文献情報
文献番号
201610028A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-067
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 康夫(東邦大学 医療センター 佐倉病院 医学部 医学科 内科学講座 消化器内科学分野(佐倉))
研究分担者(所属機関)
- 松本 主之(岩手医科大学医学部 消化器内科学)
- 安藤 朗(滋賀医科大学 消化器内科学)
- 池内 浩基(兵庫医科大学 炎症性腸疾患学講座 消化器外科学)
- 岡崎 和一(関西医科大学 内科学講座第三講座 消化器内科学)
- 緒方 晴彦(慶應義塾大学医学部 内視鏡センター 消化器内科学)
- 金井 隆典(慶應義塾大学医学部 消化器内科学)
- 杉田 昭(横浜市立市民病院 炎症性腸疾患センター 消化器外科学)
- 仲瀬 裕志(札幌医科大学医学部 内科学)
- 中野 雅(北里大学北里研究所病院 内視鏡センター 消化器内科学)
- 中村 志郎(兵庫医科大学 炎症性腸疾患学 内科部門 消化器内科学)
- 西脇 祐司(東邦大学医学部 社会医学講座 衛生学分野)
- 久松 理一(杏林大学医学部 第三内科学 炎症性腸疾患、腸管免疫学)
- 福島 浩平(東北大学大学院 医工学研究科消化管再建医工学分野 外科学)
- 穂苅 量太(防衛医科大学校 消化器内科学)
- 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器内科学)
- 松岡 克善(東京医科歯科大学 消化器内科学(消化管先端治療学))
- 渡邉 聡明(東京大学大学院 医学系研究科 腫瘍外科血管外 外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
19,784,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、1973年以降「難治性炎症性腸管障害」に関する研究を長年に渡り牽引してきた研究班の継続とさらなる発展を目指し、いまだ原因不明で難治例・重症例を数多く有するにもかかわらず患者数の増大が著しい炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎(UC)・クローン病(CD)における的確な診断法と治療法の確立と患者QOLのさらなる向上への取り組み、それらの成果を通じてIBDに関する医療経済の適正化を図り国民福祉の向上と社会貢献を目指す研究班の最終年度のものである。さらに最終年度である本年度から新たに、指定難病となった難治性炎症性腸管障害疾患であるクロンクカイトカナダ症候群と非特発性多発小腸潰瘍症を本研究班における研究対象疾患に加え、本邦における患者実態の把握と診断基準・治療指針作成に向けた研究を開始することとなった。
研究方法
本年度は3年計画で2014年にスタートした研究班の最終年として各プロジェクトを総括することを目標とした。本研究班では、1)本邦における炎症性腸疾患の包括的疫学研究を発展させること、2)炎症性腸疾患患者のQOL向上と診療の適正化の指針を作り上げること、3)各種臨床的課題の解決に向け、多施設共同臨床試験を計画実施すること、4)研究成果を広く発信し、実地医療における適正な炎症性腸疾患診療の普及を図ること、5)本疾患の重要性に関する国民的認知の普及に努めること、の5つの研究骨子を掲げその達成を目指した各種プロジェクト案を初年度に立案しその完遂を目指した。
結果と考察
疫学研究においては、難病疫学研究班との合同研究にて25年ぶりの全国IBD患者動向調査を実施し新たな知見を得た。2)IBD診療の適正化と患者QOL向上を目指し、クローン病診断基準の見直し、日本消化器病学会との共同研究にて「炎症性腸疾患診療ガイドライン」の改訂作業終了と共にその成果を冊子として刊行、新規診療体制に合わせた臨床個人調査票の改訂、現状に即した内科・外科・小児治療指針の逐年的改訂作業を実施した。3)IBDにおける各種臨床的課題の解決に向けて各種多施設共同臨床研究を実施、診断面・バイオマーカー・治療法・最適な外科治療法探索に関する数多くのプロジェクトの大部分が完遂しその結果分析がなされた。また、前研究班から継続されたIBD関連大腸癌早期発見を目指すサーベランス法の結果が論文化され世界的成果と注目された。IBD特にUCの新規治療法の可能性を探る便移植法の臨床研究成果が報告され、現状の方法では有効性を期待できないと結論され実施方法の改善など今後検討すべき課題が明らかにされた。漢方成分薬である青黛カプセル化投与臨床研究が重篤な副作用“肺高血圧症”の発現懸念から中止された。また、新たに研究対象疾患として加わったクロンクカイト・カンダ症候群と非特異性多発性小腸潰瘍症に関する全国実態調査のための準備にとりかかった。4)国民および実臨医家に本研究成果を普及させる目的でホームページを開設、作成された各種冊子や班研究成果や各種臨床研究課題をネット上で自由に閲覧可能になるよう公開した。IBD専門医と一般医との医療連携システム構築のモデル型として電子化されたIBD病診連携システムの試験的運用の試みがスタートした。一般医向けIBD診療冊子「一目でわかるIBD」の改訂作業が終了し、広く国内の普及を目指しCD化され配布が実施されている。
5)国民への啓蒙活動として、患者向けに治療内容を解説する冊子「潰瘍性大腸炎の皆様へ-知っておきたい治療に必要な基礎知識」「クローン病の皆様へ-知っておきたい治療に必要な基礎知識」の改訂版を作成し発刊した。さらに妊娠とIBDに関するQ&Aによる冊子「妊娠を迎える炎症性腸疾患患者さんへ-知っておきたい基礎知識Q&A」の作成と刊行がなされ広く配布されている。
5)国民への啓蒙活動として、患者向けに治療内容を解説する冊子「潰瘍性大腸炎の皆様へ-知っておきたい治療に必要な基礎知識」「クローン病の皆様へ-知っておきたい治療に必要な基礎知識」の改訂版を作成し発刊した。さらに妊娠とIBDに関するQ&Aによる冊子「妊娠を迎える炎症性腸疾患患者さんへ-知っておきたい基礎知識Q&A」の作成と刊行がなされ広く配布されている。
結論
本研究班によって、本邦におけるIBD診療に携わる内科・外科・小児科全ての領域を網羅する研究体制が構築された。班を構成する研究代表者・分担研究者・協力員および関連研究者全員がスムーズに協調できる体制を保ち、臨床的活用をめざす各種研究課題を立案・実行し着実な成果を得ることができた。今後はより一層、立案された研究課題を推進し意義ある研究成果を数多く生み出し、IBD患者のQOL向上と適正な診療体制を確立すること、医療経済の健全化および広く国民に向けた正確なIBD医療情報の発信することが大いに期待できる。また、新たに研究対象課題として加わったクロンクカイトカナダ症候群・非特発性多発小腸潰瘍症の本邦における実態解明と適切な診断基準・治療指針の確立に向けた取り組みが期待される。
公開日・更新日
公開日
2017-06-07
更新日
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