文献情報
文献番号
201726006A
報告書区分
総括
研究課題名
水道水質の評価及び管理に関する総合研究
課題番号
H28-健危-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
- 浅見 真理(国立保健医療科学院生活環境研究部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所寄生動物部)
- 春日 郁朗(東京大学大学院工学系研究科)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院工学研究科)
- 越後 信哉(国立保健医療科学院生活環境研究部)
- 小坂 浩司(京都大学大学院工学研究科)
- 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部)
- 高木 総吉(大阪健康安全基盤研究所衛生化学部生活環境課)
- 宮脇 崇(福岡県保健環境研究所・水質課環境分析化学)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所安全性予測評価部)
- 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所安全性予測評価部)
- 大野 浩一(国立環境研究所環境リスク・健康研究センター)
- 松下 拓(北海道大学大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
28,302,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
水源から浄水・給配水に至るまでに多種多様に存在する微量化学物質や病原生物等の水質リスクを明らかにし,適切に管理するための評価手法を検討する.
研究方法
微生物,化学物質・農薬,消毒副生成物,リスク評価管理,水質分析法の5課題群-研究分科会を構築し,研究分担者14名の他に47もの水道事業体や研究機関などから94名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
クリプトスポリジウム対策を目的に,粒子計と二段凝集法を用いたリアルタイムなろ過の制御を提案した.ウイルス濃縮法を確立し,大容量の水道水,河川水からトウガラシ微斑ウイルスの回収を可能とした.簡易水道から引き継いだ配水池内部の細菌汚染を明らかにし,従属栄養細菌数の活用と配水系の維持管理の重要性を改めて喚起した.
農薬関連としては,目標値が低いテフリルトリオンやイプフェンカルバゾンは検出指標値の高い値で検出され,ブロモブチド,ピロキロン,アミノメチルリン酸は浄水で検出最大濃度が1µg/Lを超えていた.給水栓からの初流水で評価値に近い濃度でニッケルが検出される場合があったが,500 mL以上の流水後は下回ることが示唆された.
全国21浄水場系統の水道水中のヨウ素系トリハロメタン濃度は0.01~0.39 µg/Lの範囲であった.ホルムアルデヒド前駆物質であるヘキサメチレンテトラミンは,事業所からの排水中に数百μg/L程度が検出される場合があった.臭気物質2-メトキシ-3,5-ジメチルピラジン(MDMP)について,試験者による臭気を検知する最小濃度の幾何平均値は0.3 ng/Lで,また,活性炭除去性は低いことが分かった.
有機リン系殺虫剤メチダチオン(DMTP)と塩素との反応によりDMTPオキソン体が生成し,ChE活性阻害性に大きく寄与しするが,それ体以外にもChE活性阻害性を有する物質が生成されていたと判断されたが,同定には至らなかった.TCEの現行の基準値(10 μg/L)では約20%の人が耐容一日摂取量を超える暴露量となる可能性が示唆され,やや低い6.5 μg/Lが望ましいことが分かった.水質管理項目及び要検討項目に記載されている有機化学物質を中心とした8物質の亜急性参照値を設定した.有機スズ化合物に関しては免疫毒性に対し類似作用機序を有すると考えられる4物質(トリブチルスズ,ジブチルスズ,トリフェニルスズ及びジ-n-オクチルスズ)に対してHBV(Health-based value:健康に基づいた値)を1.5 μg/Lとすることが妥当であると考えられた.
スクリーニング分析手法の構築に関しては,GC-MS分析データベースの対象物質の選定と物質の追加を行い,モニターイオン,相対保持時間および検量線について装置間差・機関差を評価した.また,GC-MSの装置性能を把握するため,評価用物質について調査した.170農薬の検量線データ及び既報の文献等から,GC-MS装置性能評価用の候補物質として計20種を選定した.
農薬関連としては,目標値が低いテフリルトリオンやイプフェンカルバゾンは検出指標値の高い値で検出され,ブロモブチド,ピロキロン,アミノメチルリン酸は浄水で検出最大濃度が1µg/Lを超えていた.給水栓からの初流水で評価値に近い濃度でニッケルが検出される場合があったが,500 mL以上の流水後は下回ることが示唆された.
全国21浄水場系統の水道水中のヨウ素系トリハロメタン濃度は0.01~0.39 µg/Lの範囲であった.ホルムアルデヒド前駆物質であるヘキサメチレンテトラミンは,事業所からの排水中に数百μg/L程度が検出される場合があった.臭気物質2-メトキシ-3,5-ジメチルピラジン(MDMP)について,試験者による臭気を検知する最小濃度の幾何平均値は0.3 ng/Lで,また,活性炭除去性は低いことが分かった.
有機リン系殺虫剤メチダチオン(DMTP)と塩素との反応によりDMTPオキソン体が生成し,ChE活性阻害性に大きく寄与しするが,それ体以外にもChE活性阻害性を有する物質が生成されていたと判断されたが,同定には至らなかった.TCEの現行の基準値(10 μg/L)では約20%の人が耐容一日摂取量を超える暴露量となる可能性が示唆され,やや低い6.5 μg/Lが望ましいことが分かった.水質管理項目及び要検討項目に記載されている有機化学物質を中心とした8物質の亜急性参照値を設定した.有機スズ化合物に関しては免疫毒性に対し類似作用機序を有すると考えられる4物質(トリブチルスズ,ジブチルスズ,トリフェニルスズ及びジ-n-オクチルスズ)に対してHBV(Health-based value:健康に基づいた値)を1.5 μg/Lとすることが妥当であると考えられた.
スクリーニング分析手法の構築に関しては,GC-MS分析データベースの対象物質の選定と物質の追加を行い,モニターイオン,相対保持時間および検量線について装置間差・機関差を評価した.また,GC-MSの装置性能を把握するため,評価用物質について調査した.170農薬の検量線データ及び既報の文献等から,GC-MS装置性能評価用の候補物質として計20種を選定した.
結論
農薬濃度や亜急性参照値など水道水質基準の基礎となる多数の知見が得られた.これらの成果は学術論文や学術集会で多数公表されるとともに,厚生労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会資料に資された.
公開日・更新日
公開日
2018-07-11
更新日
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