ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202218008A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究
課題番号
20GC1022
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松崎 尊信(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 精神科)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 米厚(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
  • 原田 豊(鳥取県立精神保健福祉センター)
  • 館農 勝(ときわ病院)
  • 治徳 大介(東京医科歯科大学病院 精神科)
  • 高野 歩(東京医科歯科大学 保健衛生学研究科 精神保健看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,877,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネットの急速な普及と、オンラインゲームを中心としたゲームの隆盛により、自らのゲーム行動をコントロールできず、日常生活に支障をきたす人々の問題が世界中で広がっている。このような状況を踏まえ、世界保健機関は、2019年「ゲーム障害」を精神疾患に収載したICD-11を承認した。ゲーム障害の健康・社会生活への影響は大きく、昼夜逆転、遅刻・欠席、学業の成績低下、家族への暴言・暴力、引きこもり等が多くの患者に見られている。しかし、日本におけるゲーム障害の実態について、まだ不明な点が多く、相談機関や専門的治療を行っている医療機関も限られている。本研究でゲーム障害の対策を提言し、ゲーム障害の相談・治療ニーズに適切に対応できる体制整備に寄与することを目的とする。
研究方法
○ゲーム障害の実態調査
○相談機関向け対応ガイドライン、教育機関向け対応マニュアルの作成
○ゲーム障害の標準的治療法の開発と効果検証
○ゲーム障害に関する研究のreview
を実施する。
結果と考察
1)一般住民のインターネット使用およびゲーム行動に関する全国調査を解析し、わが国の一般住民のネットおよびゲーム使用行動の実態を明らかにし、コロナ禍における行動の変化を明らかにするために、2019年と2020年に実施された調査の結果を分析した。
2)令和3年度に実施された、全国の精神保健福祉センターにおけるゲーム依存に関する相談の状況、それぞれの課題ごとの内容、対応についてアンケート調査結果より得られた、ゲーム依存の3つの課題、①お金の損失、②暴言・暴力、③生活への影響(重複していることも少なくない)についての対応、家族によるゲーム依存への対応の3原則などを記載し、最後に事例を加えた、「ゲーム依存相談対応ガイドライン(第1版)~相談機関におけるゲーム依存への相談と支援~」を提示した。
3)児童精神科通院患者におけるゲーム障害のスクリーニング陽性率について調査した。
4)教師が求める情報を記した「ゲーム依存対応マニュアル」の開発に着手した。
5)ゲームと認知機能および睡眠をテーマに文献探索を行った。
6)精神科・児童精神科に通院しゲーム使用問題を持つ患者におけるゲーム障害の状態の変化が明らかになった。
7)ゲーム障害の定義に該当する12歳以上35歳未満のゲーム障害患者を対象とし、既存の他の依存症に対する治療プログラムを参考として独自に開発した認知行動療法をベースとした全8回の治療プログラムを実施し、効果検証を行った。
実態調査から得られた治験やレビューの結果を参考に、ゲーム障害の対策を提言するとともに、得られた成果物は、今後のゲーム障害の相談・治療ニーズに適切に対応できる体制整備に寄与する。これらの結果を踏まえ、ゲーム障害の診断ガイドラインについて検討し、成果物を今後発出する。また、久里浜医療センターで実施する研修等の資料に活用する。
結論
1)分析結果を踏まえ、学会発表、論文化へとつなげた。
2)全国の精神保健福祉センターに実施したアンケート調査の結果をもとに、現場に即した相談対応マニュアルを作成した。
3) 自記式質問紙を用いたゲーム障害の早期スクリーニングの重要性を明らかにした。
4)「ゲーム依存予防」のための内容を中心に据えて対応マニュアルを構成した。
5)ゲーム障害対策の国際的な現状も踏まえ、本邦で可能な対策案を提言した。
6) 患者・家族調査の追跡調査を実施し、ゲーム使用問題と精神的健康との関連などを明らかにした。
7) CAP-Gの介入研究を実施し、データを解析した。

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218008B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究
課題番号
20GC1022
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松崎 尊信(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 精神科)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 米厚(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
  • 原田 豊(鳥取県立精神保健福祉センター)
