成される助言委員会が設置されていた。ideweには管理部門と企業に出向いてサービスを提供する部門として医学管理部門(340人)とリスク管理部門(142人)の2つがあった。
 ideweは約36,000の企業と契約しており、産業保健サービスを提供している従業員数は約72万人であった。契約企業の従業員規模別では、50人未満の小規模企業が94%を占めており、20人未満の企業だけで86%を占めていた。
 医学管理部門の主な業務は各種の健康診断、職場訪問、労働安全衛生委員会への出席であった。リスク管理部門には、労働衛生部、労働安全部、産業医学部、人間工学部、社会心理部の5つの部があった。
 法令で予防アドバイザーの業務に対して企業が支払うべき最低金額が示されていた。idewe全体の収入は、約70%がこうした法定金額に基づく収入、約10%が予防医学的検査による収入、約20%が安全、人間工学、メンタルヘルスサービスなどによる収入からなっていた。
本研究はベルギーの企業外産業保健サービス機関の運営方法・業務内容の実態についてわが国に紹介した初めての研究である。わが国の産業保健制度と比較すると、特に下記の4点がベルギーの企業外産業保健サービス機関の特徴であることが明らかになった。(1)設立から運営方法に至るまで法令により規制されている、(2)医学管理部門とリスク管理部門から構成され、多職種の専門家を置く、(3)顧客の9割以上が従業員数50人未満の小規模企業である、(4)サービスはリスクの大きさによって内容及び実施頻度が異なる。
 多職種専門家を有してほぼすべての企業に対してリスクの程度に応じた産業保健サービスを提供しているベルギーの企業外産業保健サービス機関は、8つの法令に準拠して運営されていた。小規模企業への産業保健サービス向上を課題とするわが国の産業保健制度を改善する上で、企業外産業保健サービス機関を主体としたベルギーの産業保健制度は参考になると思われる。
結論
ベルギーの企業外産業保健サービス機関に関する法令は8個存在し、企業外労働衛生機関はこれらの法令に基づいて設置・運営されていた。企業外産業保健サービス機関は、医学管理部門とリスク管理部門に多職種の専門家を有し、リスクの程度に応じた産業保健サービスを小規模企業を含むほぼすべての企業に提供していた。

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201205028C

収支報告書

文献番号
201205028Z