HIV検査と医療へのアクセス向上に資する多言語対応モデルの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201920021A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査と医療へのアクセス向上に資する多言語対応モデルの構築に関する研究
課題番号
19HB1002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
北島 勉(杏林大学 総合政策学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(神奈川県勤労者医療生活協同組合港町診療所)
  • 宮首 弘子(杏林大学 外国語学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,625,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国の外国人男性のHIV陽性報告数は増加傾向にあり、男性同性間の性的接触による感染が多数を占めつつある。また、日本語や英語で十分なコミュニケーションをとれない外国人の受診が遅れることも明らかになっている。今後、従来の留学生や技能実習生の他に、2019年4月からは特定技能一号といった在留資格で就労する若者が増加することが予想される。そこで、本研究では、HIV検査受検促進や陽性者への医療関連サービスへのアクセスの改善をめざし、自治体との連携モデルを構築することを目的とする。
研究方法
本研究では、以下の研究活動を実施した:(1)エイズ診療拠点病院における多言語対応の状況に関する調査、(2)ベトナムとネパールから技能実習生・日本語学校留学生として来日予定者を対象としたHIVに関する知識や主観的感染リスクに関する調査、(3)中国人とベトナム人の技能実習生を対象とした保健行動やHIV検査へのアクセスに関する調査、(4)HIV検査機関における多言語対応可能なアプリの試用調査、(5)HIV及び結核の検査・治療に活用できる医療通訳の育成研修の効果に関する調査、(6)高所得国における移民を対象としたHIV対策に関する文献調査。
結果と考察
(1)調査実施時期が新型コロナウイルスの感染拡大と重なってしまったため、回収率が4割程度ではあったが、2013年に実施した同様の調査と比較して、東アジア出身のHIV陽性者の割合が高くなっていること、日本語や英語が不自由な外国人の受け入れは困難な場合が多いこと、言語の支援へのニーズが高いことがわかった。(2)ベトナム人142人とネパール人150人から協力を得られた。それぞれ30人(21.3%)、11人(7.3%)にHIV検査受検経験があった。来日後、彼らの健康状態、保健行動、HIV検査へのアクセスの変化とその関連要因について追跡調査を行う予定である。(3)中国人技能実習生は全員女性であり、平均滞在期間は22.6ヶ月間であった。HIV検査へのニーズは低かった。HIV感染予防のための情報提供のあり方を検討する必要がある。(4)概ね高い評価を得られた。特にスマートフォンでも利用できる点が高評価であった。(5)東京と大阪で実施し、9言語55人の参加があった。また、英語、中国、フィリピン、ベトナム語のロールプレイ研修を行った。(6)移民の言語や文化に配慮した情報提供が重要であり、移民先の保健医療従事者との関係を築くことや、移民のHIV検査や医療に関するガイドラインを策定しておくことが、保健医療サービス提供者と利用者双方にとって有益であることがわかった。
結論
2013年の調査と比較して、国内の外国人HIV陽性者における東アジア・東南アジア出身者が占める割合が高くなっていたことがわかった。HIV検査や医療へのアクセスを向上するには、それらの言語による情報や支援が提供されることが重要である。今年度はHIVと結核に関する医療通訳研修を東京と大阪で実施することができた。HIV検査に関する多言語対応アプリについては、スマートフォンでも利用できるようになり、利便性と操作性が向上したと思われる。現在にいる技能実習生や今後来日する技能実習生や日本語学校の留学生のHIVに関する知識や意識、HIV検査へのアクセスの状況や関連要因の調査からの知見を反映させつつ、HIV検査と医療の多言語対応モデルの構築を行って行きたい。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2023-07-12

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201920021Z