  • 館農 勝(ときわ病院)
  • 治徳 大介(東京医科歯科大学病院 精神科)
  • 高野 歩(東京医科歯科大学 保健衛生学研究科 精神保健看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネットの急速な普及と、オンラインゲームを中心としたゲームの隆盛により、自らのゲーム行動をコントロールできず、日常生活に支障をきたす人々の問題が世界中で広がっている。このような状況を踏まえ、世界保健機関は、2019年「ゲーム障害」を精神疾患に収載したICD-11を承認した。ゲーム障害の健康・社会生活への影響は大きく、昼夜逆転、遅刻・欠席、学業の成績低下、家族への暴言・暴力、引きこもり等が多くの患者に見られている。しかし、日本におけるゲーム障害の実態について、まだ不明な点が多く、相談機関や専門的治療を行っている医療機関も限られている。本研究は、ゲーム障害の対策を提言し、ゲーム障害の相談・治療ニーズに適切に対応できる体制整備に寄与することを目的とする。
研究方法
○ゲーム障害の実態調査
○相談機関向け対応ガイドライン、教育機関向け対応マニュアルの作成
○ゲーム障害の標準的治療法の開発と効果検証
○ゲーム障害に関する研究のreview
を実施する。
結果と考察
1)わが国のゲーム使用およびゲーム症の実態およびコロナ禍におけるそれらの変化を把握するために、久里浜医療センター依存症対策全国センターが実施した、ゲーム使用状況等に関する全国調査(10~79歳)およびゲーム使用状況等に関する全国調査(10~29歳)のデータを詳細に分析した。
2)精神保健福祉センターをはじめとする相談機関において、ゲーム障害に関する相談の基本となるマニュアルを作成した。
3)ゲーム障害の実態調査として、国内の児童精神科医療機関における実態調査を行った。
4)「ゲーム依存予防」のための内容を中心に据えて対応マニュアルを作成した。
5)本邦で実現可能なゲーム障害対策の提言をするために、国内外のゲーム障害の予防と対策に関する最新の研究論文のレビューを行った。
6)これまで国内に存在していなかった自記式版・親評定版がセットとなっているゲーム障害スクリーニング尺度を開発した。また、精神科・児童精神科に通院しゲーム使用問題を持つ患者のゲーム障害の程度や割合が明らかになった。
7)ICD-11におけるゲーム障害の定義に該当する12歳以上35歳未満のゲーム障害患者を対象とし、既存の他の依存症に対する治療プログラムを参考として独自に開発した認知行動療法をベースとした全8回の治療プログラムを実施し、その効果検証を行った。
結論
実態調査から得られた治験やレビューの結果を参考に、ゲーム障害の対策を提言するとともに、得られた成果物は、今後のゲーム障害の相談・治療ニーズに適切に対応できる体制整備に寄与する。これらの結果を踏まえ、ゲーム障害の診断ガイドラインを今後発出する。また、久里浜医療センターで実施する研修等の資料に活用する。

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
実態調査から得られた知見やレビューの結果を参考に、ゲーム障害の対策を提言した。研究の成果物は、今後のゲーム障害の相談・治療ニーズに適切に対応できる体制整備に寄与する。久里浜医療センターで実施する研修等の資料に活用し、人材育成に寄与する。
臨床的観点からの成果
1) 自記式質問紙を用いたゲーム障害の早期スクリーニングの重要性を明らかにした。患者・家族調査の追跡調査を実施し、ゲーム使用問題と精神的健康との関連などを明らかにした。ゲーム障害の認知行動療法(CAP-G)の介入研究を実施し、効果を検証した。これらにより、ゲーム障害の診断、予防、治療法の開発に繋がる。
ガイドライン等の開発
全国の精神保健福祉センターに実施したアンケート調査の結果をもとに、現場に即した相談対応マニュアルを作成した。「ゲーム依存予防」を中心に教育現場における対応マニュアルを作成した。ゲーム障害対策における国際的な現状も踏まえ、本邦で実施可能な対策案を提言した。
その他行政的観点からの成果
ゲーム使用状況等に関する全国調査を実施、結果を分析し、ゲーム利用時間、ゲーム障害が疑われる者の割合、併存する問題等について明らかにした。これらは、今後社会で加速するオンライン化によって、今後起こりうる様々な問題について検討する基礎資料となる。
その他のインパクト
ゲーム障害の現状、問題点等について、一般市民、教育・医療関係者向けに講演を行い、普及啓発につとめた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
ガイドライン作成2件
その他成果(普及・啓発活動)
45件
講演33件、シンポジウム開催3件、マスコミ発表9件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mihara S, Osaki Y, Kinjo A, et al.
Validation of the Ten-Item Internet Gaming Disorder Test (IGDT-10) based on the clinical diagnosis of IGD in Japan
Journal of Behavioral Addiction , 11 (4) , 1024-1034  (2022)
https://doi.org/10.1556/2006.2022.00070
原著論文2
Masaru Tateno, Takahiro A. Kato, Tomohiro Shirasaka, et al.
