韓国・台湾・シンガポール等における少子化と少子化対策に関する比較研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200025A
報告書区分
総括
研究課題名
韓国・台湾・シンガポール等における少子化と少子化対策に関する比較研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 西岡八郎(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 伊藤正一(関西学院大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではわが国との比較を交えながら、アジアNIESにおける少子化と少子化対策の動向と内外の 格差について比較分析をするともに、少子化対策の効果を分析し、わが国の政府・地方自治体における少子化対策の策定・実施・評価に資することを目的とする。そのため、利用可能なデータの分析と並行して、アジアNIESと日本国内(少子・多子の地域・階層)において収集したデータによって内外の地域間・階層間格差を分析し、少子化の要因と少子化対策の潜在的効果を明らかにするとともに、わが国にとっての対策の選択肢を提示しようとするものである。
研究方法
本研究は①文献・理論研究、②マクロデータの収集・分析、③既存ミクロデータの分析、④政策志向的分析からなる。①文献・理論研究としては、アジアNIESの各々とわが国について出生力転換前後の出生力の動向・要因と家族計画プログラムの効果を分析した研究等をレビューする。また、近年の少子化対策に関する文献がある場合にはそれらも合わせてレビューし、家族計画プログラムと少子化対策の効果に関する文献を比較検討する。さらに、NIES諸国とわが国おける出生力変動、その要因、家族計画プログラムを含む出生政策の効果に関する文献を比較検討する。以上の文献研究と地域研究の専門家からのヒアリング等に基づき、政策効果を明示的に導入した出生力変動要因に関してアジアNIESとわが国に共通な分析枠組みの設定を試みる。②マクロデータの収集・分析としては、アジアNIESの各々とわが国について出生力をはじめとする人口指標、各種の社会経済的指標、政策指標に関するマクロデータを収集し、①で設定された分析枠組みと収集されたマクロデータに基づく出生力変動の規定要因の分析を行う。③既存ミクロデータの分析としては、既存のミクロデータが利用可能な場合、①で構築された分析枠組みと②の分析結果に基づき、アジアNIESのおのおのとわが国について出生力変動の規定要因の分析を行う。また、NIESとわが国における別個のモデルをすり合わせた共通のモデルを用いて比較分析を行う。④政策志向的分析としては③で利用したミクロデータにマクロデータをリンクし、政策変数を含むマクロ的変動要因も加えた政策志向的分析を行う。以上の分析結果を総括し、わが国において潜在的に需要可能で出生促進的効果をもつ少子化対策の選択肢を比較検討しながら提示することを目指す。なお、初年度は国内における文献・理論研究と専門家からのヒアリングを行って出生力変動の分析枠組みを設定し、マクロデータを収集するとともに、形式人口学的分析枠組みに基づいて韓国と日本(およびヨーロッパ)に関する若干の予備的比較分析を行うとともに、韓国、シンガポール、香港で現地調査を実施した。また、推進費で韓国とシンガポールの専門家を招聘し、少子化と少子化対策に関するワークショップを開催し、韓国・台湾・香港における少子化の動向に関する調査の委託に伴って来訪した専門家によるワークショップも開催した。
結果と考察
日韓の形式人口学的比較研究から以下の知見が得られた。①日韓の出生力は置換水準までは急激に低下したが、置換水準到達後の低下速度はヨーロッパ諸国より遅い。②韓国の晩産化は日本より急速に進行している。③韓国の出生年齢分散は、1990年以降はほぼ一定で推移している。④日韓のコーホート出
生力は急速に接近しているが、1960年前半出生コーホートではまだ韓国の方がわずかに高い。⑤韓国の有配偶完結出生力は1990年代末に日本と同水準まで低下した。⑥韓国は日本より早婚・皆婚だが、晩産化は日本より急速に進んでいる。⑦韓国の普通離婚率は急激に上昇し、1997年以降は日本を上回っている。⑧韓国の同棲割合・婚外出生割合は日本以下と推定されるが、明確なデータは得られなかった。⑨韓国の中絶頻度は日本の2倍以上と推定されるが、明確なデータは得られなかった。また、ワークショップ、ヒアリング、現地調査から各国の出生率の動向、変動要因、政策的対応に関する最新の情報が明らかになったが、それをまとめることにより、以下のような結論が得られた。
結論
アジアNIES諸国と日本は急激な少子化と非常に低水準の出生率を経験しているという点で共通するし、その近接要因として晩婚化やその背景要因としての高学歴化や女性の労働力参加率上昇があることでも共通しているが、少子化対策については各国の国情を反映して異なる対応がみられる。そこで、各国の少子化の動向と少子化対策について継続的にモニターして行く必要があることが明らかになった。また、多くの国は1997年の金融危機に伴う雇用情勢の悪化の影響もあって近年、急速な少子化が進んでおり、わが国でもその影響をおよびバブル崩壊に伴う雇用情勢悪化の影響を再評価する必要があろう。

公開日・更新日

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