乳児~成人の好酸球性消化管疾患、良質な医療の確保を目指す診療提供体制構築のための研究

文献情報

文献番号
202211008A
報告書区分
総括
研究課題名
乳児~成人の好酸球性消化管疾患、良質な医療の確保を目指す診療提供体制構築のための研究
課題番号
20FC1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
野村 伊知郎(国立成育医療研究センター 好酸球性消化管疾患研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 佳之(東海大学 医学部 小児科)
  • 石原 俊治(島根大学 医学部)
  • 石村 典久(島根大学 医学部)
  • 八尾 建史(福岡大学筑紫病院 消化器科)
  • 大塚 宜一(順天堂大学 医学部)
  • 工藤 孝広(順天堂大学 小児科)
  • 齊藤 由理(国立成育医療研究センター 栄養管理部)
  • 新井 勝大(国立成育医療研究センター 消化器科)
  • 大矢 幸弘(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター・アレルギーセンター)
  • 松本 健治(国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,925,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2000年ころから急増した、好酸球性消化管疾患は、新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎と好酸球性胃腸炎(EGE)、食道炎 (EoE)に分類される。EGEは、日本に多く、嘔吐、血便、蛋白漏出による栄養障害などが、生涯にわたる。標準治療は、長期ステロイド内服であり、副作用懸念がある。研究班はこれに代わる、“多種食物除去と原因食物同定療法”を実施し、約60%は、長期寛解維持が可能、しかし40%は反応せず、副作用の少ない抗炎症治療開発が必要と分かった。研究班は、食事療法プロトコールを完成した。非IgE依存型反応であるため、特別な食物除去を必要とする。
以上の問題を解決するため、以下の目標を掲げて研究を行う。
1. EGID情報センターWeb公開 EGEの基本情報、食餌療法について、詳細理解できるページ作成。急性嘔吐タイプの患者用、医療機関用アクションプランを作成する。
2. EGIDレジストリープロジェクト新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎について負荷試験結果から見た、新たな疾患概念の構築を行う。
3. EGID診療体制構築 消化管内視鏡検査を適切に行える病院、を都道府県で示し、診断治療を小児-成人にわたり行える診療体制構築、Web公開する。
4. Minds準拠ガイドラインの改訂への準備 新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸症ガイドラインは公開後5年、新規エビデンス収集し改訂するための議論を行う。

研究方法
1. EGID情報センターWeb公開
1-① EGID情報センターWEB公開 
2020年度に完成したホームページを改良しつつ維持を行う。
1-② Rainbowクッキングの作成、運営 
2022年度は、掲載食品を増やす。
1-③ 新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎の嘔吐タイプの嘔吐発作時における、患者家族、医療機関向けアクションプラン作成:保護者、医師の意見から、保護者が観察すべき症状の指示があいまいで具体性に欠けるとの意見を受けて、国際的な小児救急において、hypovolemic shock時に使用されている臨床パラメーターへの変更を行う。
2. EGIDレジストリープロジェクト
新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎のレジストリ作成と維持:引き続き、ファーストコホートの患者数を増加させ、結果について解析を行う。セカンドコホートを完成させ、全国の参加医療機関を募る。
3. EGID診療体制構築:WEBページにて全国公開したものについて維持、改良を行う
4. Minds準拠ガイドラインの改訂:班会議で次回改訂におけるコンセプトについて議論する。
結果と考察
1-① EGID情報センターWEB公開 
WEBページの管理、維持を行い、多くの閲覧を得ている。
1-② Rainbowクッキングの作成、運営 
栄養士および患者保護者が提出したレシピは60種類に上った。また、論文が公開されたことから、全国の医療機関に方法を伝達している。
1-③ 新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎の嘔吐タイプの嘔吐発作時における、患者家族、医療機関向けアクションプラン作成:これにより、多くの乳児が生命の危機から救われると思われる。
2. EGIDレジストリープロジェクト
新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎のレジストリ作成と維持:現時点までに130名が登録された。acute FPIESの66名について解析結果が得られ、論文化中である。
3. EGID診療体制構築:多くの閲覧を得ている。患者が近傍の適切な医療機関を受診することに貢献している。
4. Minds準拠ガイドラインの改訂:International FPIES Associationにおいて、議論を重ね、世界で通用する良いサブグループ名を冠し、日本の第一線の医師たちが、診療から研究発表、英語論文化まで、よどみなく行えるようにしたいと計画している。
その他の成果として以下が得られた。
5-① 好酸球性胃腸炎、新規食事療法の開発 Rainbow食事療法の論文が公開された。
5-② 好酸球性胃腸炎、新規治療薬の開発
a) ステロイド局所療法の候補であるゼンタコート
b) 製薬会社Aによって世界各国で行われている抗IL13抗体の治験推進
5-③ 好酸球性胃腸炎、病態解明に関する発見:消化管組織トランスクリプトームと血清サイトカインアレイによって、新知見が得られた。
5-④ 好酸球増多症候群における、新規遺伝子異常の発見(4つの疾患、いずれも世界初)。
5‐⑤ 成人acute FPIESの調査
5-⑥ エコチル10万人コホートにおける、新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎の発症リスク因子の同定

結論
各プロジェクトが順調に進行し、成果を完成し得た。しかし、残された課題が更なる重要性をもって姿をあらわしてきた。このため、令和5年度以降も、研究を続ける必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
2024-04-11

