文献情報
文献番号
200935012A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療の実態把握と睡眠医療の適正化に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神生理部)
研究分担者(所属機関)
- 山田尚登(滋賀医科大学精神医学講座)
- 清水徹男(秋田大学医学部精神科学講座)
- 兼板佳孝(日本大学医学部公衆衛生学教室)
- 内山真(日本大学医学部精神医学講座)
- 井上雄一(神経研究所附属睡眠学センター研究部)
- 内村直尚(久留米大学医学部精神医学講座)
- 亀井雄一(国立国際医療センター国府台病院精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では精神疾患に合併する睡眠障害の実態と治療内容の妥当性を検証し、今後改善すべき課題を抽出することを目的としている。睡眠障害の適切な診断と対処が精神医療に資する効果とその機序を解明し、得られた成果をもとに精神科診療における実効性の高い睡眠医療ガイドラインと応用指針を作成することをめざした。
研究方法
診療報酬データの経年調査、鳥取県大山町でのコホート調査、層化3段無作為抽出法による一般成人調査、厚生労働省保健福祉動向調査等の複数の疫学調査データを用いて、国内における気分障害と睡眠障害の併存率、受療動向、対処行動、長期転帰の実態と問題点を検証した。統合失調症、気分障害、児童精神疾患、パニック障害等の精神疾患に併存する睡眠障害の有病率、臨床特徴、病態生理、治療のあり方に関する多施設共同調査、病態生理研究、治療介入研究を行った。
結果と考察
地域在住の一般成人を対象にした調査から、極端な睡眠習慣がうつ状態の発現と関連すること、不眠の存在がうつ病罹患リスクを増大させること、不眠症者の12.7%にうつ病が併存しその頻度は年齢とともに増大すること、不眠症状に対して不適切な対処行動が数多く選択されていることが明らかになった。日本での向精神薬処方率は年々増加しており、睡眠薬処方の70%弱は2ヶ月以内の短期処方である一方、不眠群では抗うつ薬や抗精神病薬の使用量と処方期間が有意に増大し、特に長期の睡眠薬ユーザーでは精神疾患の続発と重症化の危険性が高いことが示された。予防的観点からも啓発を通じた睡眠衛生指導の重要性が示唆された。大うつ病に伴う不眠症状はきわめて治療抵抗性で寛解期においても高率に残遺し、発症初期の残遺不眠がその後のうつ病の再発を予測する臨床指標となることが示された。統合失調症および気分障害患者の20~25%に睡眠時無呼吸症候群が合併し精神症状を増悪させており、肥満、加齢、BZP系睡眠薬使用が危険因子として抽出された。広汎性発達障害等による児童精神科受診児の70%以上に不眠、睡眠時随伴症、就床抵抗、過眠等のさまざまな睡眠問題が認められることが明らかになった。これら併存する睡眠障害の正確な診断と治療介入が精神症状の改善にも寄与することが明らかになった。上記の課題で得られた成果と関連領域の研究論文のレビューを通じて、“精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療ガイドラインと応用指針”をまとめた。
結論
精神医療において高頻度にみられる睡眠障害を正しく診断し早期に適切な治療介入を行うことの重要性について明らかにし、診断・治療ガイドラインと応用指針としてまとめた。
公開日・更新日
公開日
2010-06-15
更新日
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