文献情報
文献番号
201923001A
報告書区分
総括
研究課題名
臨海コンビナート設備のねじ接合部の腐食減肉に関する供用適性評価技術の開発
課題番号
H29-労働-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
辻 裕一(東京電機大学 工学部)
研究分担者(所属機関)
- 齋藤 博之(東京電機大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,202,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
臨海コンビナートのプラントでの腐食減肉では、フランジ継手等に使用されるねじ部品の減肉が現実に発生しているにも拘わらず、定量的評価は行われていない。フランジ継手の締結状態は漏洩に直接影響するが、ねじ部品の減肉に関する合否判定基準が国内のみならず海外にも無い。ねじ部品の減肉は、デッキ、プラットホーム、サポートなどの屋外鋼構造物にも多く見られる。ねじ部品の破壊は直ちに重大な事故・災害に結びつく。
本研究では、コンビナートにおけるねじ部品の減肉に着目し、減肉の実態の把握、減肉速度の予測モデル、減肉の許容基準・余寿命評価方法の開発を行う。成果を踏まえ、ねじ締結部の供用適性評価を行える減肉評価ガイドライン作成を最終目標とする。最終年度である本年度は、減肉速度の予測モデルの構築及び3D計測技術による検査結果に基づく供用適性評価を試行し、減肉評価ガイドラインの骨格となる検査から供用適性評価までの一連の工程の妥当性を検証する。
本研究では、コンビナートにおけるねじ部品の減肉に着目し、減肉の実態の把握、減肉速度の予測モデル、減肉の許容基準・余寿命評価方法の開発を行う。成果を踏まえ、ねじ締結部の供用適性評価を行える減肉評価ガイドライン作成を最終目標とする。最終年度である本年度は、減肉速度の予測モデルの構築及び3D計測技術による検査結果に基づく供用適性評価を試行し、減肉評価ガイドラインの骨格となる検査から供用適性評価までの一連の工程の妥当性を検証する。
研究方法
減肉速度の予測モデルの構築については、試料の局所的な腐食特性を測定できる走査型電気化学顕微鏡(SECM)に白金電極微小プローブ電極を取り付け用いる。ボルト・ナット締結体を3% NaCl水溶液に浸漬し、ボルトとナットの上端面での電流分布、ならびにエレクトロメータ法によって自然電位を測定した。試験用ボルト・ナット締結体として、炭素鋼ねじと炭素鋼被締結体、ステンレス鋼ねじとステンレス鋼被締結体、炭素鋼ねじとステンレス鋼被締結体の組合せという3種類を用意した。
3D計測技術の検査への適用では、3次元サーフェイス立体画像DEM作成ソフトウェア (Mex 6.1) を用い、ねじ部品減肉計測を支援する画像処理手法を検討し、減肉ナットの断面プロファイル、残存体積の非接触計測を目指した。
供用適性評価手法の妥当性については、昨年度、現地調査を行った鹿島地区の冷却塔ボトム配管のフランジ継手の減肉ボルト・ナットをサンプルとして減肉評価を試行、検証した。評価には、実際の形状に近い円錐台状減肉の減肉許容基準を適用する。
3D計測技術の検査への適用では、3次元サーフェイス立体画像DEM作成ソフトウェア (Mex 6.1) を用い、ねじ部品減肉計測を支援する画像処理手法を検討し、減肉ナットの断面プロファイル、残存体積の非接触計測を目指した。
供用適性評価手法の妥当性については、昨年度、現地調査を行った鹿島地区の冷却塔ボトム配管のフランジ継手の減肉ボルト・ナットをサンプルとして減肉評価を試行、検証した。評価には、実際の形状に近い円錐台状減肉の減肉許容基準を適用する。
結果と考察
1:減肉速度の予測モデルの構築
腐食電流密度から腐食速度を求めたところ、海水中の炭素鋼の定常腐食速度0.1mm/yに対して、ねじ部品の腐食速度は異種金属で3.0倍、炭素鋼同士で2.6倍と大幅に増加することを明らかにした。海岸または工業地帯での炭素鋼の腐食速度は、飛来海塩粒子量に依存し、ばらつきはあるものの0.1 mm/y以下とされていることから、臨海コンビナートにおけるねじ部品の減肉速度は、炭素鋼同士の組合せの締結体において0.26 mm/y、異種金属で構成される締結体において0.3 mm/yを見込めばよい。
