歯科再生医療拠点を活用した次世代型歯周組織再生療法の開発

文献情報

文献番号
201106001A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科再生医療拠点を活用した次世代型歯周組織再生療法の開発
課題番号
H21-再生・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
村上 伸也(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 澤 芳樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 李 千萬(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 北村正博(大阪大学 大学院歯学研究科)
  • 山田 聡(大阪大学 歯学部附属病院 )
  • 竹立匡秀(大阪大学 大学院歯学研究科)
  • 橋川智子(医療法人松徳会 橋川デンタルク)
  • 大門貴志(兵庫医科大学 医学部数学教室 )
  • 齋藤正寛(東京理科大学 基礎工学部 )
  • 松下健二(国立長寿医療センター 口腔疾患研究部 )
  • 阿久津英憲(国立成育医療センター研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脂肪組織由来未分化間葉系幹細胞(ADSC)と足場材料を組み合わせた新規歯周組織再生療法を樹立するため、本年度は、ADSC含有移植材の調整法を決定した後、ボランティアから採取した脂肪組織よりADSC移植材を作製する一連の過程(コールドラン)の実施し、最終的に重度歯周炎患者を対象とした臨床研究を実施することを目標とした。
研究方法
人への臨床応用が認められているフィブリン製剤であるボルヒールとADSCとを組み合わせたADSC含有移植材を作製した。そして、ビーグル犬歯周組織欠損モデルを用いて、ADSC含有移植材の歯周組織再生効果と安全性を臨床的、X線的および組織学的に評価し、ADSC含有移植材の調整法を決定した。また、ボランティアの腹部より皮下脂肪組織を採取し、セルプロセッシング・アイソレーター(CPI)内でADSCを単離し、事前に採取した自己血清を用いて継代培養し、凍結保存、解凍、再培養の過程を経て、ボルヒールと混和しADSC含有移植材を作製した。そして、この過程で凍結前後の培養細胞を回収し、形態学的評価とともに、細胞数、生存率および間葉系幹細胞の細胞表面マーカー(CD105+陽性率、CD73+陽性率、CD166+陽性率、CD44+陽性率、CD45- 陽性率)の検査を実施した。さらに、CPIの稼働性能適格性確認と洗浄・殺菌操作に加え、ADSC含有移植材作製の工程管理システムの構築を行った。
結果と考察
ビーグル犬歯周組織欠損モデルにおいて、6倍希釈したボルヒールを足場材としたADSC含有移植材を投与したところ、異常な治癒所見は観察されず、対照群に比べて有意に多い骨新生が認められた。また、ボランティアの脂肪組織を採取し、CPI内にてADSC含有移植材を作製するコールドランを実施した結果、脂肪組織から間葉系幹細胞の細胞表面マーカーを有するADSCを単離し、ADSC含有移植材を安定的に提供できることが確認された。さらに、CPIの稼働性能適格性確認と洗浄・殺菌操作が終了し、採取された脂肪組織からADSCを単離し、ADSC含有移植材を作製するまでの全工程について、GMP(Good Manufacturing Practice)基準に準拠した検体、試薬、消耗品の工程管理システムが完成した。
結論
重度歯周炎患者を対象にADSCを用いた新規歯周組織再生療法に関する臨床研究を実施する体制の整備が完了した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201106001B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科再生医療拠点を活用した次世代型歯周組織再生療法の開発
課題番号
H21-再生・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
村上 伸也(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 澤 芳樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 李 千萬(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 北村正博(大阪大学 大学院歯学研究科)
  • 山田 聡(大阪大学 歯学部附属病院)
  • 竹立匡秀(大阪大学 大学院歯学研究科)
  • 橋川智子(医療法人松徳会 橋川デンタルク)
  • 大門貴志(兵庫医科大学 医学部数学教室)
  • 齋藤正寛(東京理科大学 基礎工学部 )
  • 松下健二(国立長寿医療センター 口腔疾患研究部 )
