難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
201811048A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-038
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
滝川 一(帝京大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋爪 誠(九州大学 先端医療イノベーションセンター)
  • 田妻 進(広島大学 総合内科・総合診療科)
  • 仁尾 正記(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 消化器外科講座)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学 学術研究院医歯学域医学系)
  • 持田 智(埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部消化器内科学講座)
  • 田中 篤(帝京大学 医学部内科学講座)
  • 原田 憲一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 長谷川 潔(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
12,185,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝・胆道系の自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、門脈血行異常症、肝内結石、劇症肝炎について以下の研究を行う。(1)AIH、PBC、PSCの全国疫学調査を行い各疾患の国内患者総数を把握する。(2)各疾患の全国調査を行うことにより国内の最新の実態を把握する。(3)これらの研究成果を既に作成済みの診療ガイドライン改訂に反映させる。(4)研究結果を広く医師・一般に周知し、難治性の肝・胆道疾患の理解や予後の改善に寄与する。
研究方法
(1)全国疫学調査は難治性疾患政策研究班・疫学班作成の「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル(第3版)」に基づき、前回調査と同様に層化無作為抽出法で疫学調査を行った。(2)AIHは成人及び小児の全国実態調査を実施した。急性肝炎期AIH診断指針の作成及び病理評価、重症度判定基準の再評価、重症AIHの治療指針の作成、QOL調査を行った。(3)PBCも全国調査の準備を進めた。軽症PBC患者における皮膚掻痒感と健康関連QOLの検討や高齢患者、移植例などについて各種後ろ向き・前向き調査研究を行った。(4)硬化性胆管炎は全国調査の継続準備をし従来の全国調査の結果を基に既報の診断基準の改訂、及び診療指針を作成した。肝移植例は後ろ向き調査を実施した。肝内結石症は疫学調査・実態調査を実施した。(5)門脈血行異常症は門脈血行異常症の定点モニタリング調査のEDC化を実施し、引き続き疫学調査を予定している。(6)2017年の急性肝不全及びACLF発症例を集計し、わが国の急性肝不全及びACLFの実態を明らかにした。(7)2016年作成の研究班ホームページを随時更新し上記の研究成果を周知する。一般への研究成果の周知のため質問をメールで受け付けるとともに、自治体の難病講演会へ講師を派遣する。
結果と考察
(1)全国疫学調査により全国患者総数はAIH 30,325例、PBC 37,045例、PSC 2,306例と推定された。人口10万人当たりの有病率はAIH 23.9、PBC 33.8、PSC 1.80であり、前回調査と比較し約2~3倍に増加していた。男女比はAIH 1:3.89(前回1:6.94)、PBC 1:4.26(前回1:7.06)、PSC 1:0.88(前回 1:1.36)で、男性患者の増加傾向が認められた。(2)成人及び小児AIHの全国実態調査では47施設、853例の調査票が回収され、前回調査と比べ女性の頻度が低下し、急性肝炎が11.7%から21.1%へと増加していた。急性肝炎期AIHは、臨床上の特徴として慢性のAIH例と比較してALTが高値、抗核抗体陰性、IgG基準値内の症例がみられ胆道系酵素が高い症例が多かった。なおアザチオプリンがAIHに保険収載となったことから、診療ガイドラインのアザチオプリンに関する記載を加筆・修正し、追補版として一部改訂を行なった。(3)PBCの全国調査では男性症例が年々漸増しており、長期予後は男性の方が不良であった。軽症PBCでもQOLが低下している症例が少なくないことが判明した。高齢で診断される症例は肝機能障害が軽度であった。重症化する以前のPBCであればベザフィブラートの併用は有意に予後を改善する可能性が示唆された。心血管関連の危険因子が無ければ高コレステロール血症の治療は不要である。(4)硬化性胆管炎は全国調査を継続してレジストリ作成を目指し、既報の診断基準の改訂と診療指針を策定し、論文により発表した。小児PSCに関する実態調査と診療指針の作成、肝移植の成績・後ろ向き調査および前向き調査を立案・遂行した。肝内結石症は疫学調査・実態調査、画像を主体とする診断基準・重症度分類および診療ガイドライン(改訂)作成を立案・遂行した。(5)門脈血行異常症の疫学研究は前回2015年度調査の解析が報告され、1999年,2005年,2015年の全国調査での主要症状、臨床所見、予後には著変がないことが報告された。定点モニタリング調査のEDC運用を開始した。(6)2017年に発症の急性肝不全およびLOHFの全国調査により、急性肝不全215例(非昏睡型122例,急性型55例,亜急性型38例)とLOHF 8例が登録された。2017年に発症のACLFの全国調査により確診67例、拡大診断基準80例、疑診39例、拡大疑診23例が登録された。(7)一般向け・医師向けのホームページを随時更新し研究成果の周知と質問をメールで受け付けた。各自治体の難病講演会へ6回講師を派遣し、研究成果の一般への周知と様々な疑問や質問に直接答える場を設けた。
結論
これらの研究により、本邦における難治性肝・胆道疾患の診療水準の向上、疾患の理解や予後の向上、医療経済への貢献を果たすことができた。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,840,000円
(2)補助金確定額
15,840,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,224,542円
人件費・謝金 2,057,663円
旅費 4,203,735円
その他 4,716,338円
間接経費 3,655,000円
合計 15,857,278円

備考

備考
補助金不足のため自己負担(17,278円)

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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