患者・家族・国民に役立つ情報提供のためのがん情報データベースや医療機関データベースの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200823048A
報告書区分
総括
研究課題名
患者・家族・国民に役立つ情報提供のためのがん情報データベースや医療機関データベースの構築に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-034
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立がんセンター中央病院 放射線診断部)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学大学院工学系研究科)
  • 石川 ベンジャミン 光一(国立がんセンター がん対策情報センター)
  • 小山 博史(東京大学大学院医学系研究科)
  • 加藤 抱一(国立がんセンター がん対策情報センター)
  • 柴田 大朗(国立がんセンター がん対策情報センター)
  • 新海 哲(四国がんセンター)
  • 水流 聡子(東京大学大学院工学系研究科)
  • 平田 公一(札幌医科大学)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 松山 琴音(先端医療振興財団)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学)
  • 山口 直人(日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
93,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における患者・家族・国民に役立つ情報提供を実施するためのがん情報データベースや医療機関データベースを効率的に構築・運用する体制について検討し、有効性が検証されたものからがん情報提供ネットワーク等を通じて、迅速に患者に届けることができる体制を整えることを目的とする。
研究方法
ガイドラインを作成しているがん関連専門学会(全21領域)に対して、日本癌治療学会がん診療ガイドライン作成委員会を通して、概要状況、公開事業の進捗状況、今後のweb公開のあり方、体制づくりなどについて、調査を実施し、18領域から得た回答に基づいて、日本癌治療学会、国立がんセンターがん対策情報センター、Minds、臨床研究情報センター、約20種の各専門学会の代表者で構成されるがん診療ガイドライン連絡委員会(仮称)を組織し、年2回程度の検討会を開催するという対応案を策定した。6施設以上で構成される以下のがん種別検討ワーキンググループ(泌尿器がん、婦人科がん、呼吸器癌化学療法、消化器がん手術、消化器がん化学療法、リンパ浮腫、血液、アウトカム用語)を構成し、2回の検討会とメールによる意見交換により、標準パス作成のための作業を実施した。国内の臨床試験登録システムに登録・公開されている国内のがん関連臨床試験を領域別に分類のうえ整理を行い、ページを作成し、がん情報サービスから公開した。整備指針の充足状況に追加して、情報提供を考慮した項目を検討し、新たな現況報告書案を策定し、厚生労働省健康局総務課がん対策推進室に提案をおこなった。項目の検討にあたって、国立がんセンターがん対策情報センター患者・市民パネルのメンバーから意見を募り、参考とした。
結果と考察
ガイドラインを作成している23のがん関連専門学会に対して、日本癌治療学会がん診療ガイドライン作成委員会を通して、概要状況、公開事業の進捗状況、今後のweb公開のあり方、体制づくりなどについて、アンケート調査を実施した。調査により、ガイドライン作成が遅れているがん種における問題点および、既存のガイドラインの更新における問題点を明確にして、診療ガイドラインが円滑に作成され、更新されていくための支援の在り方、効果的な公開方法の検討が可能となると考える。6施設以上の担当者で構成される9つの標準パス作成ワークグループを組織し、胃がん手術、胸腔鏡下肺がん手術、肺がん化学療法、悪性リンパ腫化学療法を完成した。診療ガイドラインに基づいた標準パスを策定し、全国の医療施設で活用できるデータベースを構築することで、医療安全の推進、医療効率の向上、がん診療の均てん化に貢献することが期待される。結腸がん標準パスを基に結腸がん患者状態適応型パス標準電子コンテンツを作成すると共に、治療の状況をモニタリングするためのASP方式記録ツールである「PCAPS Admin-Lite」を開発した。新規開発アプリケーションにより、各病院のがん治療の実態データをインターネット経由で電子的に収集し解析可能な状態となり、標準治療の普及状況をモニタリングすることが可能となる。国内3臨床試験登録システムからがん領域の試験を抽出し累積784試験に関して領域別に情報提供を行った。また、厚労省未承認薬使用問題検討会議で取り上げられたがん領域の医薬品について、国内開発状況、海外規制当局の審査資料、臨床試験情報へのリンク等の情報提供を行った。さらに、各種がんに関する情報、臨床試験情報、未承認薬情報間で関連リンクを追加した。患者・医療関係者が臨床試験・未承認薬情報に簡単に到達できるようになる。また、関連する情報と連携をとったことから、疾患・治療法に関する情報を探すという流れのなかでの提供が促進される。がん診療連携拠点病院整備指針に基づいた整備状況を確認するための電子版推薦書・現況調査票の原案を作成した。患者・市民の意見を踏まえた項目を現況報告書に追加することにより、がん診療連携拠点病院からのデータ収集が可能となり、全国統一の形での拠点病院情報を公開することが可能となる。
結論
わが国のがん診療ガイドラインの作成公開体制に関する調査により、診療ガイドラインが円滑に作成され、更新されていくための支援の在り方、効果的な公開方法の検討が可能となると考える。診療ガイドラインについて、現時点では、各学会が独自に作成、更新を実施しており、今後、学会間で情報交換等を行う場をつることで、ガイドライン作成更新の効率化に寄与すると考える。また、パスデータベース、患者状態適応型パス がん標準コンテンツ、薬剤情報データベースの構築により、がん診療の均てん化に貢献することが期待される。さらに、医療機関情報データベースについて、がん診療連携拠点病院現況報告書を活用することで、効率的に全国統一の形での拠点病院情報を公開することが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2016-05-31
更新日
-