輸入蠕虫性疾患の監視と医療対応整備に関する研究

文献情報

文献番号
200500652A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入蠕虫性疾患の監視と医療対応整備に関する研究
課題番号
H15-新興-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
太田 伸生(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 有薗 直樹(京都府立医科大学)
  • 川中正憲(国立感染症研究所寄生動物部)
  • 平山謙二(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 赤尾信明(東京医科歯科大学大学院医学研究科)
  • 田邊將信(慶応義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 輸入感染症監視がわが国の厚生医療行政上の重要課題である中で、蠕虫疾患の監視と医療対応の体制が未整備であり、その改善・解決を目指した。日本国内での蠕虫感染症発生に関する情報整備、新興蠕虫感染症の新規診断法開発や輸入物品からの蠕虫検出法とレファレンス体制構築、新興・再興輸入蠕虫症の病態解析と研究モデル開発を行い、国民の健康福祉の増進を目的とした。
研究方法
① 情報整備:国内で発生した蠕虫症の報告事例を和文論文報告と国内学会発表から収集してデータベース化した。個別症例報告システムも立ち上げた。また、国内に定着した広東住血線虫の疫学情報を整備した。
② 新規診断・検出法の開発:新興蠕虫感染症としての幼線虫移行症の免疫診断法の標準化と迅速診断キット化の研究、日本住血吸虫感染のPCRによる診断法開発、及び輸入食材からの寄生虫卵検出を検討した。
③ 蠕虫症の病態解析:ヒトの病態を反映する動物モデルとしてスナネズミやミニブタの実用化を進めた。腸管寄生線虫の病態と宿主防御を調べるために寄生部位での宿主の発現遺伝子の経時的変動を調べた。
結果と考察
 国内の蠕虫感染症発生事例を網羅したデータベース化をほぼ完了し、論文3176編と学会報告479報の情報を公開した。個別症例登録も開始し、平成17年度半期で40症例を登録した。首都圏の広東住血線虫感染ネズミと感染中間宿主生息域を調査し、首都圏の広範な居住環境中に生活史が確立されていた。各種動物由来回虫症の迅速診断キットを開発した。感度、特異性とも従来のELISA法に匹敵する。日本住血吸虫感染のPCR診断は感染早期から検出が可能であり、従来の方法にない特長を持つ。中間宿主貝監視にも有用であった。輸入キムチを調査し、市販商品の約1/3から何らかの蠕虫卵が検出されたが、ヒトへの感染性は不明である。病理学的検討でヒトの病態を反映するスナネズミの感染系や慢性病態を再現できるミニブタの住血吸虫感染などの有用性が確認できた。腸管寄生線虫感染時の宿主腸管粘膜細胞の遺伝子発現を検討し、ムチン関連遺伝子の経時的発現調節が明らかになり、新たな治療標的と考えられた。
結論
 わが国の輸入蠕虫感染症への医療対応に資する情報、診断及び監視のための新規技術の開発、病態に関する基礎的研究をほぼ目標に沿って実施した。従来の体制不備を補う改善を進めたが、なお情報の更新、診断法開発と治療・予防の指針整備など今後の課題も残った。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200500652B
報告書区分
総合
研究課題名
輸入蠕虫性疾患の監視と医療対応整備に関する研究
課題番号
H15-新興-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
太田 伸生(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 有薗直樹(京都府立医科大学)
  • 川中正憲(国立感染症研究所寄生動物部)
  • 平山謙二(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 赤尾信明(東京医科歯科大学大学院医学研究科)
  • 田邊將信(慶応義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 輸入感染症監視がわが国の厚生医療行政上の重要課題である中で、蠕虫疾患の監視と医療対応の体制が未整備であり、その改善・解決を目指した。日本国内での蠕虫感染症発生に関する情報整備、新興蠕虫感染症の新規診断法開発や輸入物品からの蠕虫検出法とレファレンス体制構築、新興・再興輸入蠕虫症の病態解析と研究モデル開発を行い、国民の健康福祉の増進を目的とした。
研究方法
① 情報整備:国内で発生した蠕虫症の報告事例を2000年以降の和文論文と国内学会発表から収集してデータベース化した。個別症例報告システムも立ち上げた。国内に定着した広東住血線虫の疫学情報も整備した。
② 新規診断・検出法の開発:幼線虫移行症の免疫診断法に用いる抗原・抗体の標準化と迅速診断キット化の研究、日本住血吸虫感染のPCRによる診断法の検討、及び輸入食材からの寄生虫卵検出を検討した。
③ 蠕虫症の病態解析:ヒトの病態を反映する動物モデルとしてスナネズミやミニブタを検討し、病理学的、免疫学的パラメータを調べた。腸管寄生線虫の病態解明のために寄生局所の宿主応答を調べた。感染病態修飾因子としてCILIPの解析も進めた。
結果と考察
 国内の蠕虫感染症発生事例として論文3176報と学会報告479報の情報をデータベースに公開した。個別症例登録も開始し国内の輸入蠕虫症実態調査を手がけた。広東住血線虫感染ネズミと感染中間宿主生息域を調査し、首都圏の広範な居住環境中に生活史が確立されていた。各種動物由来回虫症の免疫診断法の標準化を完了し、迅速診断キットも開発した。日本住血吸虫感染の早期診断に利用できるPCR検出法を確立した。この方法は中間宿主貝監視にも有用であった。輸入キムチなど市販食材からも蠕虫卵が検出され、今後の簡易検査法開発と監視強化が必要である。ヒトの病態を反映するモデル動物の開発が進んだので、今後はこれらを利用した慢性病態発現機序の研究やワクチン開発研究への有用性が確認できた。腸管寄生線虫感染時の宿主腸管粘膜細胞の生体応答を検討し、その動態解析結果は新たな治療標的となることが考えられた。
結論