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211008B
報告書区分
総合
研究課題名
乳児~成人の好酸球性消化管疾患、良質な医療の確保を目指す診療提供体制構築のための研究
課題番号
20FC1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
野村 伊知郎(国立成育医療研究センター 好酸球性消化管疾患研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 佳之(東海大学 医学部 小児科)
  • 石原 俊治(島根大学 医学部)
  • 石村 典久(島根大学 医学部)
  • 八尾 建史(福岡大学筑紫病院 消化器科)
  • 大塚 宜一(順天堂大学 医学部)
  • 工藤 孝広(順天堂大学 小児科)
  • 齊藤 由理(国立成育医療研究センター 栄養管理部)
  • 新井 勝大(国立成育医療研究センター 消化器科)
  • 大矢 幸弘(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター・アレルギーセンター)
  • 松本 健治(国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2000年ころから急増した、好酸球性消化管疾患は、新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎と好酸球性胃腸炎(EGE)、食道炎 (EoE)に分類される。EGEは、日本に多く、嘔吐、血便、蛋白漏出による栄養障害などが、生涯にわたる。標準治療は、長期ステロイド内服であり、副作用懸念がある。研究班はこれに代わる、“多種食物除去と原因食物同定療法”を実施し、約60%は、長期寛解維持が可能、しかし40%は反応せず、副作用の少ない抗炎症治療開発が必要と分かった。研究班は、食事療法プロトコールを完成した。非IgE依存型反応であるため、特別な食物除去を必要とする。
以上の問題を解決するため、以下の目標を掲げて研究を行う。
1. EGID情報センターWeb公開 EGEの基本情報、食餌療法について、詳細理解できるページ作成。急性嘔吐タイプの患者用、医療機関用アクションプランを作成する。
2. EGIDレジストリープロジェクト新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎について負荷試験結果から見た、新たな疾患概念の構築を行う。
3. EGID診療体制構築 消化管内視鏡検査を適切に行える病院、を都道府県で示し、診断治療を小児-成人にわたり行える診療体制構築、Web公開する。
4. Minds準拠ガイドラインの改訂への準備 新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸症ガイドラインは公開後5年、新規エビデンス収集し改訂するための議論を行う。
研究方法
1. EGID情報センターWeb公開
1-① EGID情報センターWEB公開 
ホームページを作成し改良しつつ維持を行う。
1-② Rainbowクッキングの作成、運営 
WEBシステムを作成し、掲載食品を増やす。
1-③ 新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎の嘔吐タイプの嘔吐発作時における、患者家族、医療機関向けアクションプラン作成:両者にとって適切なプランを策定する。
2. EGIDレジストリープロジェクト
新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎のレジストリ作成と維持:ファーストコホートを完成させ、登録患者数を増やし、結果について解析を行う。セカンドコホートを完成させ、全国の参加医療機関を募る。
3. EGID診療体制構築:学術会議に諮り、WEBページにて全国公開する。
4. Minds準拠ガイドラインの改訂:班会議で次回改訂におけるコンセプトについて議論する。
結果と考察
1-① EGID情報センターWEB公開 
WEBページを完成し、維持を行い、多くの閲覧を得ている。
1-② Rainbowクッキングの作成、運営 
WEBシステムを完成し、レシピは60種類に上った。また、論文が公開されたことから、全国の医療機関に方法を伝達している。
1-③ 新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎の嘔吐タイプの嘔吐発作時における、患者家族、医療機関向けアクションプラン作成:これにより、多くの乳児が生命の危機から救われると思われる。
2. EGIDレジストリープロジェクト
新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎のレジストリ作成と維持:現時点までに130名が登録された。acute FPIESの66名について解析結果が得られ、論文化中である。
3. EGID診療体制構築:多くの閲覧を得ている。患者が近傍の適切な医療機関を受診することに貢献している。
4. Minds準拠ガイドラインの改訂:International FPIES Associationにおいて、議論を重ね、世界で通用する良いサブグループ名を冠し、日本の第一線の医師たちが、診療から研究発表、英語論文化まで、よどみなく行えるようにしたいと計画している。
その他の成果として以下が得られた。
5-① 好酸球性胃腸炎、新規食事療法の開発 Rainbow食事療法の論文が公開された。
5-② 好酸球性胃腸炎、新規治療薬の開発
a) ステロイド局所療法の候補であるゼンタコート
b) 製薬会社Aによって世界各国で行われている抗IL13抗体の治験推進
5-③ 好酸球性胃腸炎、病態解明に関する発見:消化管組織トランスクリプトームと血清サイトカインアレイによって、新知見が得られた。
5-④ 好酸球増多症候群における、新規遺伝子異常の発見(4つの疾患、いずれも世界初)。
5‐⑤ 成人acute FPIESの調査
5-⑥ エコチル10万人コホートにおける、新生児‐乳児食物蛋白誘発胃腸炎の発症リスク因子の同定
5-⑦ EGID全国調査論文発表を行い、自然寛解が見込めない持続型が65%に上ることが判明した。
5-⑧ 卵黄FPIES、卵黄成分負荷試験を実施し、卵黄のアレルゲンが脂質部分か蛋白質部分かを判定している。
5-⑨ 急性食物蛋白誘発胃腸炎、全国患者向けWEB講座開催を年一回行っている。
結論
各プロジェクトが順調に進行し、成果を完成し得た。しかし、残された課題が更なる重要性をもって姿をあらわしてきた。このため、令和5年度以降も、研究を続ける必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
2024-04-11

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211008C

収支報告書

文献番号
202211008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
8,841,000円
差引額 [(1)-(2)]
159,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 947,889円
人件費・謝金 2,673,014円
旅費 54,446円
その他 3,091,615円
間接経費 2,075,000円
合計 8,841,964円

備考

備考
理由として二つございます
1.コロナ禍、学会のWEB参加が多かったこと
2. 人件費の対象者がコロナ罹患などで出勤日が限られていたこと

公開日・更新日

公開日
2023-12-12
更新日
-