効果的な献血推進および献血教育方策に関する研究

文献情報

文献番号
201724024A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な献血推進および献血教育方策に関する研究
課題番号
H27-医薬A-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋田 定伯(福岡大学 医学部)
  • 井上 慎吾(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 早坂 勤(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 林 清孝(エフエム大阪音楽出版株式会社)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医歯薬保健学研究科)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 大川 聡子(大阪府立大学 地域保健学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国は、少子高齢化による人口動態、疾病構造の変化、臓器移植の推進などにより献血液の需要が一段と高まると予測される。他方、若者の献血離れが指摘され、将来の高まる需要に見合った献血の確保は極めて重要である。我々が行った将来推計でも需要に対する供給は大きく不足すると予測された。また、昨今、問題となったHIV感染事例を考えれば、安全な献血液の確保のための方策の強化も必要である。すなわち、需要に見合った安全な献血液の確保のために有効な献血推進策の実施が今後も必要と考えられる。本研究では限られた資源で有効な普及啓発方法を明らかにする。安全な血液については、ハイリスク層の実態を把握し有効な対策を提示する。若年層の献血液の確保のための献血教育についても検討を行う。さらに海外で我が国に実状が類似した国での献血推進策を調査し我が国の献血推進に役立てる。これらを目的に研究を実施する。
研究方法
 主に次の5研究を実施した。研究1. 献血本数の需要と供給の将来推計研究、研究2. 効果的普及啓発方法に関する研究、研究3. 献血教育研究、研究IV. 安全な献血に関する情報提供方法の研究、研究4. 海外の実態調査に関する研究を中心に取り組んだ。
結果と考察
研究結果
 1)献血本数の需要と供給の推計本数では、いずれのブロックにおいても 2015 年以降需要と供給の差が広まると推定された。2)大規模WEBアンケート調査結果から、献血行動の抑制因子と促進因子につき分析を行った。3)大学生を対象としたアンケート調査から、献血行動の抑制因子と促進因子につき分析を行った。4)インターネット調査から学校教育に踏み込んだ献血思想の普及が重要であることが示唆され、日本赤十字社の全国学生献血推進実行委員会が中心となった学生献血推進ボランティア活動の推進や、高校等での「献血セミナー」の実施の効果が期待されると考えられた。5)大阪で毎週土曜日にアーティスト出演によるライブを御堂筋献血ルーム「CROSS Cafe」で実施し、特に月に2回程度に「高校生の日」を増やし、大阪府の高校の軽音楽クラブのライブを実施し、10代のリアルな意識を発信し、献血への関心を拡げた。さらに動画配信も試みたが、流行廃りの周期が短かった。6)MSM 向けホームページで、ウェブ調査を同意の下実施し、有効回答 2286件を得た。献血の動機は、社会貢献が大半であり、集団献血が4.3%、HIV検査目的は生涯で4%であった。献血の制限項目は献血経験者の8割が知っていたが、知ったのは献血場所との回答が6割であった。7)海外についてはシンガポール赤十字社の状況を調査し、有益な情報を得た。
考察
 以前の研究から、献血推進プロジェクトLove in Actionは実施月で0.8%の増加をもたらしていたが、将来予測からは特に若年層を中心とした献血行動の推進が必要と考える。そのために、今回分析したインターネット全国調査の結果を十分検討し、献血推進施策の立案が重要である。献血推進には献血の認知率を高める必要性はあるが、献血行動を後押しする啓発、啓発資材の開発も有効である事を意味していると考えた。同調査から、献血に行って献血できなかった者が少なからずおり、MSW向けのアンケート調査結果と合わせ、献血者が献血前に献血の制限項目内容について、ある程度知っておけば効率良く献血できた可能性もあり、周知が必要と考えた。若年者に向けた献血推進方策として日本赤十字社の学生献血推進ボランティア組織の自主的活動と大学生への献血教育の推進は、献血セミナーの実施と共に若者の献血推進が期待できると考えられた。さらに、文部科学省や厚生労働省等の行政からの高校生、大学生等の若者への社会貢献としての献血の重要性を認知させることは重要であり、効果が期待できると考えられた。献血本数の詳細な解析から、ある年齢層の世代(コホート)が献血推進に大きく貢献している可能性が示され、この解析結果は今後の献血の推定あるいは献血推進戦略にとっても重要な所見と考える。MSMを対象とした献血行動に関するウェブ調査の結果では、多くは献血の動機が社会貢献であった。また、集団献血が比較的多いことと、献血に関する制限事項などの周知が必要と考える。主にMSMを対象として、その分析結果、および献血について知ってもらいたい内容について掲載したウェブサイトを開発し、そのウェブサイトについてゲイ向け出会い系アプリを利用して、広報を行った。
結論
 今年度は献血推進と献血教育方策に関する研究を実施し、多くの知見を得た。これらの研究成果が献血推進に活用されることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201724024B
報告書区分
総合
研究課題名
効果的な献血推進および献血教育方策に関する研究
課題番号
H27-医薬A-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋田 定伯(福岡大学 医学部)
  • 西田 一雄(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 井上 慎吾(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 瀧川 正弘(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 松田 清功(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 早坂 勤(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 田辺 善仁(株式会社エフエム大阪)
