中枢性摂食異常症および中枢神経感作病態を呈する疾患群の脳科学的な病態解明と、エビデンスに基づく患者ケア法の開発

文献情報

文献番号
201911052A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢性摂食異常症および中枢神経感作病態を呈する疾患群の脳科学的な病態解明と、エビデンスに基づく患者ケア法の開発
課題番号
H29-難治等(難)-一般-059
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
関口 敦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 行動医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 哲也(国立精神・神経医療研究センター・精神保健研究所 行動医学研究部)
  • 福土 審(東北大学・大学院医学系研究科)
  • 中里 道子(千葉大学・大学院医学研究院)
  • 吉内 一浩(東京大学・医学部附属病院)
  • 菊地 裕絵(国立国際医療研究センター病院 心療内科)
  • 河合 啓介(国立国際医療研究センター国府台病院)
  • 須藤 信行(九州大学・大学院医学研究院)
  • 兒玉 直樹(産業医科大学・神経内科)
  • 丸尾 和司(筑波大学・医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,424,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、中枢性摂食異常症および中枢神経感作異常をきたす疾患群に対して、脳科学的に治療構造を解明し、エビデンスに基づく患者ケア法を開発することである。
具体的には、摂食障害および心身症に対して、疾患横断的な脳画像レジストリを構築する。更に、これら疾患に対して、海外で有効性が実証されている治療プログラムを実施し、臨床症状の改善の背景に存在する、疾患特異的な刺激に対する非特異的な中枢神経系の過剰反応及び減感作の修正を実証する。
研究方法
本研究課題では、以下の4つの研究課題を多施設共同研究として実施する。
①摂食障害の治療プログラムの効果検証
神経性過食症を対象に、中枢神経感作病態としての食や体型に対する過剰反応を、定期的な食事習慣の導入により減感作していく治療構造を持つ心理療法である、CBT-E(Enhanced Cognitive Behavioral Therapy)の効果検証のためにランダム化比較試験(RCT)を実施する。
②心身症の治療プログラムの効果検証
代表的な心身症である過敏性腸症候群(IBS)を対象に、中枢神経感作病態としての内受容感覚に対する過剰反応を、内受容感覚曝露により減感作していくという治療構造を持つ心理療法である、内受容感覚曝露療法(CBT-IE: Interoceptive Exposure Cognitive Behavioral Therapy)の効果検証のためにRCTを実施する。
 上記2研究課題に共通する項目として、CBT-E/IEを普及させるために、実施者の教育・研修システムの確立が必要であり、わが国で実施可能な方法を検証する。
③疾患横断的脳画像レジストリ研究
摂食障害患者と、心身症患者の疾患横断的な脳画像レジストリを構築する。脳MR画像は、3テスラMRI装置が利用できる各施設において撮像を行なう。同時に質問紙や認知課題での心理評価・症状評価を行なう。特に、中枢神経感作病態の指標として、内受容感覚尺度を評価する。中枢神経感作病態の指標に特異的な脳構造・脳機能変化を重回帰分析により抽出し、中枢神経感作病態の神経基盤を明らかにする。
④脳画像データ統合による解析研究
各施設で収集した脳画像データカタログを作成し、主幹施設に主なデータを集約し解析パイプラインを構築し1次解析を実施し、分担施設で2次解析を実施し、中枢感作病態の脳内基盤を検証する。
結果と考察
研究①②に関しては、昨年度確定した研究プロトコールを更にブラッシュアップし、プロトコール論文の出版へも結び付け、介入が開始できた。
研究③において、各施設での摂食障害患者および健常対照群の脳画像検査を継続した。令和元年度末までの各施設における総数は、摂食障害患者のベースライン90例、フォローアップ38例、健常群ベースライン120例、フォローアップ45例の脳MR画像および心理検査データが収集できた。IBS患者に関しては、従来通り治療前後の縦断研究を継続し、NCNPにおいて13例の患者群を対象としてMRI検査を実施しており、5例の治療介入前の検査を実施済みである。中枢神経感作病態の解明には、CBT-E/IE単群における治療反応性個人差をターゲットとした解析により実現可能と考えており、ランダム化比較試験の目標症例数の収集に先行して解析を行うことで、本研究事業における当初の目的を達成できると見込んでいる。
研究④として、多施設のデータを一元的に解析できる解析パイプラインを構築した。また、分担施設において摂食障害患者の縦断脳画像データを用いた予備的な解析を行った。左上側頭回、左下頭頂小葉、左中前頭回、左縁上回、左紡錘状回、右頭皮質、右眼窩前頭回で、健常者と比較してAN患者の皮質厚変化率が有意な増加を示した。これら領域の皮質厚増加は、治療介入の効果を反映している可能性があると考えている。また、IBS患者の予備的な脳画像解析において、IBSの重症度スコアと、内部感覚との関連が指摘されている右前島皮質の灰白質量との正相関が認められている。今後多施設データを集積して解析することにより、より信頼性の高い結果がもたらされるものと期待される。
結論
2件のランダム化比較試験では、目標症例数(各単群45例、70例の完遂)への道のりは遠く、中長期的な研究戦略の再構成が必要である。脳画像解析研究においては、現時点では少数例での検討ではあるが、有意差をもって摂食障害の病態と深く関わるとされる領域の障害を示唆される知見が得られており、縦断データの解析でも同様の傾向を認めている。今後さらに症例数を増やすことによってさらに有意義な結果がえられるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201911052B
報告書区分
総合
研究課題名
中枢性摂食異常症および中枢神経感作病態を呈する疾患群の脳科学的な病態解明と、エビデンスに基づく患者ケア法の開発
課題番号
H29-難治等(難)-一般-059