2:3D計測技術の検査への適用
体積比という1つの特徴量によって容易に定量的な合否判定を行うことができる。様々な減肉形状が想定される実際のねじ部品に対し、ナットの高さ、幅などの多数のパラメータを利用するより、実用性に優れる。
3:供用適性評価手法の妥当性の検証
減肉許容基準、減肉の予測モデル、及び3D計測技術による検査結果に基づく供用適性評価を実施することによって、ねじ部品の減肉評価ガイドラインの骨格となる検査から評価までの一連の工程の妥当性を検証できた。ナットの減肉速度から余寿命評価も原理的に可能である。
昨年度の実態調査対象について、TDAによる水素分析を定期的に実施し、経過時間が短いにも拘わらず非拡散性水素量が増加しているねじ部品を確認した。今後も、追跡調査を継続する。
腐食電流密度から腐食速度を求めたところ、海水中の炭素鋼の定常腐食速度0.1mm/yに対して、ねじ部品の腐食速度は異種金属で3.0倍、炭素鋼同士で2.6倍と大幅に増加することを明らかにした。海岸または工業地帯での炭素鋼の腐食速度は、飛来海塩粒子量に依存し、ばらつきはあるものの0.1 mm/y以下とされていることから、臨海コンビナートにおけるねじ部品の減肉速度は、炭素鋼同士の組合せの締結体において0.26 mm/y、異種金属で構成される締結体において0.3 mm/yを見込めばよい。
2:3D計測技術の検査への適用
体積比という1つの特徴量によって容易に定量的な合否判定を行うことができる。様々な減肉形状が想定される実際のねじ部品に対し、ナットの高さ、幅などの多数のパラメータを利用するより、実用性に優れる。
3:供用適性評価手法の妥当性の検証
減肉許容基準、減肉の予測モデル、及び3D計測技術による検査結果に基づく供用適性評価を実施することによって、ねじ部品の減肉評価ガイドラインの骨格となる検査から評価までの一連の工程の妥当性を検証できた。ナットの減肉速度から余寿命評価も原理的に可能である。
昨年度の実態調査対象について、TDAによる水素分析を定期的に実施し、経過時間が短いにも拘わらず非拡散性水素量が増加しているねじ部品を確認した。今後も、追跡調査を継続する。
結論
令和元年度の研究により、以下の結論を得た。
減肉の予測モデルの構築では、炭素鋼製ボルト・ナットとステンレス鋼製被締結体の組合せの場合、異種金属接触腐食が起き、自然電位が低下し、腐食電流密度が高い。臨海コンビナートにおけるねじ部品の減肉速度は、炭素鋼同士の組合せの締結体において0.26 mm/y、異種金属で構成される締結体において0.3 mm/yを見込めばよい。
3D計測技術の検査への適用では、ナット及びボルト頭部の減肉に対して、ステレオ写真から画像処理により3Dデータに変換する手法を確立した。減肉ナットの外形プロファイル、残存体積等を非接触で計測できる。
供用適性評価手法の妥当性の検証については、現地調査で入手した減肉ボルト・ナットをサンプルとして3D計測技術を適用、サンプルの残存体積を計測し、円錐台状減肉の減肉許容基準と比較して合否判定を実施することができた。減肉速度から余寿命または検査周期を決めることも原理的に可能である。
以上より、ねじ部品の減肉評価ガイドラインの骨格となる検査から評価までの一連の工程の妥当性を検証した。
減肉の予測モデルの構築では、炭素鋼製ボルト・ナットとステンレス鋼製被締結体の組合せの場合、異種金属接触腐食が起き、自然電位が低下し、腐食電流密度が高い。臨海コンビナートにおけるねじ部品の減肉速度は、炭素鋼同士の組合せの締結体において0.26 mm/y、異種金属で構成される締結体において0.3 mm/yを見込めばよい。
3D計測技術の検査への適用では、ナット及びボルト頭部の減肉に対して、ステレオ写真から画像処理により3Dデータに変換する手法を確立した。減肉ナットの外形プロファイル、残存体積等を非接触で計測できる。
供用適性評価手法の妥当性の検証については、現地調査で入手した減肉ボルト・ナットをサンプルとして3D計測技術を適用、サンプルの残存体積を計測し、円錐台状減肉の減肉許容基準と比較して合否判定を実施することができた。減肉速度から余寿命または検査周期を決めることも原理的に可能である。
以上より、ねじ部品の減肉評価ガイドラインの骨格となる検査から評価までの一連の工程の妥当性を検証した。
公開日・更新日
公開日
2020-11-19
更新日
-