細胞組織利用医薬品の品質・安全性等の評価に関する基盤技術開発研究

文献情報

文献番号
200706019A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞組織利用医薬品の品質・安全性等の評価に関する基盤技術開発研究
課題番号
H17-再生-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 内田恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 川端 健二(独立行政法人 医薬基盤研究所 基盤研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
31,832,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞組織利用医薬品の品質・安全性確保のために、ウイルスの高感度検出法や、細胞の特性解析法、品質・安全性等の評価技術の開発を目的とする。
研究方法
①ウイルス検出技術開発、
②細胞遺伝的安定性評価手法開発、
③細胞由来生理活性物質の構造解析技術の開発、
④新規免疫原性評価技術の開発、
⑤細胞特性指標の探索、
の各分野ついて研究を行った。
結果と考察
①ウイルス安全性に関する研究として、ドナーのウイルススクリーニング試験に適用可能なウイルス濃縮法開発を検討し、ポリエチレンイミン磁性ビーズによる濃縮法はHCVや低濃度キャリアHBVの検出に有用であること、また抗HBV抗体とZnCl2による濃縮法はHBVウインドウ期の高感度検出に有用であることを明らかにした。②大規模一塩基多型解析用GeneChipをComparative Genome Hybridization法に応用し、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)の培養過程における染色体変化の検出に有用であることを示唆した。③糖鎖を指標とした細胞特性確認試験法として、糖鎖の同位体標識法とnano LC/MSを組み合わせた迅速かつ高感度・高精度な定量糖鎖プロファイリング法を開発し、細胞特性試験法や細胞同等性評価法としての有用性が高いことを確認した。④細胞組織利用医薬品の免疫原性試験の確立を目指して、血球系ヒト化マウスの効率的作成のための基盤技術開発を行い、抗アポトーシス遺伝子を搭載したアデノウイルスベクターを用いて造血幹細胞の機能改善に成功した。⑤血管内皮前駆細胞(EPC)の有用な特性指標の検討を行った結果、トロンボポエチン(TPO)がAC133陽性細胞由来early EPCの誘導を促進すること、およびTPOへの反応性やTPO受容体であるMplの発現がearly EPCの新たな特性指標となる可能性を示した。また、OEC (outgrowth endothelial cell)培養法を最適化し、誘導効率・拡大効率・増殖性・生存率を改善するとともに、OECの特性指標の候補遺伝子を3つ見出した。⑥細胞組織利用医薬品の製品のばらつきの所在を同定する方法の検討を、hMSCを例に行い、トランスクリプトーム解析が品質特性を網羅的に把握する手法として有用であること明らかにした。
結論
細胞組織利用医薬品等の特性解析法や製造工程の評価のための基盤技術として有用な成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-01-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200706019B
報告書区分
総合
研究課題名
細胞組織利用医薬品の品質・安全性等の評価に関する基盤技術開発研究
課題番号
H17-再生-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 内田恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 川端 健二(独立行政法人 医薬基盤研究所 基盤研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞組織利用医薬品の品質・安全性確保のために、ウイルスの高感度検出法や、細胞の特性解析法、品質・安全性等の評価技術の開発を目的とする。
研究方法
①ウイルス検出技術開発、
②細胞遺伝的安定性評価手法開発、
③細胞由来生理活性物質の構造解析技術の開発、
④新規免疫原性評価技術の開発、
⑤細胞特性指標の探索、
の各分野ついて研究を行った。
結果と考察
①ポリエチレンイミン磁性(PEI)ビーズを用いたウイルス濃縮法を用いて培養細胞のウイルス高感度検出法を確立した。また、PEIビーズをドナーの高感度ウイルスウイルススクリーニング法としての有用性を検討し、HAV、HCV、さらには低濃度キャリアHBVの検出に有用であることを明らかにした。2価イオンを利用してHBVウインドウ期の高感度検出が可能であることを示した。
②大規模一塩基多型解析用GeneChipをCGH法に応用し、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)の培養過程における染色体変化の検出に有用であることを示した。
③nano LC/MSを用いた微量糖鎖プロファイリング法を開発し、細胞糖タンパク質糖鎖の網羅的解析法及び糖鎖抗原特異的解析法として細胞の品質特性評価に利用可能であることを示した。また、糖鎖の同位体標識法とnano LC/MSを組み合わせ、定量的糖鎖プロファイリング法を開発し、細胞特性・同等性評価法としての有用性を示した。
④免疫原性試験のための血球系ヒト化マウスの開発を目的とし、抗アポトーシス遺伝子搭載アデノウイルスベクターを用いて造血幹細胞の機能改善に成功した。
