WHO飲料水水質ガイドライン改訂等に対応する水道における化学物質等に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200987A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO飲料水水質ガイドライン改訂等に対応する水道における化学物質等に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
眞柄 泰基(北海道大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 国包章一(国立保健医療科学院)
  • 安藤正典(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所)
  • 長谷川隆一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 西村哲治(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 米沢龍夫(日本水道協会)
  • 伊藤禎彦(京都大学大学院)
  • 伊藤雅喜(国立保健医療科学院)
  • 秋葉道宏(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
111,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2003年のWHO飲料水水質ガイドライン(以下「WHOガイドライン」という。)の全面改訂に対応し、我が国の水道水質に関する基準も全面的に見直す必要が生ずると考えられ、このため、WHOガイドライン改訂において対象となる化学物質の水道における存在状況の把握、浄水処理における除去・生成・制御機構の理論的解明、毒性情報の収集・評価といった化学物質に関する科学的情報、知見が必要となる。また、WHOガイドライン改訂対象物質以外でも、日本の水道において問題となっている物質については、その対策について検討が必要となる。そこで、WHOガイドラインの全面改訂に対応した我が国における水道水質に関する基準の見直しに必要となる事項を研究し、科学的な知見を得ることを目的とする。
研究方法
主任研究者及び分担研究者の他、水道事業体水質担当者、地方衛生研究所の研究者等54名の研究協力者からなる研究委員会を設置し、全国レベルでの実態調査及び実験などを行った。
結果と考察
WHOガイドライン対象物質となっているアメトリン等の農薬やそれらの浄水過程における挙動、アンチモン、スズ等重金属の原水・浄水処理過程での挙動、過マンガン酸カリウム消費量に変わる有機物指標、MX等の消毒副生成物、水質試験におけるサンプリング箇所及び頻度の科学的な決定方法、鉛の基準強化に伴うサンプリング方法、WHO飲料水ガイドラインの改訂に関してわが国が担当している項目についてのクライテリアの作成や水質基準改定項目についての毒性評価や感染性微生物のリスク評価について検討した。
(1)農薬分科会では、農薬の監視体制の確立を目指し,監視農薬のプライオリティーリストの作成し,情報の拡充を図ることができた。これらの農薬について既報の分析法,物性情報,構造上の特徴などの情報を整理することで,グループ化を行い,それらに対応した一斉分析法の開発ができた。また、浄水処理過程における処理特性を考慮するために回分式の活性炭吸着試験を行い,各農薬の活性炭処理性についても評価をし,この情報をプライオリティーリスト組み込むことで,より実用的なリストの作成を行うことができた。これらの結果を基に、水質基準の改訂に際し、水質管理目標設定項目における農薬の監視対象農薬101農薬を定めるための知見を得ることができた。金属分科会では、アンチモンの除去についてNF膜を用いたパイロットプラントを設置し実験をおこない、アンチモンを効率高く除去できることが明らかとなった。合成樹脂管に用いられている有機スズの分析法を確立し、塩ビ管からはその製造において使用されている有機スズが溶出することが明らかとなった。全国の水道事業体での測定データをもとに、GIS手法を導入して重金属類の存在状況マップを作成した。また、北海道については簡易水道での測定データも加えて、より詳細なマップを作成した。
(2)一般有機物分科会では、水質基準項目である過マンガン酸カリウム消費量の水道水の性状の指標としての問題点や試験法上の問題点を検討した。その結果、測定精度上の問題点や性状指標としての妥当性が少ないことなどから、水質基準項目としては不適切であり、全有機炭素(TOC)濃度を有機物の指標とすべきであることが明らかとなった。
(3)消毒副生成物部会では、WHOガイドライン項目である臭素酸について、実態調査を行った。その結果、オゾン処理を導入している水道ではガイドライン値を超える臭素酸が存在していることが明らかとなるとともに、電解次亜塩素酸には臭素酸が存在していることが明らかとなった。これらの結果から、臭素酸を水質基準に加え、臭素酸による健康影響リスクを管理する必要があることが明らかとなった。
(4)サンプリング方法分科会では、全国の約200事業体における基準項目についてのサンプリング箇所数についての調査をおこなうとともに、測定結果を統計的に解析を行った。その結果、サンプリング箇所については排水系統毎に1カ所以上、配水系統の末端で採水することが必要であることが確認された。採水頻度については一般細菌など10項目は月移管の検査が必要であるが、それ以外の項目については年4回測定することによって、最大濃度を確実に把握できることが明らかとなった。
(6)鉛分科会では、水温と鉛濃度の関係は、流量が多くなるに従って低くなることや、高水温期の鉛の溶出量は、低水温期に比べ2~4倍程度高くなることが明らかとなった。また、給水装置のモデル配管装置を用いて、滞留時間5、15、30、60分で、鉛の溶出濃度が、滞留時間5分で0.029mg/L、15分で0.041mg/L、30分で0.057mg/L、60分と0.077mg/Lで滞留時間が長くなるほど高くなることが明らかとなった。これらの結果や水道における採水作業を考慮すると、流量5l/分で5分間給水栓水を流出させた後、15分間滞留させ、同じ流量で開栓し、5l採水して試料とすることが採水法として適切であることが明らかとなった。
(7)毒性評価分科会では、水道水質基準の全面的な見直し作業に伴い、農薬を除くすべての化学物質の基準値を設定するための毒性情報収集を行った。WHOのガイドライン改訂状況や我が国の過去の検出状況を考慮し、無機物17、有機物39、消毒副生成物27 の合計約80の化学物質を基準値設定のための候補物質として選定した。これらの化学物質の最新の毒性情報を収集し、基準値策定に重要な根拠となる毒性情報をまとめると共に、過去の基準値設定根拠と照らし合わせることにより、新しい健康リスク評価値案の算定を行った。
(8)微生物分科会では、水道法に定める水質基準に定められている一般細菌数および大腸菌群数について、その衛生学的意義について検討を行った。その結果、一般細菌数については衛生学的な意義は低いものの、水道の工程管理に有効な指標であることから、水質基準項目として存続させる意義がある。しかし、大腸菌群数については糞便汚染の指標としての意義が低いことから、大腸菌に変えるべきであることが明らかとなった。クリプトスポリジュウムについては、その検査法に高度な技術を要することなどから、水質基準とするよりは水道法22条に定める衛生上の措置にクリプト対策を追加することが適切であるこという結論を得た。
(9)総合評価分科会では、水道水質基準の改訂に資するため、水質基準のあり方や現水質基準項目や監視項目等に加えて、WHOのガイドライン値があらたにさだめらた項目や改訂された項目について、健康リスク情報、わが国における存在状況、処理性、分析法上の問題点等についての情報を収集解析した。

結論

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研究報告書(紙媒体)

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