 わが国の輸入蠕虫感染症への医療対応に資する情報、診断及び監視のための新規技術の開発、病態に関する基礎的研究をほぼ目標に沿って実施した。従来の体制不備を補う改善を進めたが、なお情報の更新、診断法開発と治療・予防の指針整備など今後の課題も残った。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500652C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 新興輸入蠕虫感染症としての幼線虫移行症のヒトでの病態を反映する動物モデルを確立したこと、蠕虫感染症の宿主防御免疫とその責任遺伝子の発現動態を解明したこと、住血吸虫症の病態修飾因子としてのCILIPの機能を解明したこと、日本住血吸虫感染のPCR診断法を確立し、従来の診断法で捕捉できなかった感染早期の診断にも利用可能であることを明らかにしたこと、国内に定着した広東住血線虫の首都圏での分布状況について明らかにしたこと、など。
臨床的観点からの成果
 輸入蠕虫症に関する症状、診断、治療、予防等に関する情報を検索できるデータベースを公開したこと、輸入蠕虫性疾患の個別症例登録システムを立ち上げて国内での発生事例捕捉の制度を構築したこと、新興蠕虫感染症の新規免疫診断法の開発と診断依頼受諾等の医療サービスを実施したこと、一部の幼線虫移行症の迅速診断キットを開発したこと、ヒト腸管寄生線虫症のサイトカイン産生から見た局所免疫を明らかにして病態発現機序に関する新知見を得たことなど。
ガイドライン等の開発
輸入食品の寄生虫卵汚染を検出する方法について、従来の手法に不十分な点があることを確認したので、その改善点を整理して方法の普及を図ることにした。年度研究報告書に記載の他、平成18年度の日本寄生虫学会臨床検討会で情報普及にあたる予定である。各種幼線虫移行症の免疫診断法開発は関連学会や臨床集会等で情報を公開し、医療機関からのコンサルテーションに積極的に応じる体制を採っている。
その他行政的観点からの成果
 輸入食材の寄生蠕虫汚染を監視するために市販のキムチを調査した結果、輸入キムチの1/3に何らかの蠕虫卵の混入を認め、緊急危険情報として厚生労働省に報告した。輸入食材の寄生虫汚染監視のために検疫機関で実施される信頼すべき方法は確立されておらず、キムチの寄生虫卵混入検査についても現行方法改良の必要性を提示した。輸入蠕虫症の症例補足制度は存在しないので、本研究班で協力を呼びかけている個別症例登録システムが実態(発生事例数、感染地域、臨床的転帰など)把握の方法となりうる。
その他のインパクト
 イヌ回虫症の簡易迅速診断キットの実現は医療現場での対応迅速化に大きな貢献となること、本研究班で明らかにした輸入キムチの寄生虫卵汚染は昨今の輸入生鮮野菜にも同様のことが生じていることを推測させるもので、今後の正確で簡便な監視のための手技開発を強く示唆したこと、首都圏の住宅地で広東住血線虫の生息フォーカスが明らかになったことは幼小児などハイリスクの人たちへの適切な情報提供と注意喚起の必要を示したこと、など。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
34件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
N Ohta, et al.
Research on calpain of Schistosoma japonicum as a vaccine candidate.
Parasitol Int , 53 (4) , 175-181  (2004)
原著論文2
K Watanabe, et al.
The miniature pig:a unique experimental model for Schistosoma japonicum infection.
Parasitol Int , 53 (4) , 293-299  (2004)
原著論文3
Lertanekawattana S, et al.
Immunological characteristics of patients infected with common intestinal helminths:results of a study based on reverse-transcriptase PCR.
Ann Trop Med Parasitol , 99 (1) , 71-80  (2005)
原著論文4
T Kumagai, et al.
Schistosoma japonicum:localization of calpain in the penetration glands and secretions of cercariae.
Exp Parasitol , 109 , 53-57  (2005)
原著論文5
El-Malky M, et al.
Protective effect of vaccination with Toxoplasma lysate antigen and CpG as an adjuvant against Toxoplasma gondii in susceptible C57BL/6 mice.
Microbiol Immunol , 49 (7) , 639-646  (2005)
原著論文6
Y Osada, et al.
Establishment of Schistosoma japonicum calpain-specific mouse T cell hybridomas and identification of a T cell epitope that stimulates IFNγproduction.
Vaccine , 23 , 2813-2819  (2005)
原著論文7
Lu Shaohong
Evaluation of the anthelmintic effects of artesunate against experimental Schistosoma mansoni infection in mice using different treatment protocols.
Parasitol Int , 55 , 63-68  (2006)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-