⑤血管内皮前駆細胞(EPC)の特性指標の検討を行い、トロンボポエチン(TPO)がearly EPCの誘導を促進すること、TPO受容体の発現の特性指標となることを示した。また、OEC (outgrowth endothelial cell)培養法を最適化し、特性指標の候補遺伝子を見出した。さらに、目的細胞誘導能を評価するための細胞特性指標探索法として、遺伝子発現プロファイリングと分化誘導後の目的細胞への分化効率との間の相関関係の比較が有用なことを、心筋細胞分化能を例にして明らかにした。
⑥細胞組織利用医薬品の製品のばらつきの所在の同定法を検討し、トランスクリプトーム解析の品質特性の網羅的把握における有用性を示した。
結論
細胞組織利用医薬品等の特性解析法や製造工程の評価のための基盤技術として有用な成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞組織利用医薬品の品質、安全性等を確保するために、1) 感染性因子の新規安全性評価技術、2) 細胞の遺伝的安定性評価手法、3) 糖鎖解析による細胞由来生理活性物質のプロファイリング技術や構造解析技術、4) 免疫原性の新規評価技術、5) 細胞特性指標の探索法、6) 細胞組織利用医薬品の品質評価手法の開発を行い、独自の技術としてPEIビーズによるウイルス濃縮法、nano LC/MSを用いた新規の糖鎖プロファイリング法等の技術を開発した。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床研究ではなく、再生医療に用いられる細胞組織工学製品の品質・安全性評価技術開発を目的とした。しかし、ヒト血管内皮前駆細胞等を取り上げ、その有効性や品質に関わる指標を提示したことより、海外の研究者を含め様々な問い合わせがあった。また。また、細胞組織利用医薬品の安全性で特に注意を要するウイルスの高感度検出手法についても多くの問い合わせがある。さらに製造工程由来不純物である異種抗原のNグリコリルノイラミン酸の高感度定量法の開発に成功し、臨床研究に用いられる検体の測定に用いられようとしている。
ガイドライン等の開発
本研究の成果は、「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針」(薬食発第0208003号, 2008年2月8日)、「ヒト(同種)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針案」(案件番号495070319[医薬食品局長通知(予定)], 2008年3月11日パブリックコメント募集開始)、「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の製造管理・品質管理の考え方について」(薬食監麻発第0327025号、成20年3月27日)の改正の科学的根拠を提供した。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は医薬品医療機器総合機構での医薬品・医療機器の専門協議や薬事食品審議会の部会審議などにおいての科学的に評価に反映されてきている。また、ヒト幹細胞を用いる臨床研究の審査においても、各申請の品質や安全性評価における基準や科学的根拠を提供している。さらに、ES細胞の基準策定における基礎的データとして活用されており、再生医療の実用化推進に貢献している。
その他のインパクト
平成18年9月10日の讀賣新聞において、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の施行に関する記事中の参考資料として、本研究の一環として行われた国内外の再生医療・細胞組織利用医薬品の開発調査の結果が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
64件
その他論文(和文)
39件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
168件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Jin YUAN, Noritaka HASHII, Nana KAWASAKI, et al.
Isotope tag method for quantitative analysis of carbohydrates by liquid chromatography/mass spectrometry.
J. Chromatogr A. , 1067 , 145-152  (2005)
原著論文2
Noritaka HASHII, Nana KAWASAKI, Satsuki ITOH, et al.
Glycomic/ glycoproteomic analysis by LC/MS: Analysis of glycan structural alternation in the cells.
Proteomics , 5 , 4665-4672  (2005)
原著論文3
Nana KAWASAKI, Satsuki ITOH, Akira HARAZONO, et al.
Mass spectrometry of glycoprotein.
Trends in Glycosci Glycotech , 17 , 193-203  (2005)
原著論文4
Noritaka HASHII, Nana KAWASAKI, Satsuki ITOH, et al.
Specific detection of Lewis x-carbohydrates in biological samples using liquid chromatography/multiple-stage tandem mass spectrometry, Rapid commun.
