超音波を用いた非侵襲膝関節軟骨3次元定量診断装置の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200921007A
報告書区分
総括
研究課題名
超音波を用いた非侵襲膝関節軟骨3次元定量診断装置の開発に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 五三男(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 星 和人(東京大学医学部附属病院・ティッシュエンジニアリング部)
  • 土肥 健純(東京大学情報理工学系研究科)
  • 中島 義和(東京大学大学院工学系研究科インテリジェントモデリングラボラトリー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目標は、外来診療の現場で変形性関節症の重傷度を非侵襲的に定量診断を行うことができる関節軟骨用超音波診断装置を開発することである。昨年度開発した臨床用三次元超音波診断装置について関節軟骨診断用下肢保持具ならびにプローブスキャナーの改良を行った。実際に、それらを用いて動物膝関節・ボランティア・変形性関節症患者を対象として超音波関節軟骨画像を取得し、関節軟骨三次元的定量値の精度評価を目的として研究を行った。
研究方法
昨年度本研究課題において作製した関節軟骨診断用下肢保持具ならびにプローブスキャナーについて改良を行った。実際の撮像・測定(円弧状スキャンによる超音波断層画像の収集、収集画像から軟骨部の抽出と3Dデータの構築、関節軟骨厚の測定)の評価として、軟部組織が付着した状態の豚膝関節の超音波撮像し、得られた画像より三次元モデルを作成、軟骨厚を計測した。軟部組織を除去し、関節軟骨を濾出した状態で撮像したCT画像を用いて同様に軟骨三次元モデルを作成、軟骨厚を算出し、超音波画像による定量値の精度評価のため、それらを比較検討した。同様に、ボランティア・変形性関節症患者を対象に膝関節軟骨を撮像し、軟骨厚を計測、臨床用MRIを用いて同様に軟骨三次元モデルを作成、軟骨厚を算出しそれらの比較検討を行った。
結果と考察
昨年度開発作製した関節軟骨診断用下肢保持具ならびにプローブスキャナーに改良を加えたことにより、被検者の快適性・検者の操作性を向上することができた。豚膝関節において超音波による関節軟骨厚値とCTによる測定値との間に有意な相関がみられた。また、ボランティアにおいても超音波による関節軟骨厚値と、臨床用MRIによる測定値との間に有意な相関がみられ、その精度は昨年度より向上がみられた。さらに、変形性膝関節症患者においても超音波撮像による軟骨厚計測値と臨床用MRIを用いた測定値との間には有意な相関がみられた。
結論
三次元的関節軟骨厚は、動物膝関節では超音波画像による値とCT画像による値の間に有意な相関があり、また、ボランティア・変形性関節症患者では超音波画像による値とMRI画像による値の間に有意な相関があり、超音波による関節軟骨厚測定は精度が高く、関節軟骨の形態定量法として臨床的に有用であると考えられた。今後、画像処理アルゴリズムの開発・自動化などを進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200921007B
報告書区分
総合
研究課題名
超音波を用いた非侵襲膝関節軟骨3次元定量診断装置の開発に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 五三男(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 星 和人(東京大学医学部附属病院 ティッシュエンジニアリング部)
  • 土肥 健純(東京大学 情報理工学系研究科)
  • 中島 義和(東京大学大学院工学系研究科インテリジェントモデリングラボラトリー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目標は、外来診療の現場で変形性関節症の重傷度を非侵襲的に定量診断を行うことができる関節軟骨用超音波診断装置を開発することである。
変形性膝関節症において主な病変部位である大腿骨内側顆部の関節軟骨を対象とすることとし、その撮像における最適な機器の開発のために、大腿骨内側顆部関節軟骨形状の検討・超音波プローブに対する関節軟骨の許容位置の評価を行うこととした。その結果を基に機器開発を行い、それらを用いて関節軟骨の定量評価を行い、その精度評価を行い、本法の有用性の検討を目的とした。
研究方法
