加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発

文献情報

文献番号
201909036A
報告書区分
総括
研究課題名
加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発
課題番号
H30-循環器等-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院 )
  • 中村 純(大阪府立大学 生命環境科学研究科)
  • 牛山 明(国立保健医療科学院)
  • 杉田 和俊(麻布大学 獣医学部)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加熱式たばこは,たばこ産業のパンフレットによると主流煙の有害化学物質の90-99%が削減と記載されている。加熱式たばこを使用者は、「有害化学物質の削減」が「健康影響の削減」と考えてしまうかもしれない。最近では、加熱式たばこが紙巻たばこよりも高い成分も報告されるようになった。本研究班は、世界で最も加熱式たばこが普及している我が国において、加熱式たばこの有害化学物質量の調査及び受動喫煙の評価法開発を目的としている。世界に先駆け,これらの新しいタイプの製造たばこに関する科学的な知見を創出していくことが,最も普及している日本に課せられた急務であり世界保健機関(WHO)からも期待されている。現在,政府内では改正健康増進法の施行に向けて、加熱式たばこの健康影響評価を進めている。本研究班は、その健康影響評価の一助になるための科学的根拠の積み上げも目的としている。
研究方法
今年度は、2019年に新たに販売された加熱式たばこ(IQOS3.0、Ploom TECH+、Ploom SとPULZE)に関して主流煙の各種有害化学物質の分析を行った。次に加熱式たばこの加熱温度による有害化学物質の発生を検証するためにIQOS互換機を使用した。高電力(最大220 W)タイプの電子たばこが販売されており、発生するエアロゾルは極めて多い。そこで高出力の電子たばこから発生する有害化学物質の分析も行った。さらに加熱式たばこから発生するフラン類及びピリジン類を対象に、フィルターと個体捕集法を組み合わせたガス状及び粒子状成分の同時捕集法を検討し、加熱式たばこの副流煙捕集及び分析法の検討を行った。加熱式および電子たばこのエアロゾルに含まれるアセトアルデヒド(AA)およびホルムアルデヒド(FA)の健康におよぼす影響についての懸念が広がっている。この種のアルデヒドは炎症性のあるハイブリッド型の蛋白付加体を産生する可能性があるが、その構造については不明な点が多い。今回、吸入暴露により呼吸器毒性が報告されているα-ジケトン化合物であるメチルグリオキサール(MGO)についてもハイブリッド型(M2MGO)リジン付加体が産生確認を行った。
結果と考察
2019年に新たに販売された加熱式たばこ(IQOS3.0、Ploom TECH+、Ploom SとPULZE)のエアロゾル中ニコチン量は1.13-1.43 mg/stick(IQOS)、0.17-0.28 mg/stick(Ploom TECH+)、0.35-0.54 mg/stick(Ploom S)と0.52-0.70 mg/stick(PULZE)となり、ニチコン量の差は8倍程度あった。次にIQOS互換機の中には400℃で加熱する製品も存在し、それらの製品では紙巻たばこの有害化学物質量近い結果が得られた。また、高電力(最大220 W)タイプの電子たばこが販売されており、ユーザーは簡単に200 W以上に設定できる。200 Wに設定すると、発がん性物質としてホルムアルデヒドが紙巻たばこの380倍、1、3-ブタジエンが11倍と高濃度を示した。電子たばこのユーザーは電力の設定に留意すべきである。さらに加熱式たばこから発生するフラン類及びピリジン類を対象に、ガス状及び粒子状成分の同時捕集法を検討し、各加熱式たばこからの発生量と曝露量を明らかにし、健康影響や室内汚染への影響を調べる上での基礎データを取得した。加熱式たばこの副流煙捕集箇所は、紙巻たばこ用喫煙装置と同様にフィッシュテール、Cambridge filter pad (CFP)、XAD4カートリッジ、インピンジャーの4箇所で行った。粒子成分は、フィッシュテールとCFPで捕集し、ガス成分はXAD4カートリッジとインピンジャーで捕集した。IQOSの副流煙ニコチン量は26.7-27.4 μg/stickとなり、glo proは2.79-2.99 μg/stickであった。本研究結果から、加熱式および電子たばこのエアロゾルに含まれるアセトアルデヒド(AA)およびホルムアルデヒド(FA)の健康におよぼす影響について、吸入暴露により呼吸器毒性が報告されているα-ジケトン化合物であるメチルグリオキサール(MGO)についてもハイブリッド型(M2MGO)リジン付加体が産生されることが明らかになった。
結論
2019年に販売開始された加熱式たばこのエアロゾルに含まれる有害化学物質の成分数は、紙巻たばこ製品と比較して減少はしていなかった。今後も金属類、芳香族アミン類の分析結果を組み合わせて加熱式たばこのリスク評価を進めていく。また、電子たばこについても高出力の製品に注目し、評価を進める計画である。最後に加熱式たばこの副流煙の分析法を確立し、成分の調査を進めることで、改正健康増進法の付帯決議に求めらる調査の一部を提供していく。

公開日・更新日

公開日
2020-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
35,000,000円
(2)補助金確定額
34,987,000円
差引額 [(1)-(2)]
13,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 24,449,104円
人件費・謝金 6,154,488円
旅費 1,714,463円
その他 2,669,239円
間接経費 0円
合計 34,987,294円

備考

備考
自己資金294円

公開日・更新日

公開日
2021-02-10
更新日
-