Rapid Commun Mass Spectrom , 19 , 3315-3321  (2005)
原著論文5
Fuminori SAKURAI, Kenji KAWABATA, Teruhide YAMAGUCHI, et al.
Optimization of adenovirus serotype 35 vectors for efficient transduction in human hematopoietic progenitors: comparison of promoter activities.
Gene Ther. , 12 , 1424-1433  (2005)
原著論文6
Yoji SATO, Ryo NAKAMURA, M. SATOH, et al.
Thyroid hormone targets matrix Gla protein gene associated with vascular smooth muscle calcification.
Circ. Res. , 97 , 550-557  (2005)
原著論文7
Kenji KAWABATA, Fuminori SAKURAI, Teruhide YAMAGUCHI, et al.
Efficient gene transfer into mouse embryonic stem cells with adenovirus vectors.
Mol. Ther. , 12 , 547-554  (2005)
原著論文8
水沢左衛子、岡田義昭、堀内善信、他
C型肝炎ウイルスRNAの遺伝子検査法のための第一次国内標準品の作製
輸血学会雑誌 , 51 , 515-519  (2005)
原著論文9
川崎ナナ、橋井則貴、伊藤さつき、他
LC/MSを用いたグライコーム解析
臨床化学 , 34 , 309-318  (2005)
原著論文10
Satsuki ITOH, Nana KAWASAKI, Noritaka HASHII, et al.
N-linked oligosaccharide analysis by liquid chromatography with graphitized carbon column/ liner ion trap-Fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometry in positive and negative ion modes.
J. Chromatogr. A. , 1103 , 296-306  (2006)
原著論文11
Kenji KAWABATA, Fuminori SAKURAI, Noya KOIZUMI, et al.
Adenovirus vector-mediated gene transfer into stem cells.
Mol. Pharm. , 3 , 95-103  (2006)
原著論文12
Eriko UCHIDA, Mieko KOGI, Tadashi OSHIZAWA, et al.
Optimization of the virus concentration method using polyethyleneimine-conjugated magnetic beads and its application to the detection of human hepatitis A, B and C viruses.
J. Virol. Methods , 143 (1) , 95-103  (2007)
原著論文13
Akiko ISHII-WATABE, Toshie KANEYASU-TOYODA, Takuo SUZUKI, et al.
Influences of the recombinant artificial cell adhesive proteins on the behavior of human umbilical vein endothelial cells in serum-free culture.
Biologicals , 35 (4) , 247-257  (2007)
原著論文14
S. MURAKAMI, Fuminori SAKURAI, Kenji KAWABATA, et al.
Interaction of penton base Arg-Gly-Asp motifs with integrins is crucial for adenovirus serotype 35 vector transduction in human hematopoietic cells.
Gene Ther. , 14 (21) , 1525-1533  (2007)
原著論文15
Toshie KANEYASU-TOYODA, Akiko ISHII-WATABE, Takuo SUZUKI, et al.
A new role of thrombopoietin enhancing ex vivo expansion of endothelial precursor cells derived from AC133-positive cells.
J. Biol. Chem. , 282 , 33507-33514  (2007)
原著論文16
Noritaka HASHII, Nana KAWASAKI, Yukari NAKAJIMA, et al.
Study on the quality control of cell therapy products. Determination of N-glycolylneuraminic acid incorporated into human cells by nano-flow liquid chromatography/Fourier transformation ion cyclotron mass spectrometry.
J. Chromatogr. A. , 1160 , 263-269  (2007)
原著論文17
山口照英
ヒト細胞治療薬の品質と安全性確保について
Bio Clinica , 27 , 67-74  (2007)
原著論文18
川崎ナナ、橋井則貴、伊藤さつき、他
細胞治療薬の品質・安全性評価における糖鎖解析の重要性とLC/MSの応用可能性
News Letter糖鎖フラッシュ号、Functional Glycomics , 9 , 35-41  (2007)
原著論文19
内田恵理子、石井(渡部)明子、山口照英
遺伝子治療薬及び細胞治療薬のウイルス安全性確保
臨床とウイルス , 35 , 278-290  (2007)
原著論文20
山口照英、石井明子
細胞・組織加工医薬品の品質と安全性確保への提言
PHARMSTAGE  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-