国民への安全な医薬品の流通、販売・授与の実態等に関する調査研究

文献情報

文献番号
201706010A
報告書区分
総括
研究課題名
国民への安全な医薬品の流通、販売・授与の実態等に関する調査研究
課題番号
H29-特別-指定-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(東京大学 大学院医学系研究科・医学部 地域医薬システム学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 裕之(宮崎県立看護大学 看護学部)
  • 長谷川 洋一(名城大学 薬学部)
  • 赤川 圭子(佐々木 圭子)(昭和大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では平成26年6月から一般用医薬品(OTC医薬品)がインターネットで販売され国民がそれを購入できるようになり3年以上が経過した。こうした背景の下、インターネットを通じた医薬品購入・使用について、実際に、国民が安全安心でかつ個々の生活スタイルに合った方法で行っているのか否かについて、詳細で正確な実態調査が必要である。そこで、(Ⅰ)薬局開設者や卸売販売業者等における医薬品の譲受・譲渡の際の記録事項の整備や取引相手の身元確認の徹底など、薬局における医薬品管理や授受の実態等を調査した。管理薬剤師の要件や業務実態についての確認も調査した。つぎに(Ⅱ)一般用医薬品のネット販売可能の新ルール実施後の3年以上経過時点における一般用医薬品の購入経路などの調査、さらに薬局における一般用医薬品の取り扱いに関する実態調査(一般用医薬品、とりわけ要指導医薬品・第一類医薬品等の供給状況を把握するために、それらを取扱う薬局の実態を把握することも調査)を実施した。さらに(Ⅲ)欧州各国およびカナダの医薬品制度の概要を調査し、わが国の薬剤師の関わり方について比較検討した。主にこれら3つの研究調査を目的とした。
研究方法
(Ⅰ)薬局における医薬品の流通、販売・授与の適正化対策に関する研究:日本薬剤師会の協力を得た保険薬局1000件、日本保険薬局協会及び日本ドラッグストア協会の協力を得た会員の保険薬局200件の管理薬剤師に無記名式アンケート形式で調査を実施した。
(Ⅱ)(1)国民の一般用医薬品の購入経路などに関する全国調査:全国の都道府県(北海道、岩手、栃木、東京、石川、兵庫、島根、福岡、宮崎)から選ばれた市町村の各自治体で閲覧の許可を得たのち,住民基本台帳を用い、無作為に抽出した20歳以上の成人男女5,000名を対象に、自記式調査票を用いた郵送調査を実施した。
(2)医薬品の販売実態に関する調査:対象となる日本薬剤師会8県支部400薬局およびドラッグストア本部協力98店鋪、無作為抽出によるネット販売を行う薬局・店舗800店舗に調査を実施し、フクシミリによる回答の返信を得た。
(Ⅲ)各国の医薬品のネット販売の可否などの規制等の比較に関する研究:調査対象国は、スウェーデン、ドイツ、カナダ、オーストラリア、イギリスとした。調査方法は、各国政府資料および現地調査報告書に加え、スウェーデンにおける医薬品販売制度の調査は、2017年5月スウェーデン政府社会省(Enheten för folkhälsa och sjukvård, Socialdepartementet)担当官に対し、直接インタビューし、聞き取り調査を行った。また、ドイツ、カナダ、イギリスとオーストラリアの調査には委託調査を実施した。
結果と考察
(Ⅰ)薬局における医薬品の管理状況については、概ね適正に行われている現状が示された。しかし、使用期限の近い医薬品の取扱いについては、わずかながら買取業者に譲渡されている実態が確認された。
(Ⅱ)わが国でネット販売で一般用医薬品を購入したことのある者は全体の5.7%であった(3年前は3.8%)。薬局、ドラッグストア、ネット販売を行う薬局・店舗を対象にした調査で、取扱っている薬効群の種類について、薬局で扱う要指導医薬品は、全部の薬効群4.0%、ほとんどの薬効群4.0%で、第一類医薬品は、全部の薬効群4.7%、ほとんどの薬効群6.0%であった。ドラッグストアで扱う要指導医薬品は、全部の薬効群4.3%、ほとんどの薬効群35.5%、第一類医薬品は、全部の薬効群4.3%、ほとんどの薬効群34.4%であった。ネット販売を行う薬局・店舗での第一類医薬品は、全部の薬効群3.7%%、ほとんどの薬効群44.1%の取り揃えであった。
(Ⅲ)ドイツおよびカナダでは、「処方箋医薬品」および「薬局のみで販売可能な医薬品」が、インターネット販売が可能な状況にもかかわらず、薬剤師と対面にて販売し、指導・情報提供する体制が中心であった。その理由は、インターネット等を利用した販売や指導より、対面で販売・指導をうけるメリットが大きいことを、患者自身が実感し支持しているからであった。一方、スウェーデンでは、すべての医薬品が薬剤師による対面販売義務はなく、必要時のみ実施する制度であったものの、インターネットを利用した医療情報の一元化が進み、重複投薬などを未然に防ぐ体制を整えていた。
結論
今回の調査では海外の国々は難渋しながら改革を進めていた。わが国も科学的な根拠、国民の本当のニーズ、最新技術の採用などを総合的に利活用し、医薬品の適正な提供・使用の一層の確保に向けて対応していくべきであろう。

公開日・更新日

公開日
2018-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201706010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬局における医薬品の流通、販売・授与の適正化対策では、2つの特徴的な実態、すなわち1)買取業者の存在、2)使用期限の短いあるいは使用期限切れが近くなった医薬品の取扱い、が明らかになった。また、各国の医薬品のネット販売の可否などの規制等の比較に関する研究では、「処方箋医薬品」の販売方法は、基本的に対面販売が義務化されていている場合と対面販売義務が無い場合があった。わが国の「要指導医薬品」に該当するような、薬局で薬剤師の管理下で販売可能な医薬品は、国によりインターネット販売の可否が違っていた。
臨床的観点からの成果
ネット販売で一般用医薬品を購入したことのある者は全体の5.7%であった(3年前は3.8%)。「薬の飲み方や副作用についての説明をどのくらい聞きましたか」の質問は、店舗(薬局・ドラッグストアなど)においては要指導医薬品では「よく聞いた」(31.4%)と「だいたい聞いた」(37.5%)が合計で68.9%、第一類医薬品ではそれぞれ20.5%、34.1%で合計が54.6%。ネット販売では第一類医薬品では「よく聞いた」(9.1%)と「だいたい聞いた」(24.2%)が合計で33.3%。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
国民による安全安心の医薬品使用の観点から、偽医薬品流通への抜本的な対策を充実させ、また現状の調剤業務に偏った薬局機能を修正し、医薬品の供給と適正使用に関する薬局薬剤師の責任と権限を明確にすることが必要不可欠であり、国民に信頼され支持される役割を自らの使命として構築すべきだろう。
その他のインパクト
日本の要指導医薬品に該当する薬では、ドイツとカナダで「処方箋医薬品」「薬局のみで販売可能な医薬品」が、ネット販売が可能な状況になっていたが、薬剤師と対面にて販売し、指導・情報提供する体制が中心であった。それはネット等を利用した販売や指導より、対面で販売・指導をうけるメリットが大きいことを、患者が実感し支持しているからであった。スウェーデンでは、すべての医薬品が薬剤師による対面販売義務はなく、必要時のみ実施する制度で、IT を利用した医療情報の一元化が進み、多剤問題等を防ぐ体制を整えていた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-09
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201706010Z