まず臨床用関節軟骨診断装置の開発に先立ち、大腿骨内側顆部関節軟骨形状の検討・超音波プローブに対する関節軟骨の許容位置の評価を行った。その結果を基に、臨床測定装置の開発を行った。開発・最適化した機器(超音波プローブスキャナーの作成、円弧状スキャンによる超音波断層画像の収集、3Dデータの構築)を用い、まず、動物(豚)膝関節軟骨を軟部組織が付着した状態で撮像し、得られた画像より三次元モデルを作成、軟骨厚を計測した。軟部組織を除去し、関節軟骨を濾出した状態で撮像したCT画像を用いて同様に軟骨三次元モデルを作成、軟骨厚を算出し、超音波画像による定量値の精度評価のため、それらを比較検討した。また、臨床測定評価として、ボランティアの膝関節軟骨を撮像し軟骨厚を計測、臨床用MRIを用いて同様に軟骨三次元モデルを作成、軟骨厚を算出した。さらに、変形性膝関節症患者に対して膝関節軟骨の撮像を行い軟骨厚を計測、臨床用MRIを用いた測定値との比較検討した。
結果と考察
汎用超音波診断装置のメカニカル3Dスキャン機能をベースにし,超音波プローブの走査角度を回転型エンコーダから得て,これを超音波診断装置に渡すことにより膝軟骨の断層画像が収集できることが確認できた。複数の膝軟骨断層画像を収集後、各断層画像上の膝軟骨部分のみを抽出後,フレーム補間することにより膝軟骨の3D画像を構築して表示できることが可能であった。三次元的関節軟骨厚は、超音波画像による値とCT画像やMRI画像による値の間に有意な相関があり、超音波による関節軟骨厚測定は精度が高いと考えられた。
結論
変形性関節症の重傷度を非侵襲的に定量診断を行うことができる関節軟骨用超音波診断装置の開発を行った。超音波を用いた関節軟骨三次元評価は、変形性膝関節症患者においても関節軟骨の形態定量法として有用であると考えられた。今後、画像処理アルゴリズムの開発・自動化などを進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
汎用超音波診断装置のメカニカル3Dスキャン機能をベースにし,超音波プローブの走査角度を回転型エンコーダから得て,これを超音波診断装置に渡すことにより膝軟骨の断層画像が収集することが可能であった。これらの超音波画像を三次元的に配列し、関節軟骨領域を抽出後、測定した三次元的関節軟骨厚は、CT画像やMRI画像にを用いた測定値との間に有意な相関があり、超音波による関節軟骨厚測定は精度が非常に高いと考えられた。
臨床的観点からの成果
外来診療の現場で変形性関節症の重傷度を非侵襲的に定量診断を行うことができる関節軟骨用超音波診断装置を開発することを目的として本研究を行った。臨床測定の結果、超音波を用いた関節軟骨三次元評価は、健常者のみならず変形性膝関節症患者において関節軟骨の形態定量法として有用であると考えられた。簡便で頻回に施行可能な非侵襲の関節軟骨の定量的診断法である本法は、早期に個々の患者に対して診断および適切な治療を選択することができ、またその治療効果判定を経時的に行うことができるようになる可能性を有すると考える。
ガイドライン等の開発
変形性関節症には明確な診断基準や治療選択や治療効果についての基準がこれまでに明確なものが存在しない。超音波を用いた本診断法は、1.侵襲を伴わない、2.関節軟骨の菲薄化や欠損を非侵襲に検出できる、3.放射線被曝がなく、4.評価装置自体は既存の超音波装置に新機能を付加するのみであり、安価に設備できるなどの利点を有しており、これらの特徴より、将来的に変形性関節症の診断基準や治療のガイドライン等の作成に寄与する可能性を有するものと考える。
その他行政的観点からの成果
わが国においてX線上の変形性膝関節症は2400万人、痛みを伴う変形性膝関節症は820万人と推定されており、人工関節手術時の1か月あたりの入院費用は、材料費を含めて約250万円であり、手術月だけを見ても2500億円の医療費が費やされていることになる。本定量的関節軟骨診断法によって変形性関節症の初期治療・予防が実現し、罹患率を半減させ、また症状増悪を阻止して手術件数を半減させることが出来れば、年間1兆円以上の医療費削減につながることが十分に期待される。
その他のインパクト
以下、計7件の特許の出願を行った。特願2010-47403,超音波骨癒合診断装置。特願2008-188709,超音波プローブ支持装置。特願2008-188727,超音波プローブ用の膝用音響整合器。特願2008-188639,骨検査システムおよび下腿支持装置。特願2008-294434、超音波診断装置。特願2007-177056 超音波骨癒合診断装置。特願2007-231114 超音波骨癒合診断装置。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-