わが国における飲酒の実態ならびに飲酒に関連する生活習慣病、公衆衛生上の諸問題とその対策に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200825026A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における飲酒の実態ならびに飲酒に関連する生活習慣病、公衆衛生上の諸問題とその対策に関する総合的研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
石井 裕正(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 進(久里浜アルコール症センター)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、我が国の飲酒に関連する諸問題の最新の状況に関して多角的に調査して、基礎資料を作成し、その低減に資することを目的とした。
研究方法
成人の飲酒実態と飲酒に関連する生活習慣に関する実態調査研究では、わが国の成人人口を代表するサンプルに対して、飲酒状況、アルコール関連問題、飲酒運転の状況などに関する調査を実施した。アルコール飲料の有害使用による生活習慣病としての循環器疾患、肝膵疾患、消化管癌の実態を調査した。
結果と考察
飲酒者数は男性83.1%、女性60.9%であり、20-24歳で女性の飲酒割合が上回った。2003年の結果と比較すると女性ではむしろ該当者割合が増加するものが認められた。循環器疾患のリスクファクターとなるメタボリックシンドロームと、飲酒、脂肪肝との関連を疫学的に検討し、多量飲酒がこれらの病態に関連していることを明らかにした。飲酒量が1回あたり3合を越えると脂肪肝の有病率が急増していた。アルコール性肝障害の進展機序に関する検討では、脂肪性肝炎の病態には肝脂肪化、鉄過剰、インスリン抵抗性が相互に連関することが示された。
アルコール性肝硬変の成因のうちアルコール単独によるものは、10年前に比して微増傾向にあるが、アルコール性に肝炎ウイルスが合併した症例は有意に減少していた。5合未満の飲酒で肝硬変に至った群では、糖尿病、肥満などの合併が多く、肝硬変進展に関与していることが示唆された。急性および慢性膵炎患者の成因では、アルコール性が急性膵炎の34%、慢性膵炎の64%を占め、飲酒量の増加とともに膵炎発生のオッズ比が上昇した。アルコール性急性膵炎、慢性膵炎患者ともに女性患者が増加傾向にあった。肝細胞癌発症に関する検討では、肝細胞癌発症に寄与する独立危険因子は、年齢、性、高積算飲酒量、糖尿病・肝硬変合併であった。全国調査の結果でも、糖尿病合併肝硬変症例では、高率に肝細胞癌の合併を認めた。
食道癌高危険群の問診票による特定と内視鏡検診に関する研究では、簡易フラッシング質問紙法を用いた問診票は食道癌の上位10%の高リスク群を特定し、食道癌の60%はこの群から発生することが示唆された。
結論
成人の飲酒実態と生活習慣に関する実態調査研究では、20-24歳で男性の割合が下がり、女性があがったため、男女の逆転が見られ、女性の飲酒割合が上回った。多量飲酒者に対する治療的介入手法の開発とその効果評価に関する研究では、約400例に対して介入を開始した。また、アルコール飲料の有害使用による生活習慣病としての循環器疾患、肝膵疾患、消化管癌の実態を調査した。各疾患における飲酒の影響が確認された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
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