A network analysis of problematic smartphone use in Japanese young adults
PROS ONE  (2022)
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272803
原著論文3
M Tateno, T Matsuzaki, A Takano, et al.
Increasing important roles of child and adolescent psychiatrists in the treatment of gaming disorder: Current status in Japan
Frontiers in Psychiatry  (2022)
https://doi.org/10.3389/fpsyt.2022.995665
原著論文4
S Higuchi, S Mihara, T Kitayuguchi, et al.
Prolonged use of Internet and gaming among treatment seekers arising out of social restrictions related to COVID‐19 pandemic
Psychiatry Clin Neurosci.  (2020)
doi: 10.1111/pcn.13127
原著論文5
H Nakayama, T Matsuzaki, S Mihara, et al.
Relationship between problematic gaming and age at the onset of habitual gaming
PEDIATRICS INTERNATIONAL  (2020)
https://doi.org/10.1111/ped.14290
原著論文6
Y Otsuka, Y Kaneita, O Itani, et al.
The association between Internet usage and sleep problems among Japanese adolescents: three repeated cross-sectional studies
SLEEP  (2021)
https://doi.org/10.1093/sleep/zsab175
原著論文7
S Higuchi, Y Osaki, A Kinjo, et al.
Development and validation of a nine-item short screening test for ICD-11 gaming disorder (GAMES test) and estimation of the prevalence in the general young population
Journal of Behavioral Addiction  (2021)
https://doi.org/10.1556/2006.2021.00041
原著論文8
TA Kato, N Shinfuku, M Tateno
THE IMPACT OF URBANISATION ON MENTAL HEALTH: Edited by Jair Mari Internet society, internet addiction, and pathological social withdrawal: the chicken and egg dilemma for internet addiction and hikikomori
Current Opinion in Psychiatry  (2020)
10.1097/YCO.0000000000000601
原著論文9
R Katsuki, M Tateno, H Kubo, et al.
Autism spectrum conditions in hikikomori: A pilot case–control study
Psychiatry and Clinical Neurosciences  (2020)
https://doi.org/10.1111/pcn.13154
原著論文10
M Tateno, A Takano, T Matsuzaki, et al.
Current status and future perspectives of clinical practice for gaming disorder among adolescents in Japan: A preliminary survey in Sapporo
PCN Reports  (2022)
https://doi.org/10.1002/pcn5.4
原著論文11
M Tateno, TA Kato, T Shirasaka, et al.
A network analysis of problematic smartphone use in Japanese young adults
PROS ONE  (2022)
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272803
原著論文12
M Tateno, TA Kato
Personality traits of female vocational school students in Japan with smartphone addiction with comorbid modern-type depression traits
Psychiatry and Clinical Neurosciences  (2022)
https://doi.org/10.1111/pcn.13475
原著論文13
H Kubo, R Katsuki, K Horie, et al.
Risk factors of hikikomori among office workers during the COVID-19 pandemic: A prospective online survey
Current Psychology  (2022)
原著論文14
M Tateno, K Horie, T Shirasaka, et al.
Clinical Usefulness of a Short Version of the Internet Addiction Test to Screen for Probable Internet Addiction in Adolescents with Autism Spectrum Disorder
Int. J. Environ. Res. Public Health  (2023)
https://doi.org/10.3390/ijerph20054670
原著論文15
T Matsuzaki, K Nishimura, S Higuchi
Screening for forms of problematic Internet usage
Current Opinion in Behavioral Sciences  (2023)
https://doi.org/10.1016/j.cobeha.2023.101260
原著論文16
高野歩, 徳重誠, 大野昴紀, 他
自記式および親評定版ゲーム障害スクリーニング尺度日本語版の作成と言語的妥当性検証
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 57 (2) , 90-108  (2022)
原著論文17
治徳大介
eスポーツと精神医療とのかかわり
臨床精神医学 , 51 (7) , 761-767  (2022)
原著論文18
桑原 祐樹, 尾崎 米厚
医学生のインターネット嗜癖行動は思春期のインターネット使用や生活様式と関連があるか? 横断研究
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 56 (4) , 107-118  (2021)
原著論文19
松﨑尊信, 樋口進
インターネット・ゲーム障害(DSM-5)、ゲーム障害(ICD-11)
精神科治療学 , 35 , 315-320  (2020)
原著論文20
館農勝
ゲーム行動症のリスク要因・併存症
医学のあゆみ  (2022)

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
202218008Z