  • 阿久津英憲(国立成育医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯周病は、成人が歯を喪失する第一の原因である。しかしながら、歯周病により失われた歯周組織は通常の治療では再生しない。そこで、本研究では、重度歯周炎患者に対応できる脂肪組織由来未分化間葉系幹細胞(ADSC)を用いた新規歯周組織再生療法の樹立を目的とした。
研究方法
ヒトADSCの歯周組織再生能と長期培養における安全性を確認するため、ヒトADSCの硬組織形成細胞への分化能と継代培養時の増殖能および染色体異常を経時的に解析した。また、ビーグル犬歯周組織欠損モデルを用い、ADSCと各種足場材を組み合わせたADSCと足場材の複合体(ADSC含有移植材)を歯周組織欠損部への投与し、その歯周組織再生効果と安全性を臨床的、X線的および組織学的に評価することにより、ADSCと併用する足場材の選定とADSC含有移植材の調整法の検討を行った。そして、実際の臨床研究を想定し、ボランティアの腹部より皮下脂肪組織を採取し、セルプロセッシング・アイソレーター(CPI)内でADSCを単離し、実際にADSC含有移植材を作製するコールドランを実施した。
結果と考察
ヒトADSCを硬組織形成細胞へと分化誘導した結果、ADSCは骨芽細胞や歯根膜細胞などの硬組織形成細胞への分化能を有することが明らかとなった。また、ヒトADSCは継代14代目まで増殖可能で染色体異常も認められなかった。そして、ビーグル犬を用いたADSCの移植実験においても腫瘍化等の異常所見は観察されないことから、現時点でヒトADSCの移植に関する安全性に問題点は確認していない。さらに、ビーグル犬歯周組織欠損モデルにおいて、フィブリン製剤であるボルヒールを足場材としたADSC含有移植材を投与したところ、対照群に比べて有意に多い骨新生が認めら、ADSCの歯周組織再生能が確認された。また、コールドランを実施した結果、GMP(Good Manufacturing Practice)基準に準拠した工程管理システム下でADSC含有移植材を安定的に提供できることが確認された。
結論
厚生労働大臣から「ヒト幹細胞臨床研究」としての実施許可を受け、重度歯周炎患者を対象にADSCを用いた新規歯周組織再生療法に関する臨床研究を実施する体制の整備が完了した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201106001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脂肪組織由来未分化間葉系幹細胞(ADSC)が歯周組織再生を誘導するポテンシャルを有することに加え、ヒトADSCの長期培養工程における安全性を確認した。そして、フィブリン製剤であるボルヒールを足場材としたADSC含有移植材が歯周組織再生を効果的に誘導することを、ビーグル犬重度歯周病モデルにおいて確認した。以上の結果から、重度歯周組織欠損部にADSC含有移植材を投与することにより、安全かつ効果的に歯周組織再生が誘導できる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
ADSC含有移植材が歯周組織再生を効果的に誘導することを示した本研究の成果は、歯周炎患者に対するADSCを用いた「細胞治療」の可能性を提示したものであり、歯周組織破壊が広範囲に及ぶ重度歯周炎患者にも対応できる歯周組織再生療法の樹立の可能性を示唆するものである。そして、一部方法の改良を行い、平成26年度より厚生労働科学研究委託費(再生医療実用化研究事業)「歯科再生医療拠点を活用した歯周組織再生療法の確立」として臨床研究を継続している。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
研究代表者(村上伸也)は、平成22年度に次世代医療機器評価指標作成事業の再生医療審査ワーキンググループ委員として加わり、本研究の経験・成果をもとに、歯周組織治療用細胞シートに関する評価指標(案)作成に携わった。同ワーキンググループの成果は、平成23年12月7日薬食機発1207第1号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「次世代医療機器評価指標の公表について」(歯周組織治療用細胞シートに関する評価指標)に反映されている。
その他のインパクト
【新聞報道】2件
概要:読売新聞(平成24年5月3日、“歯茎おなかの脂肪で再生、幹細胞採取し歯周治療”。平成25年1月13日、医療の未来図 現場からの報告、幹細胞使い治療実績着々。)産経新聞(平成28年4月5日、医療「自分の幹細胞が歯茎や骨に」)
【テレビ報道】2件
平成28年3月17日 NHK総合・大阪「ニュースほっと関西」(再生医療最前線(1)“幹細胞”生かす)
平成28年5月2日 朝日放送「おはよう朝日です」(歯グキや骨が再生!?歯周病の最新治療)
【公開フォーラム】1件
概要:大阪大学歯学部60周年記念事業 第9回市民フォーラム(平成23年10月15日、「削る・詰める」から「取り戻す」へ 再生歯科医療、「橋渡し研究」って何?ーみんなで考えましょう。再生歯科医療の未来ー、村上伸也)

