健康診査・保健指導における健診項目等の必要性、妥当性の検証、及び地域における健診実施体制の検討のための研究

文献情報

文献番号
201909024A
報告書区分
総括
研究課題名
健康診査・保健指導における健診項目等の必要性、妥当性の検証、及び地域における健診実施体制の検討のための研究
課題番号
19FA1008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 津下 一代((公財)愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 医学部 )
  • 宮本 恵宏 (国立循環器病研究センター 予防健診部 )
  • 小池 創一(自治医科大学・地域医療学センター)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 保健センター)
  • 荒木田 美香子(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部看護学科)
  • 由田 克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
16,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、脳・心血管疾患等の発症リスクを軽減させるための予防介入のあり方を最新のエビデンスを踏まえて検討し、今後の包括的な健診・保健指導の制度を提案する。健診項目等の検討は、予防介入が可能であることを前提とし、期待される循環器疾患や糖尿病の相対リスクや絶対リスクの減少も考慮した、健診項目、対象者の範囲、保健指導の内容などを検討する。本研究は文献レビューと実際のコホート研究における調査と解析によって個々の健診項目のエビデンスの評価を行う。まず先行研究(H25-27年度厚生科研)をベンチマークとして、その未達成課題を割り出し、さらに発展的な健診の提言を行う。さらに本研究で提案された健診・保健指導の制度の施策実行性を判断するために、保険者や健診機関等からも協力を得て、保健事業の円滑な実施方策についても検討する。

研究方法
3年間をかけて以下の研究を実施する予定である。1)主要国の診療ガイドラインにおける基幹項目(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙)の取り扱いを精査する。2)基幹項目以外の健診項目は既存のもの新規候補に分けてその有用性(アウトカムの発症予測に着目)について文献レビューを行う。
3)2)の項目については実際にコホート研究(計2万人程度の追跡調査)において有用性の実地検証を行う。4)保健指導の有用性を文献レビューで評価する。5)保健指導の階層化の基準を変更した場合の対象者数の変化について数十万人のデータを用いてシュミュレーションを行う。6)産業保健において特定健診・特定保健指導に避ける業務比率を推計する。7)現行の健診制度の法的根拠を法律、政令、省令の見地から検証する。8)健診・保健指導の費用対効果分析の実施。以上の課題を各分野の専門家を中心として順次進める。
結果と考察
本年度(令和2年度)は、以下のような成果が得られた。基幹健診項目については有用性が明らかとなったが、それ以外の既存の健診項目についてはASTや貧血検査(ヘモグロビン)のように高齢者医療確保法の意義づけから見て不明確な項目もあった。新規候補である上下肢血圧比、頸動脈超音波所見、脈波伝道速度、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、基幹項目を調整しても脳・心血管疾患の発症を予測することが示されたが、運用上は、既存の心電図や眼底検査と同様に、最も予測能を高める適切な対象者の選定が重要と考えられた。また階層化の基準を変えてどの程度各支援レベルの割合が変動するかを検証したが、例えば高血圧の基準を最新のガイドラインに合わせた場合、積極的支援レベルの増加が大きいことが示された。一方、産業医の業務の性質上、特定健診・特定保健指導の業務は増やしにくいこと、現行の法律では脳・心血管疾患の予防という観点から、健診業務の規定があちこちに分散して一本化されていないことが示された。特定健診・特定保健指導の費用対効果についてモデル作成など予備的検討を実施した。
結論
本研究では、健診制度の終局的な予防目標を脳・心血管疾患や腎不全に置いた場合、どのような危険因子のスクリーニングを、どのように実施するのが最適化なのを明らかにする。これにより生活習慣疾予防を目的としたスクリーニングおよび早期の予防介入の考え方が整理され、具体方策が提示される。これは保健事業を運営する保険者および事業主・自治体などのステークホルダが資源配分の最適化を検討することにも寄与できる。また健診や保健指導の社会全体へのインパクトを明確にするためには、がん検診のような個々の健診項目の費用対効果だけでなく、健診・保健指導制度自体の費用対効果の検証も必要である。本研究により、全国民を対象とした持続可能な健診制度のあり方を提示できる。

公開日・更新日

公開日
2020-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909024Z