大規模災害および気候変動に伴う利水障害に対応した環境調和型水道システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201625007A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害および気候変動に伴う利水障害に対応した環境調和型水道システムの構築に関する研究
課題番号
H27-健危-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 修(東北大学大学院 工学研究科)
  • 藤本 尚志(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 高梨 啓和(鹿児島大学学術研究院 理工学域工学系)
  • 下ヶ橋 雅樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 清水 和哉(東洋大学 生命科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,708,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害や気候変動に伴う利水障害に対応した環境調和型水供給システムの提案を目的とし,流域の水管理対策,気候変動に伴う生物障害対策,及び水供給システムの環境調和と持続可能性の評価に関する研究を実施する。
研究方法
回帰式,タンクモデル,準分布型水文モデル(SWAT)の相模ダム流域からの流出の予測性を比較した。またSWATにより,同流域での将来予測気候下でのシミュレーションを行った。
生ぐさ臭臭気原因物質としてのカルボニル化合物について検討した。
長沢浄水場の原水,沈澱処理水,ろ過水の微生物相を評価した。
カオリン懸濁液およびピコ植物プランクトン懸濁液を用いた凝集実験を行った。
カビ臭物質産生微生物群及びカビ臭物質産生活性の定量手法の開発のために,上水源や水域から単離した放線菌様細菌を用いて,単離菌の遺伝子解析を実施した。
平成28年熊本地震の応援給水活動について,実際に活動を行った水道事業体の方々へのアンケートを行った。
平成28年台風10号により発生した断水について,文献調査により市町村ごとに最大断水戸数,断水期間,及び断水原因を整理した。
水道生物分野での藻類の学名の取り扱いについて提案を行なうため,文献調査に基づき藍藻類の分類について整理した。
平成26年の御嶽山噴火が牧尾ダムの水質に与えた影響を確認した。
秋季循環形成後の芹川ダムにおける2-MIBの低減を評価した。
次世代シーケンサーを用いたろ過漏出障害原因微生物の同定技術を給水栓水に適用し,ろ過漏出原因微生物の給配水系での挙動を調査した。
結果と考察
相模ダム流域からの洪水,渇水双方を再現するうえでのSWATの適切性を確認するとともに,これを用いた相模ダム流域からの流出シミュレーションの結果,将来(2081~2100年)において,2,4 月の渇水の増加,6,7 月の洪水の増加が示唆された。
生ぐさ臭臭気原因物質の解明において,カルボニル化合物と水道原水のTONおよび原因生物であるUroglena americanaの中群体換算数と相関関係が認められ,別水系から採取したUroglena americanaの培養液からも検出された物質が発見され,その分子式をC13H20O3と推定した。
次世代シーケンサーによる16S rRNA遺伝子アンプリコン解析がろ過漏出障害原因微生物を詳細に評価する上で有用であることが明らかとなった。
通常ポリ塩化アルミニウム(PAC)の多量注入はゼータ電位のマイナス値を大きくし,凝集フロックの再分散を引き起こすため濁度上昇が発生する原因である可能性が示唆された。一方,高塩基度PACの使用は,多量注入した際でも高い濁度除去効果があり,特徴の一つである残留アルミニウム濃度の低減効果も確認できた。濁度除去効果の高い高塩基度PACであるが,生物除去に関しては濁度除去と同等の効果が得られない可能性が示唆された。
分子生物学的手法を用いてカビ臭物質産生微生物の個体群数を定量することは,カビ臭発生予測手法の構築に活用できることがわかった。
平成28年熊本地震の応援給水活動において,資機材の有用性や活動上の課題等が抽出された。
平成28年の台風10号において,降水量と最大断水戸数の相関性が可視化された。また,簡易水道の給水区域では,断水期間が長くなる傾向が見られた。
藍藻類の分類において,光学顕微鏡を用いた迅速な分類・同定及び計数を基本とする水道生物分野では,今後も光学顕微鏡による分類体系に基づいた従来の種名を踏襲することが妥当と考えられた。
御嶽山噴火後の牧尾ダム流入濁度やpH,健康項目(カドミウム,鉛,六価クロム,砒素,総水銀,セレン,ホウ素,フッ素)の挙動を明らかとした。
芹川ダムにおける,微生物による2-MIB分解を確認した。またその生分解速度は化学合成された市販2-MIBよりも,自然界に存在する生物産生型2-MIBに対して大きいことが示唆された。
ろ過水より給水栓水で高い比率を示す細菌の存在を確認し,給配水系統で再増殖やバイオフィルムを形成する細菌の可能性を示唆した。
結論
流域の水管理対策に関して,数理モデルによる相模ダム流域からの流出への気候変動影響評価を行った。生物障害対策に関して,生ぐさ臭臭気原因物質の推定,次世代シーケンサーによるろ過漏出障害原因微生物評価の有用性,濁質やピコ植物プランクトンの凝集性の確認,カビ臭物質産生微生物定量への分子生物学的手法の適用性評価,水道生物分野での藻類の学名の取り扱いについての提案,給水栓水への次世代シーケンサーを用いたろ過漏出障害原因微生物の同定技術の適用を行った。水供給システムの環境調和と持続可能性の評価に関して,平成28年の熊本地震時の応急給水,台風10号の断水状況,平成26年の御嶽山噴火が牧尾ダムの水質に与えた影響を確認した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201625007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,708,000円
(2)補助金確定額
4,708,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,024,183円
人件費・謝金 161,463円
旅費 1,614,906円
その他 907,468円
間接経費 0円
合計 4,708,020円

備考

備考
自己負担額20円

公開日・更新日

公開日
2018-03-13
更新日
-