文献情報
文献番号
201722007A
報告書区分
総括
研究課題名
労働生産性の向上や職場の活性化に資する対象集団別の効果的な健康増進手法及びその評価方法の開発に関する研究
課題番号
H28-労働-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 大和 浩(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 道下 竜馬(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 吉川 悦子(高橋 悦子)(日本赤十字看護大学看護学部)
- 永田 昌子(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,945,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、3年間の研究によって、職種・業種ごとの効果的な健康増進手法の開発を目指し、1)職種・業種ごとの健康課題を明らかにし、2)労働者の健康問題が業務遂行能力(労働生産性)に影響を及ぼしている状態を評価する方法を確立し、3)職場単位または個人単位で介入して、遂行能力の改善を図るための手法を開発することを主な目的としている。2年目においては、1)及び3)に重点を置いて研究を遂行した。
研究方法
「職種・業種ごとの健康課題」として、職種ごとに座位時間がどのように異なるかを明らかにしたうえで、座位時間と筋骨格系の症状および労働機能障害との関連を検討した。「遂行能力の改善を図るための介入手法」については、前年に引き続き介入研究を行った。具体的には、職場単位で行うアクティブレストが職場活性度およびプレゼンティーズムの改善に及ぼす効果を検討した。また、職場活力向上を目指した参加型職場環境改善プログラムでは、職場活力向上に資する参加型職場環境改善プログラムである「いきいき職場づくり展開プロジェクト」をモデル事業として職種・業種の異なる3つの職場で本プログラムを実施した。さらに、個別睡眠衛生教育の効果検証では、睡眠に関する主観的指標に加えて、脳波による客観的指標および労働生産性やワーク・エンゲイジメント等の職場の活性化に関する指標を用いて検証を試みた。
結果と考察
「職種・業種ごとの健康課題」の分析の結果、職種別の立位時間と座位時間の割合は職種による差は大きいことが観察された。腰痛は立位時間が長いほど、有訴者割合が多い傾向になる一方、肩こりと眼の不調は、座位時間が長いほど、有訴者割合が多い傾向であった。腰痛、肩こり、眼の不調の症状ありの者は、症状なしの者と比較して、労働機能障害の程度が大きく、また、ワーク・エンゲイジメントが低いことが観察され、職種ごとの座位時間が筋骨格系の症状や労働機能障害に影響を及ぼしていることが示唆された。
「遂行能力の改善を図るための介入手法」については、職場単位で行うアクティブレストが職場活性度およびプレゼンティーズムの改善に及ぼす効果を検討した結果、昼休みに職場単位でアクティブレストを行うことは、職場活性度を高め、プレゼンティーズムの改善に有効であることが明らかとなった。また、参加型職場環境改善プログラムを実施した経験より、様々な職種・業種、多様な職場文化や風土を背景にもつ異なる職場に適応可能で、かつ効果の上がる参加型職場環境改善プログラムのためには、職場の特性や文脈に合わせて取り組みを支援するツールを開発し、職場環境改善の準備状況に合わせたきめ細やかなフォローアップを柔軟に設定してくことが重要であると考えられた。個別睡眠衛生教育では、介入群と対照群とでの有意な差を認めず、睡眠の改善のためには、個別指導を行うのみでは行動変容およびその効果を得ることが難しい可能性が考えられた
「遂行能力の改善を図るための介入手法」については、職場単位で行うアクティブレストが職場活性度およびプレゼンティーズムの改善に及ぼす効果を検討した結果、昼休みに職場単位でアクティブレストを行うことは、職場活性度を高め、プレゼンティーズムの改善に有効であることが明らかとなった。また、参加型職場環境改善プログラムを実施した経験より、様々な職種・業種、多様な職場文化や風土を背景にもつ異なる職場に適応可能で、かつ効果の上がる参加型職場環境改善プログラムのためには、職場の特性や文脈に合わせて取り組みを支援するツールを開発し、職場環境改善の準備状況に合わせたきめ細やかなフォローアップを柔軟に設定してくことが重要であると考えられた。個別睡眠衛生教育では、介入群と対照群とでの有意な差を認めず、睡眠の改善のためには、個別指導を行うのみでは行動変容およびその効果を得ることが難しい可能性が考えられた
結論
職種・業種ごとの健康課題を整理する中で、産業保健スタッフは、以下のことが重要であると考えられた。
・職種により多く発生する自覚症状が異なることを念頭に、健康施策の優先順位を検討すること
・自覚症状は、単に本人が困っているのみではなく、仕事自体にも影響していることを経営者にも理解してもらえるよう説明すること
・職種により仕事の特性上、座位時間が多い、立位時間が多い等があるが、それらにより症状が惹起されることを念頭に、作業時間の検討、休憩時間の検討、立位作業では椅子に座る時間を確保する等、作業環境管理、作業管理をも検討すること
介入研究では、それぞれの取組みごとに知見が得られたが、最終年度にその知見の整理応用が必要と考えられた。
・職種により多く発生する自覚症状が異なることを念頭に、健康施策の優先順位を検討すること
・自覚症状は、単に本人が困っているのみではなく、仕事自体にも影響していることを経営者にも理解してもらえるよう説明すること
・職種により仕事の特性上、座位時間が多い、立位時間が多い等があるが、それらにより症状が惹起されることを念頭に、作業時間の検討、休憩時間の検討、立位作業では椅子に座る時間を確保する等、作業環境管理、作業管理をも検討すること
介入研究では、それぞれの取組みごとに知見が得られたが、最終年度にその知見の整理応用が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-05-24
更新日
-