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
関口 敦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 行動医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 哲也(国立精神・神経医療研究センター・精神保健研究所 行動医学研究部)
  • 福土 審(東北大学・大学院医学系研究科)
  • 中里 道子(千葉大学・大学院医学研究院)
  • 吉内 一浩(東京大学・医学部附属病院)
  • 菊地 裕絵(国立国際医療研究センター病院 心療内科)
  • 河合 啓介(国立国際医療研究センター国府台病院)
  • 須藤 信行(九州大学・大学院医学研究院)
  • 兒玉 直樹(産業医科大学・神経内科)
  • 丸尾 和司(筑波大学・医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、中枢性摂食異常症および中枢神経感作異常をきたす疾患群に対して、脳科学的に治療構造を解明し、エビデンスに基づく患者ケア法を開発することである。
具体的には、摂食障害および心身症に対して、疾患横断的な脳画像レジストリを構築する。更に、これら疾患に対して、海外で有効性が実証されている治療プログラムを実施し、臨床症状の改善の背景に存在する、疾患特異的な刺激に対する非特異的な中枢神経系の過剰反応及び減感作の修正を実証する。
研究方法
本研究課題では、以下の4つの研究課題を多施設共同研究として実施する。
①摂食障害の治療プログラムの効果検証
神経性過食症を対象に、中枢神経感作病態としての食や体型に対する過剰反応を、定期的な食事習慣の導入により減感作していく治療構造を持つ心理療法である、CBT-Eの効果検証のためにランダム化比較試験(RCT)を実施する。
②心身症の治療プログラムの効果検証
代表的な心身症である過敏性腸症候群(IBS)を対象に、中枢神経感作病態としての内受容感覚に対する過剰反応を、内受容感覚曝露により減感作していくという治療構造を持つ心理療法である、内受容感覚曝露療法(CBT-IE)の効果検証のためにRCTを実施する。
 上記2研究課題に共通する項目として、CBT-E/IEを普及させるために、実施者の教育・研修システムの確立が必要であり、わが国で実施可能な方法を検証する。
③疾患横断的脳画像レジストリ研究
摂食障害患者と、心身症患者の疾患横断的な脳画像レジストリを構築する。脳MR画像は、3テスラMRI装置が利用できる各施設において撮像を行なう。同時に質問紙や認知課題での心理評価・症状評価を行なう。特に、中枢神経感作病態の指標として、内受容感覚尺度を評価する。中枢神経感作病態の指標に特異的な脳構造・脳機能変化を重回帰分析により抽出し、中枢神経感作病態の神経基盤を明らかにする。
④脳画像データ統合による解析研究
各施設で収集した脳画像データカタログを作成し、主幹施設に主なデータを集約し解析パイプラインを構築し1次解析を実施し、分担施設で2次解析を実施し、中枢感作病態の脳内基盤を検証する。
結果と考察
研究①②に関しては、昨年度確定した研究プロトコールを更にブラッシュアップし、プロトコール論文の出版へも結び付け、介入が開始できた。
研究③において、各施設での摂食障害患者および健常対照群の脳画像検査を継続した。令和元年度末までの各施設における総数は、摂食障害患者のべ128例、、健常群のべ165例の脳MR画像および心理検査データが収集できた。IBS患者に関しては、従来通り治療前後の縦断研究を継続し、NCNPにおいて13例の患者群を対象としてMRI検査を実施しており、5例の治療介入前の検査を実施済みである。中枢神経感作病態の解明には、CBT-E/IE単群における治療反応性個人差をターゲットとした解析により実現可能と考えており、ランダム化比較試験の目標症例数の収集に先行して解析を行うことで、本研究事業における当初の目的を達成できると見込んでいる。
研究④として、多施設のデータを一元的に解析できる解析パイプラインとして、T1強調画像および安静時脳活動の解析プログラムを構築した。脳画像解析の結果、摂食障害患者において、患者の脳局所皮質厚が有意に低下しており、楔前部の皮質厚と自尊感情との関連性に交互作用が認められた。また、機械学習アルゴリズムを利用した解析を行い、両側下前頭回三角部などの領域が、摂食障害群を予測する部位として検出された。縦断データの予備的な解析も行い、左上側頭回などの領域で、AN患者の皮質厚変化率が有意な増加を示し、治療介入の効果を反映している可能性があると考えている。今後、多施設データを集積して解析することにより、より信頼性の高い結果がもたらされるものと期待される。
IBS患者の予備的な脳画像解析において、IBSの重症度スコアと、内部感覚との関連が指摘されている右前島皮質の灰白質量との正相関が認められている。
結論
2件のランダム化比較試験では、目標症例数(各単群45例、70例の完遂)への道のりは遠く、中長期的な研究戦略の再構成が必要である。脳画像解析研究においては、現時点では少数例での検討ではあるが、有意差をもって摂食障害の病態と深く関わるとされる領域の障害を示唆される知見が得られており、縦断データの解析でも同様の傾向を認めている。今後さらに症例数を増やすことによってさらに有意義な結果がえられるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
その他
その他
その他

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201911052C

収支報告書

文献番号
201911052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
965,000円
(2)補助金確定額
963,900円
差引額 [(1)-(2)]
1,100円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,249,597円
人件費・謝金 3,132,827円
旅費 1,150,729円
その他 880,840円
間接経費 2,226,000円
合計 9,639,993円

備考

備考
993円は自己資金より充当した。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14