文献情報
文献番号
201823013A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の食中毒細菌の制御法の確立のための研究
課題番号
H30-食品-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
- 大岡 唯祐(国立大学法人 鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
- 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
14,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新たな食中毒細菌(流行株などを含む)が流行し、定着する場合があるが、流行前に対策をとり制御することが重要である。近年、国内外でEscherichia albertiiの病原性、特に下痢原性が周知され、海外では食中毒発生リスクが懸念されているが、既に日本では2003年以降に食中毒が発生し、患者数200人以上の事例も報告されている。また、Arcobacter属菌は胃腸炎患者の便からしばしば分離されており、食中毒との関連性が示唆されている。特に、Arcobacter butzleriは、食中毒原因菌としての可能性が示唆されている。これら2菌種に着目し、食品中の食中毒細菌の制御法の確立のための研究を行うこととした。
研究方法
(1)E. albertiiの制御法の確立では、まず、腸管出血性大腸菌の食品検査法との共通性を考慮した培養法およびE. albertii特異的nested PCR法を鶏肉を検体として検討した。また、鶏肉(内臓肉も含む)、その他多様な食品や環境検体での汚染状況を調査した。さらに、最確数(MPN)法による定量検出をE. albertii接種鶏肉を供試して検討した。(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、全ゲノム情報を基にしたE. albertiiに保存されている遺伝子群を網羅的探索した。また、病原性・代謝系に関する機能解析のための候補遺伝子の破壊株を作製した。さらに、配列保存性の高い診断疫学マーカー候補遺伝子の抽出を行った。(3)A. butzleriの制御法の確立では、継代培地および分離培地の検討、マルチプレックスPCRの検討、MPN法の確立を行った。
結果と考察
(1)E. albertiiの制御法の確立では、腸管出血性大腸菌の試験法と同じ増菌培養法が有用であり、乳糖・ラムノース・キシロース非分解性の性質を利用した寒天培地が有用であることが明らかになった。また、Nested PCR法の検出感度は優れることが示された。汚染実態調査では鶏肉(陽性率2%)および内臓肉(陽性率18%)でPCRが陽性であり、一部検体から分離されたことから鶏が保菌する可能性が示された。PCR結果でのMPN値は接種菌数の1.0および2.3倍であり、菌数の差は10倍(1桁)以内であったことから、定量測定が可能であると考えられた。(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、E. albertii 株に対する遺伝子レパートリー解析から、本菌特異的な遺伝子群が55遺伝子同定された。また、診断疫学マーカー候補遺伝子については、E. albertiiに共通であり、かつ、配列保存性が極めて高い遺伝子が9個同定された。(3)A. butzleriの制御法の確立では、Arcobacter属菌に対する優れた選択剤として5-フルオロウラシルなどが判明した。マルチプレックスPCR(A. butzleri、A. cryaerophilusおよび A. skirrowiiを対象)は、増菌培養液1 mL中に100~200 cfuの菌が存在すれば検出できるため、増菌培養後の検出には十分な検出感度を有していると思われた。MPN法による定量法については、さらに検討が必要であると考えられた。
結論
(1)E. albertiiの制御法の確立では、食品での検査法に有用な培養法・nested PCR法、鶏肉(内臓肉を含む)での汚染、菌数定量法が明らかになった。また、(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、E. albertiiに保存されている遺伝子群を網羅的探索、配列保存性の高い診断疫学マーカー候補遺伝子が同定された。(3)A. butzleriの制御法の確立では、優れた分離培地、高感度なマルチプレックスPCR、菌数定量法が明らかになった。今後さらに、E. albertii およびA. butzleriの制御のために必要な食品での検査法確立を行い、重要な汚染食品群の解明、食品中での制御法確立、食中毒発生時の原因食品探索および感染菌量の解明につなげる研究を進める。
公開日・更新日
公開日
2020-01-09
更新日
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