斜面崩壊による労働災害防止に関する研究

文献情報

文献番号
200733014A
報告書区分
総括
研究課題名
斜面崩壊による労働災害防止に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
三田地 利之(北海道大学大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 洋行(北海道大学大学院工学研究科)
  • 豊澤 康男(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 伊藤 和也(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
斜面工事中の労働災害による死亡者数は年間約100名近くに達しているが、掘削工事においては斜面崩壊事故の発生頻度が高く、一度に数人が被災する重大な災害も多い。その背景には、斜面崩壊災害は小規模な局所的崩壊において突発的に発生することから、発生箇所の特定、予測が困難で、災害防止技術が十分には開発されていないことがある。そこで本研究では、現場の状況に対応して使用可能な簡易な計測機器を開発するとともに、計測データを基に崩壊直前には確実に警報を発することの出来る信頼性の高いシステムを構築することを目的とした。
研究方法
粘性土の引張り強度および残留状態の強度など、斜面の安定性評価の基礎となる地盤強度の評価法について検討した結果を背景に、現場で簡便に強度評価が可能な簡易静的コーン貫入試験を開発した。また,遠心場で模型地盤に降雨を発生させ,斜面地盤内の間隙水圧の挙動を調べた。さらに、掘削時の斜面崩壊直前の変形状況を直接計測できる高精度傾斜計を開発し、重力場および遠心場での室内実験ならびに現場実験によって斜面変位の計測システムの評価を行ない、かつこの検知システムを用いる場合の警報発信レベルについて検討した。
結果と考察
地盤の引張り強度の評価法および地すべり対策工設計用強度パラメータの決定法について提案し、さらに簡易静的コーン貫入試験機の原位置試験から、十分に現場に適用可能であることを示した。また、地盤中の間隙水圧の挙動に関する遠心場模型実験から、複数の層から成る地盤ほど斜面表層に限定的でかつ突発的な崩壊が生じ易いことなどを確認した。これらの成果を背景に、高精度傾斜計を用いた検知・警報システムを構築し、室内模型実験および現場実物大実験を通して、崩壊の前兆現象を精度よく捉えかつ確実に警報を発信できることを示した。
結論
斜面の安定性を支配する地盤の強度評価および斜面崩壊のメカニズムに関する基礎的実験結果から、強度評価の方法および対策工設計のための強度の設定方法に関する具体的提案を行うとともに、小規模で突発的に生じる斜面崩壊のメカニズムを把握することができた。この成果をベースに、現場で簡易に地盤強度を評価するための試験機および斜面の変形を安価でかつ高精度で評価できる計測機器を開発した。さらに、それらを用いて斜面崩壊の前兆現象を精度よく検知し確実に警報を発信するシステムを構築することができた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733014B
報告書区分
総合
研究課題名
斜面崩壊による労働災害防止に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
三田地 利之(北海道大学大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 洋行(北海道大学大学院工学研究科)
  • 豊澤 康男(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 伊藤 和也(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
斜面工事中の労働災害による死亡者数は年間約100名近くに達しているが、掘削工事においては斜面崩壊事故の発生頻度が高く、一度に数人が被災する重大な災害も多い。その背景には、斜面崩壊災害は小規模な局所的崩壊において突発的に発生することから、発生箇所の特定、予測が困難で、災害防止技術が十分には開発されていないことがある。そこで本研究では、現場の状況に対応して使用可能な簡易な計測機器を開発するとともに、計測データを基に崩壊直前には確実に警報を発することの出来る信頼性の高いシステムを構築することを目的とした。
研究方法
粘性土の引張り強度および残留状態の強度など、斜面の安定性評価の基礎となる地盤強度の評価法について検討した結果を背景に、現場で簡便に強度評価が可能な簡易静的コーン貫入試験を開発した。また,遠心場で模型地盤に降雨を発生させ,斜面地盤内の間隙水圧の挙動を調べた。さらに、掘削時の斜面崩壊直前の変形状況を直接計測できる高精度傾斜計を開発し、重力場および遠心場での室内実験ならびに現場実験によって斜面変位の計測システムの評価を行ない、かつこの検知システムを用いる場合の警報発信レベルについて検討した。
結果と考察
地盤の引張り強度の評価法および地すべり対策工設計用強度パラメータの決定法について提案し、さらに簡易静的コーン貫入試験機の原位置試験から、十分に現場に適用可能であることを示した。また、地盤中の間隙水圧の挙動に関する遠心場模型実験から、複数の層から成る地盤ほど斜面表層に限定的でかつ突発的な崩壊が生じ易いことなどを確認した。これらの成果を背景に、高精度傾斜計を用いた検知・警報システムを構築し、室内模型実験および現場実物大実験を通して、崩壊の前兆現象を精度よく捉えかつ確実に警報を発信できることを示した。