  • 林 清孝(エフエム大阪音楽出版株式会社)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医歯薬保健学研究科)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 大川 聡子(大阪府立大学 地域保健学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国は、少子高齢化による人口動態、疾病構造の変化、臓器移植の推進などにより献血液の需要が一段と高まると予測されるが、他方、若者の献血離れが指摘され、将来の高まる需要に見合った献血の確保は極めて重要である。我々が行った将来推計でも需要に対する供給は大きく不足すると予測された。また、昨今、問題となったHIV感染事例を考えれば、安全な献血液の確保のための方策の強化も必要である。すなわち、需要に見合った安全な献血液の確保のために有効な献血推進策の実施が今後も必要と考えられる。本研究では限られた資源で有効な普及啓発方法の検討、安全な血液確保のためにハイリスク層の実態把握と有効な対策の提示、若年層の献血液の確保のための献血教育の検討、さらに我が国の献血推進に役立てるために、我が国に実状が類似した国での献血推進策の調査などを主な目的とした。
研究方法
 本研究班では次の研究を行った。研究1 献血推進施策の効果に関する研究、研究2 供血者の実情調査と献血促進および阻害因子に関する研究、研究3 輸血液の需要と献血教育に関する研究、研究4 献血推進に向けた研修方法に関する研究、研究5 献血推進の為の効果的な広報戦略等の閲覧に関する研究、研究6 若者の献血行動を促進する効果的な教育プログラムに関する研究、研究7 HIV 感染ハイリスク層への情報伝達方法及び意識調査の研究、研究8 海外における献血推進の実状と効果的な施策のあり方に関する研究を行った。
結果と考察
研究結果
 1) 将来推計人口に基づく献血本数の需要とマルコフモデルを用いた献血本数の供給につき将来推計を行い、2023年に73万本が不足すると推定した。2) 献血者の詳細なデータ解析から献血行動に影響を与える因子につき検討を行い、初回献血、2回目以降の献血に繋がる動機や阻害因子などを明らかにした。3) 献血推進の啓発施策の有効性についての検証から、献血推進プロジェクトLove in Actionは実施月で0.8%という統計学的有意な増加をもたらしていた。4) 受血者へのアンケート調査から献血の意義を再認識し、大学生等への献血に関する意識調査から献血推進の課題が明らかになった。5) 安全な献血血液確保のための有効な情報伝達のあり方および普及啓発方法を検討し提示するため、初年度にパイロット調査、次年度にその結果を踏まえてゲイ向け出会い系アプリを利用する MSM を対象とした自記式質問紙の本調査を実施した。最終年度は、本調査の更なる分析を進め、調査協力者をはじめとする MSM を対象としたフィードバックウェブサイトを構築し、調査結果の報告を行った。6) 海外の実態調査に関する研究では、国情が日本に類似した国を選択して、研究対象国の高齢化などの社会的課題、それと対峙する血液事業の現況、献血推進方策や献血教育、社会において血液事業の認知度を上げるための対策などを調査した。特にベルギー王国、台湾、ドイツ連邦共和国、およびシンガポールの献血者確保方策を調査した。これらの研究から、我が国の献血事業の推進に寄与するための最適な解決策を検討した。いずれの研究も日本赤十字社と協力体制の下に実施した。
考察
 今後の献血の将来予測から若年層を中心とした献血推進は引き続き重要である。インターネット全国調査の結果を十分検討し献血推進施策の立案が重要である。献血推進には献血の認知率を高めると共に、献血行動を後押しする啓発も重要で有効と考えた。若年者に向けた献血推進方策として日本赤十字社の学生献血推進ボランティア組織の自主的活動と大学生への献血教育の推進は、献血セミナーの実施と共に若者の献血推進が期待できると考えられた。さらに、文部科学省や厚生労働省等の行政からの高校生、大学生等の若者への社会貢献としての献血の重要性を認知させることは重要であり、効果が期待できると考えられた。海外では、ベルギー王国、台湾、ドイツ連邦共和国、およびシンガポールの献血者確保方策を調査、有益な情報を得た。MSMを対象とした献血行動に関するウェブ調査の結果では、「生涯でHIV検査の代わりに献血をした」と回答者は4.5%であり、献血の動機は社会貢献が大半であった。また、集団献血が比較的多いことと、献血に関する制限事項などの周知が必要と考える。献血会場で献血できなかった者が少なからずおり、MSWアンケート調査結果と合わせ、献血前に献血適応基準や制限項目内容について事前の周知が必要と考えた。
結論
 献血推進と献血教育方策に関する研究を実施し、多くの知見を得た。これらの研究成果が献血推進に活用されることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201724024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
当班では献血本数の将来推計、将来推計人口に基づく輸血用血液製剤の需要予測を行い、需要と供給の差(不足)が毎年増加し2023年時点で75万本不足と推定した。献血推進広報Love in Actionプロジェクトはイベントにより献血本数の有意な増加(0.8%)が推定された。WEB調査では同性と性的接触を行ったとの回答者の献血の目的については生涯で約4%がHIV検査代わりに利用したとの回答があったが、大半は社会貢献であった。WEB調査結果を含め献血の情報をWEBで報告した。
臨床的観点からの成果
献血液の需要と供給の状況を把握するため、輸血を受けた患者に対しアンケート調査を実施し、輸血及び献血に対する意識の現状を確認することができた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
本研究報告書は全国の自治体の血液行政担当部署に配布した。
その他のインパクト
NHK番組 週刊ニュース深読み「血が足りない!?どうする?どうなる?献血」に出演し、献血の重要性を訴えた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
50件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
43件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
11件
講演7件、機関誌3件、ラジオ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
2022-06-09

収支報告書

文献番号
201724024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 696,659円
人件費・謝金 1,026,615円
旅費 532,340円
その他 2,144,386円
間接経費 100,000円
合計 4,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-