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
70件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
1件
各国(アメリカ,ヨーロッパ)移行済み
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

特許の名称
歯周硬組織再生用組成物及び歯周硬組織を再生する方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5191386
発明者名: 村上伸也
権利者名: 国立大学法人大阪大学
出願年月日: 20070920
取得年月日: 20130208
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Makino H, Toyoda M, Matsumoto K,et al.
Mesenchymal to embryonic incomplete transition of human cells by chimeric OCT4/3 (POU5F1) with physiological co-activator EWS.
Exp Cell Res. , 315 (16) , 2727-2740  (2009)
原著論文2
Yamada M, Hamatani T, Akutsu H, et al.
Involvement of a novel preimplantation-specific gene encoding the high mobility group box protein Hmgpi in early embryonic development.
Hum Mol Genet. , 19 (3) , 480-493  (2009)
原著論文3
Murakami S
Periodontal Tissue Regeneration by signalling molecule(s)- What role dose basic fibroblast growth factor (FGF-2) have in periodontal therapy?
Periodontology 2000 , 56 , 188-208  (2010)
原著論文4
Daimon, T, Zohar, S, O'Quigley, J.
Posterior maximization and averaging for Bayesian working model choice in the continual reassessment method.
Statistics in Medicine , 30 (13) , 1563-1573  (2010)
原著論文5
Inamura M, Kawabata K, Takayama K, et al.
Efficient Generation of Hepatoblasts From Human ES Cells and iPS Cells by Transient Overexpression of Homeobox Gene HEX
Mol Ther , 19 , 400-407  (2011)
原著論文6
Iohara K, Imabayashi K, Ishizaka R, et al.
Complete pulp regeneration after pulpectomy by transplantation of CD105+ stem cells with SDF-1.
Tissue Eng Part A , 17 , 1911-1920  (2011)
原著論文7
Sugiyama M, Iohara K, Wakita H, et al.
Dental Pulp Derived CD31-/CD146- Side Population Stem/Progenitor Cells Enhance Recovery of Focal Cerebral Ischemia in Rats.
Tissue Eng Part A , 17 , 1303-1311  (2011)
原著論文8
Toyoda M, Yamazaki-Inoue M, et al.
Lectin microarray analysis of pluripotent and multipotent stem cells.
Genes Cells. , 16 , 1-11  (2011)
原著論文9
Takedachi M, Sawada K, Yamamoto S, et al.
Periodontal tissue regeneration by transplantation of adipose tissue-derived stem cells
Journal of Oral Biosciences , 55 , 137-142  (2013)
原著論文10
Ozasa M, Sawada K, Iwayama T, et al.
Periodontal tissue regeneration by transplantation of adipose tissue-derived multi-lineage progenitor cells
Inflammation and Regeneration , 34 , 109-116  (2014)
原著論文11
Sawada K, Takedachi M, Yamamoto S, et al
Trophic factors from adipose tissue-derived multi-lineage progenitor cells promote cytodifferentiation of periodontal ligament cells
Biochem. Biophys. Res. Commun , 454 (1) , 299-305  (2015)
10.1016/j.bbrc.2015.06.147

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-05

収支報告書

文献番号
201106001Z