結論
斜面の安定性を支配する地盤の強度評価および斜面崩壊のメカニズムに関する基礎的実験結果から、強度評価の方法および対策工設計のための強度の設定方法に関する具体的提案を行うとともに、小規模で突発的に生じる斜面崩壊のメカニズムを把握することができた。この成果をベースに、現場で簡易に地盤強度を評価するための試験機および斜面の変形を安価でかつ高精度で評価できる計測機器を開発した。さらに、それらを用いて斜面崩壊の前兆現象を精度よく検知し確実に警報を発信するシステムを構築することができた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
斜面の安定性を支配する地盤の強度評価および斜面崩壊のメカニズムに関する基礎的実験結果から、強度評価の方法および対策工設計のための強度の設定方法に関する具体的提案を行うとともに、小規模で突発的に生じる斜面崩壊のメカニズムを把握することができた。この成果をベースに、現場で簡易に地盤強度を評価するための試験機および斜面の変形を安価でかつ高精度で評価できる計測機器を開発した。さらに、それらを用いて斜面崩壊の前兆現象を精度よく検知し確実に警報を発信するシステムを構築することができた。
臨床的観点からの成果
本研究の成果に基づき、安価で信頼性の高い効果的な対策方法が普及すれば、掘削工事中の労働災害は大きく減少すると考えられる。また、斜面崩壊災害現場における救助活動はともすれば危険と隣り合わせの状況で行われているが、当システムはこのような救助活動の際や災害復旧工事における安全監視システムとしても有効である。なお、当該システムは、全国に33万箇所以上あるといわれている急傾斜地崩壊危険箇所においても活用が見込まれるものであり、その波及効果はきわめて大きいと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究では,斜面崩壊検知・警報システムに用いる計測機として,中小規模掘削工事でも適用することが出来るようにコスト面および設置が容易な面を考慮して(地上・地中)傾斜計と変位計に対象を絞った。そして、特に高精度傾斜計を用いた斜面崩壊検知・警報システムを構築するために実施した室内模型実験および現場実大実験の結果から、傾斜計の崩壊発信レベルとして、
1.傾斜角度が累積で0.1?0.2度となった場合、および、
2.傾斜角度の速度が加速度的に増加する傾向が見られる場合
に警報を発信することを提案した。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省の重点施策として、建設業における労働災害防止対策の充実が掲げられている。また、平成10年に策定された第10次労働災害防止計画では、建設業における労働災害防止対策の確立が重点対象分野に位置づけられ、「斜面崩壊災害を減少させるため、切土等の作業における斜面崩壊に対する効果的な対策を検討する。」とされている。本研究はその主旨に沿ったものであり、的確な斜面の監視に基づいて崩壊の危険性を予測し、確実に警報を発して避難することができるような簡易かつ安価で信頼性の高いシステムを構築することができた。
その他のインパクト
平成19年1月16日に、北海道大学大学院工学研究科環境循環システム専攻および(独)労働安全衛生総合研究所主催、地盤工学会北海道支部および中央労働災害防止協会の後援で「斜面崩壊による災害防止に関するシンポジウム」を北海道大学学術交流会館において開催した。科学研究費補助金の下での研究に携わる研究者のみならず、広く国内から関連研究発表を公募し、研究発表と討論を通じてこの分野の実務に携わる現場技術者に研究の現状を認識してもらうことができ、研究成果の実務への展開の手ごたえを得た。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tamrakar S.B. Toyosawa Y., Mitachi T and Itoh K.
Tensile strength of compacted and saturated soils using newly developed tensile strength measuring apparatus
Soils and Foundations , 45 (6) , 103-110  (2005)
原著論文2
小松順一・村岡洋・阿部真郎・三田地利之
軟岩切土法面における岩盤崩壊の地質的素因と不連続面のせん断強度
日本地すべり学会誌 , 41 (6) , 607-617  (2005)
原著論文3
三田地利之
粘性土を対象とした室内せん断試験の変遷と展望
土と基礎 , 54 (2) , 22-25  (2006)
原著論文4
Tamrakar S.B.,Mitachi T. and Toyosawa Y.
Measurement of soil tensile strength and factors affecting its measurement
Soils and Foundations , 47 (5) , 911-918  (2007)
原著論文5
田中洋行
地盤調査に求められている課題-信頼設計に基づいた地盤定数の設定-(総説)
土と基礎 , 55 (11) , 1-4  (2007)
原著論文6
豊澤康男, 伊藤和也, Tamrakar S. B., 三田地利之他
半導体加速度センサーを利用した高精度傾斜計による斜面崩壊予知の検討
労働安全衛生研究 (掲載決定) , 1 (2)  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-